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第1号車の堂々たる風格。
製造から35年が経過した現在も現役で稼働中!
HR31をベースとした限定モデルの中で、1988年に“トミーカイラ”が放ったコンプリートカー『M30』は、その生い立ちからして他の限定モデルとは一線を画す。
当時、日産との間に太いパイプがあったにせよ、トミーカイラ(当時はトミタ夢工場)はニスモやオーテックジャパンのように日産の息がかかっていたわけではなく、どの自動車メーカーとも組みしない独立したメーカーだったからである。
日本における公認チューンドコンプリートカーの草分けとなったM30だが、やはり注目はエンジン。国内モデルには存在しなかったRB30に、RB20のヘッドを組み合わせDOHC化して搭載。絶対的なパワーよりも、ドライバーの意思に忠実なレスポンスを求めたため、過給機レスのNA仕様とされたのである。
ちなみに、今回はトミーカイラブランドの正規拠点である“GTS”の協力で、M30の栄えある1号車を取材することができた。誕生から35年の年月が流れる中で、足回りやホイールなどが変更されてきたものの、堂々たる姿で周囲の視線を引き寄せるオーラは全く変わらない。もちろん、ドライバーの想いに応えるNAチューンドのフィールも健在だ。
「日本初の公認チューンドコンプリートカーが誕生すると知って、金額すら決まっていない開発段階でしたが迷わず購入を決めました。それまでケンメリやジャパン、鉄仮面にハルトゲ仕様のセブンス(R31)…と、歴代スカイラインを乗り継いできたのですが、M30は次元の異なる走りですね。シフトダウンせずとも5速のままで加速していける扱いやすいエンジン特性はもちろんですが、スタイリングやインテリアも大のお気に入りです」とは、オーナーの田村明男さん。
美しいコンディションを保ったM30の心臓部。排気量は3.0Lながら、最高出力240psを7000rpmで、最大トルク30.0kgmを5800rpmで発生する高回転型ユニットだ。ちなみに、RB30はRB20よりシリンダーブロックが50mm高い分エンジン搭載位置が上がり、サージタンクが干渉してしまうため、ストラットタワーバーは未装着となる。
排気量を引き上げて低中速トルクを確保しても、スムーズにトップエンドまで吹け上がらなければドライバーに呼応する人馬一体のエンジンフィールは得られない。NAチューンの仕上がりを左右するエキマニは、素材や形状を吟味したステンレス製の等長モデルが投入されている。
排気効率だけでなくサウンドにも拘って採用されたデュアルキャタライザーエキゾーストシステムだが、経年劣化は避けられない。オリジナルは入手不可能なため、デュアルパイピングやオーバルテールまで含めて再現したワンオフマフラーでコンディションアップを図った。
バルクヘッドに装着された、トミーカイラのコンプリートカーであることを証明するコーションプレート。“8001“という数字から1号車ということが分かる。
M30の足回りには減衰力4段調整機能を持つニスモ製ダンパーが採用されていたが、完全に抜けてしまったため、ニスモSチューン仕様へと変更。ブレーキパッドは、踏力に応じて高まる制動力がお気に入りのディクセル・Mタイプをマッチングしている。
M30のフロントセクションにおけるチャームポイントと言えば、グリル内部で輝くトミーカイラエンブレムと日本初のGTオートスポイラーだ。オートスポイラーは車速感応式型(70km/hで展開、50km/h以下で格納)だが、サイドブレーキがかかっている状態ではスイッチによるマニュアル操作が可能だったりする。
M30のリヤウイングは、本来トランクパネル両端から足が立ち上がる門型の固定式だ。しかし、オーナーの田村さんは、“トミーカイラM18Si(S13シルビアベース)”用の電動可変リヤスポイラー『ウイング・ロボ』が違和感なくマッチングできたことから仕様変更。トミーカイラの世界観を崩すことなく、空力特性をアップデートしたのだ。
オリジナルホイールは15インチの8本フィンスポークだが、再入手が困難なレアアイテムのために保管。代わりに、オーダーインセットの16インチで製作したRSワタナベ・エイトスポークをオリジナルと同じシルバーカラーで履きこなす。
ミントコンディションのインテリア。エンブレム付きイタルボランテ製ステアリングホイールやレザーシフトノブなどはM30専用品だ。
30年以上前のクルマでも、オーナーの情熱と愛情次第でまだまだ一線級のパフォーマンスを発揮してくれる。このトミーカイラM30を見る限り、そう思わずにはいられない。なお、生産予定台数200台でリリースされたM30は、現在、数台が残る程度の超希少車となっている。
●取材協力:GTS 京都府京都市伏見区竹田西段河原町90 TEL:075-646-0320
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