「チューニング史に名を残したランエボ達」偉業を成し遂げた6台の怪物を振り返る!

Memorable LANCER EVOLUTION

OPTION誌の歩んできた歴史は、そのままチューニングカーの歴史と言い換えていいだろう。過去から現在にかけ、星の数ほどのマシンが登場しては誌面を賑わせ、そして数々の伝説を作ってくれた。ここではそんな記憶に残る名チューンド達の中で、ランエボに車種を絞ってお届けしよう。

HKS + CT230R【CT9A】

国内主要サーキットのレコードを続々と更新!

筑波スーパーラップでの頂点を目指し、HKSが2007年1月に持ち込んだマシンがランエボVIIIベースのCT230Rだ。2004年にCT230Rの前身と言えるTRB-02が打ち立てた54秒739という記録を更新するべく開発はスタート。心臓部は最終的に2.4L+GT3240タービンのコンビネーションで、560ps/65kgmを発生するまでに鍛えられた。

写真は2008年シーズンの最終仕様で、2.3L化された4G63は2007年シーズンのGT3037SからGT3240にタービンを変更。冷却性能を引き上げるために、ラジエターとインタークーラーが並列配置されているのもポイント。ヘッドはVカム化が図られており、IN&EX280度カムが投入されている。
前後重量配分を適正化するために、シート、ステアリング、ペダル類のポジションは後退させている。ミッションはHKS5速ドグクラッチ方式のHパターンが搭載され、これは後にFIAとJAFのNホモロゲを取得して市販化された。

2006年には富士スピードウェイ、十勝スピードウェイ、岡山国際サーキット…と、国内主要サーキットのチューンドによるコースレコードを次々と更新。さらに、ターゲットである筑波サーキットでも53秒589という尋常ではないスーパーラップを披露し、王者の称号を手にした。

その後、国内のみならずアメリカ・バトンウィローでもコースレコードを樹立。その瞬間CT230Rは、名実ともに世界最強のレコードブレイカーへと昇華したのである。

Team ORANGE + LANCER Evo.IX【CT9A】

異端なる進化を遂げたD1GP攻略機

D1GP2006年シリーズチャンプの熊久保信重選手とJUNオートメカニックがタッグを組んで創出した、ランエボIX MRベースのドリフトマシンだ。

酷使するリヤデフはケースごと大容量化。燃料タンクは軽量化のために純正を半分カットした『半タン』仕様だ。ミッションはホリンジャーの6速シーケンシャルを採用するが、ポン付けなど不可能のため、ワンオフアダプターを介して縦置き4G63とドッキング。ペラシャはワンオフの2分割タイプとなる。

FFベースの4WDパッケージのままで高度なドリフトなど不可能に近いため、駆動方式はJUNのテクノロジーでFR化。まず、4G63ユニットを横置きから縦置きへと配置転換し、合わせてミッションも入出力軸同心型のシーケンシャル6速ドグをドッキング。そして、リヤデフをケースごと大容量化した上、ミッションアウトプットからワンオフのペラシャをリヤへ伸ばす。そう、シルビアに代表されるFRパッケージを、ランエボでそのまま表現したのだ。

心臓部の4G63は、腰下にJUNオートメカニックの2.2Lキットを投入した上で、ヘッドにはMIVEC用ソリッドカム(272度/10.8mmリフト)をセット。そこにTD06-25Gタービンをドッキングし、F-CON Vプロ&Vマネージによる綿密なフルコン制御を組み合わせることで、最大ブースト1.5キロ時に550psを発揮させていた。

2007年シーズン第5戦から実戦投入され、初戦でベスト8を奪取。その後も着実にリザルトを上げていき、シーズンファイナルのアーウィンデール戦で見事に『優勝』の二文字を手中に収めたのである。

PHOENIX’s POWER + LANCER Evo.III【CE9A】

ニュージーランドで300km/hを記録した最高速仕様

オークランド近郊の一般道を閉鎖して行われる最高速レース『ラリーニュージーランド』をターゲットにフェニックスパワーが開発したマシンだ。

JUNの鍛造ピストン&コンロッド、ハイカムなどを組み込んで徹底強化した4G63ユニットに、ウエストゲート式のRX6TCW77タービンをドッキング。サージタンクはワンオフ、スロットルはQ45の90φを流用していた。

JUNの強化ムービングパーツで徹底強化したエンジンにRX6タービンをセット、オリジナルECUとVPCを駆使することで最大ブースト2.3キロ時に600psを絞り出す。最高速に重要なギヤ比についても、ミッションは1&2速を伸び重視でランエボI用に交換、さらにファイナルも5.358から4.7へと大幅にハイギヤード化した。

アタック本番では、空力やサスセッティングに悩まされたものの、最終的にドライバーである稲田大二郎が8000rpmまでキッチリと回し切って、見事に300km/hの壁を突破(公式記録は300.7km/h)したのだ。

Cyber EVO【CT9A】

熟成を重ねて世界最速の栄冠を手にした名物マシン

各カテゴリーのスペシャリスト達が集結し、筑波最速のランエボを生み出す。そのために立ち上がったプロジェクトこそが『サイバーエボ』だった。

2.2L化されたフルチューンエンジンとRX6改タービンの組み合わせにより、最大ブースト2.5キロ時に700ps近い出力を発揮。フロントエアロは、アンダーディフューザーがフレームに固定され、その上にバンパーが乗っかるという構造だ。

アタック開始は2002年。ランエボVをベースに製作されたマシンは圧倒的な速さを見せつけ、コースレコードを何度も更新。その後、ベースマシンをVII→IXと変更しながら猛烈な勢いで進化を続け、最終的にHKS CT230Rを後一歩の所まで追いつめる、プライベーター最速の54秒589を記録する。

同時にサイバーエボは世界(WTAC=オーストラリアで開催されているチューンド世界一決定戦)への挑戦もスタートさせ、2010年、2011年の大会で優勝。強豪ひしめくトップステージで、2連覇という偉業を成し遂げたのである。

JUN AUTO MECHANIC + LANCER Evo.V【CP9A】

元祖サーキットレコードブレイカー

今から20年以上も前に筑波で55秒台を記録するマシンが存在した。その名も『ハイパーレモン・エボV』。JUNオートメカニックが全霊を賭けて開発したタイムアタックスペシャルだ。

エンジンにはオリジナルのクランク、コンロッドを使う2.2Lのカスタムキットを組む。カムはラッシュタイプから試作のソリッドタイプヘと変更。タービンはTD06-25を使い、ブースト1.7キロ時に575psを発揮する。

自社の強化エンジンパーツをフル投入して創出されたエンジンは、2.2L+TD06SH-25Gタービンの組み合わせで600psを発揮。ボディはGSRがベースだが軽量化のために、走行に必要のないパーツは全て撤去され、FRPドアパネルやアクリルウインドウを投入。最終的には1130kgまでシェイプされた。

2002年シーズンではタイヤにアドバンA038を履いて57秒台、その後ジワジワとタイムを詰めていき、アドバンA048の投入を機に戦闘力が飛躍。2003年シーズンでついに55秒976という当時のレコードタイムをマークし、その存在感をアピールしたのだ。

Kansai SERVICE + LANCER Evo.IX TME【CT9A】

自動車メーカーよりも早く4G63にMIVECを搭載!

時は2006年。ランエボIXの発売を待ちきれず、ランエボVIII MRをベースに向井代表が製作したのがこのランエボIX TME(トシユキ ムカイ エディション)だ。

チューンドではなく、自動車メーカーが作るランエボIXに自分の夢を少しだけプラスして仕上げたというマシンの見どころは、何と言ってもエンジンだ。発売が間近に迫ったランエボIXの心臓部、MIVECを搭載する4G63をオリジナルで創出したのである。何度も言うがランエボIXの発売前に、だ。

グランディスに搭載されていた4GのMIVECを加工流用した上で、可変バルタイを独立制御するシステムを確立。これがMIVEC搭載の4G63ユニットを積むランエボIXの発売前に行ったのだからハンパではない。

その手法は凄まじく、当時4G系で連続位相可変バルタイ機構を搭載していたグランディス用のヘッドを加工流用した上で、オイルラインを新設して可変バルタイコントロールを独立して行うシステムを確立。ランエボIXの新車発表会にこのマシンで乗り付け、現場の三菱関係者を驚かせたことは言うまでもない。

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