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R35GT-R NISMOに履いて筑波58秒台をマーク!
次世代スポーツタイヤ「SPORT MAXX RS」の方向性が見えた!!
R35GT-Rの純正タイヤは、標準車もNISMOもダンロップ(住友ゴム工業)製の『SP SPORT MAXX GT600DSST』だ。300km/hの超高速走行でも破綻しないグリップ性能と、それに対応する高い耐久性。もちろんその高特性は天候が変わろうとも揺るがない。あらゆる意味で、世界最高レベルのランフラットタイヤと言っていいだろう。
とはいえ、タイヤの進化は日進月歩。ダンロップは次の時代を見据えたスポーツタイヤ開発を続けており、今回その一つの方向性をカタチとして我々に示してくれたのだ。
それが、『SP SPORT MAXX GT600DSST』の進化系にして、東京オートサロン2024で発表された新フラッグシップスポーツタイヤ『SPORT MAXX RS』の礎となる『SPORT MAXX PROTO』だ。
早速、『SPORT MAXX PROTO』と『SP SPORT MAXX GT600DSST』を見比べてみる。素人目線では、トレッドパターンが異なる程度で大きな差はないように思えるが、「分かりにくいのですが、プロファイル(形状)を大きく見直しました。トレッドの中央部をよりフラットにして、ショルダー部へのアプローチを急激にストンと落としたんです。六角形に近づけたイメージですね」とは、開発を担当したダンロップ宇野弘基氏。
タイヤのプロファイルは、時代ごとにトレンドがある。古くはハガキのような四角形が流行り、その後、キャンバー変化やショルダーの摩耗率など様々の要素を考慮に入れながら徐々に丸くなっていった。『SP SPORT MAXX GT600DSST』はそれに属するという。
ただし、開発目線で突き詰めると、丸いタイヤはあらゆる面でオールマイティな性能を発揮するものの、どの領域でも接地感が曖昧になるというネガ要素があった。そこでダンロップは、最新の解析&実験設備を活用しながら、理想的なプロファイルを探求。そうして誕生したのが、『SPORT MAXX PROTO』というわけだ。
「走りながらハンドルを切った状態でのCF(コーナリングフォース)計測や、走行中の温度分布など、解析技術の進化が非常に大きいですね。もちろん“ここをこうすればこうなるだろう”といった予想はできたのですが、それを定量的に示すことはこれまで不可能だった。つまり、このSPORT MAXX PROTOは進化した実験設備の賜物というわけです」と宇野氏。
また、このプロファイル変更によってブロック配置のバランスが狂ってしまったため、パターンデザインはもちろん内部構造も若干変更。「これのために金型を作りました。ゴムもブランド牛のように良い部分だけを使っているので、作れば作るほど赤字になるんです!」とのこと。
まさしく、ダンロップの新技術が詰め込まれた『SPORT MAXX PROTO』だが、そのポテンシャルの高さはすぐに証明されることとなった。2024年1月9日、日産と合同で行った筑波サーキットでのテストアタック(車両:R35GT-R NISMO/タイヤサイズ:F255/40-20 R285/35-20)で、58秒820という記録をあっさりとマークしてみせたのだ。
同車両の純正タイヤ装着時のベストタイムは59秒078。この0.258秒というタイム差こそが進化の距離であり、次世代技術の証明というわけだ。
アタッカーを務めたレーシングドライバーの飯田章選手は「純正タイヤでは起こり得ないことなんだけど、パワーが本当に足りなく感じた(笑) 路面温度が低すぎてタイム出しはかなりシビアだったけど、バッチリ決まったね。凄いタイヤだよ」とコメント。
ランフラット構造であることを忘れてしまうほどの高性能だが、このタイヤは決してグリップ特化のスペシャルなどではない。市販タイヤよりも遥かに厳しいメーカーOE基準で開発され、ロードノイズもウエット性能も最高レベルを達成しているのだ。
残念ながら、『SPORT MAXX PROTO』の一般販売予定はないそうだが、このタイヤに詰め込まれた様々な技術は、2024年6月のデリバリーが決定している『SPORT MAXX RS』に投入されている。幅広いサイズ展開がアナウンスされているため、次世代スポーツラジアルの性能を体験したい方々は、購入を検討してみてはいかがだろうか。
PHOTO:金子信敏
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