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フルチューン車から乗り替えたオーナーをも満足させる大人仕様
ハイカムを軸にしたブーストアップチューン
かつて2.2L+タービン交換仕様のHCR32型スカイラインに乗っていたというオーナー。しかし、ハードなチューニングカー特有のコンディション維持に疲れ、泣く泣く乗り替えを決意する。
候補に挙がった車種は、BMWの530と日産のV35型スカイライン。乗り心地や質感の面ではどちらも魅力的だったが、それまでフルチューンを味わっていたオーナーにとってはどちらもパワー不足で、結局購入を見送ることに。
そんな中、偶然にもBNR34のMスペックに試乗。特別仕様の足回りがもたらす乗り心地の良さや内装の質感が気に入ったのはもちろん、以前からの憧れも手伝って購入するに至ったのだった。
納車からしばらくは完成された第二世代GT-Rの走りに感動していたものの、根っからのチューニングフリークだったオーナーが“ノーマル”に満足できるわけがない。とくにRB26DETT特有の低速トルクの細さは気になっていたため、その改善を目的に名門ビルダー“ダンディー(※)”の門を叩いた。
「高回転は捨てても良いから、とにかく低回転域から速くしたい」。そんなオーナーからの要望に応えるべく行われたのはカム交換を軸にしたパワーチューニングだ。
ハイカム化は、イメージ的に中高回転域における伸びやパワーを得るためのチューニングと思われがちだが、実は低速トルク重視のプロフィールを持ったカムも存在する。それがレイマックスのストリートカムだ。高回転域の特性はノーマルとほとんど変わらないものの、ブースト圧の立ち上がりが500rpmほど低くなって5000rpmまでの領域が全くの別モノになる。
そこにバルタイ調整およびECUチューンを組み合わせることで、純正インジェクターをほぼ使い切る低中速重視のブーストアップ仕様を完成させたのだ。
エキゾースト環境は「ノーマルマフラーなみの音量で、極力パワーロスが少ないものを」というリクエストからアペックスのRSエボリューションを選択。アフター品としては消音性能が高いマフラーだが、オーナーは「もっと静かなのが理想なんですよね」とのこと。
足回りにも手が入る。純正ダンパーは乗り心地こそ良かったが、オーナーが趣味で通うサーキットではやはり役不足。そこで、色々と研究して辿り着いたのがザックス製の車高調だった。
「足が気に入ってMスペックを買ったのに、交換したら意味が無いと思われるかも…。でも、アフターの車高調でもノーマルより乗り心地が良いモノもあるって知ってしまったんですよね」とオーナー。組み合わされるスプリングはアイバッハ製で、スプリングレートはフロント8kg/mmのリア7kg/mmだ。
ホイールは純正の18インチで、エクステリアもフルストック状態。まさに『羊の皮を被った狼』を地でいく仕様だ。
室内もノーマル状態をキープ。Mスペックのため、シートは標準で豪華な本革仕様だ。リヤシートは軽量化のために撤去されており、その部分を指摘すると「今となってはボディカラーくらいしかMスペックの恩恵を受けてないかも」とオーナーは笑う。
オールマイティに使えるクルマを目指してチューニングを進め、低速域から力強く加速して乗り心地も抜群。そんな高級セダン的なチューニングの方向性も、BNR34にはアリなのだ。 (※ダンディーは現在閉店しています)