目次
チョップドルーフで実現した真のロー&ワイドフォルム
東京オートサロン2003に出展されて注目を集めたこのマシン。なんとその製作主は、当時の富士重工業(現スバル)バス事業部自動車事業推進部。そのお堅い名称とは裏腹に、仕上げられたクルマは過激度満点だ。バス製作には欠かせないハンドメイドの技術で製作した車両のテーマは、ずばり”ワイド&ロー”。それを実現する手法として採用されたのは、まさかのチョップドルーフだった。(OPTION誌2003年4月号より抜粋)
自動車メーカーがハンドメイドで手がけた痛快GDBカスタム
まさかメーカーがこんなものを作るなんて…。その生い立ちまで含め、見れば見るほど不思議なチューンドだ。よくアメ車などで目にするチョップドルーフは、Aピラーの傾斜をさらに寝かせるというもの。多くの場合は運転席を下げることで視界の確保が可能だが、4ドアセダンのGDBではそうはいかない。
そこでキリの良い100mmダウンを目標として、ルーフ全体の位置を下げる手法を選択。当然、作業はより大掛かりなものとなった。熱線が入るリヤウインドウは加工困難のため、そのまま使うことがマストと判断。AピラーとBピラーをカットしつつリヤウインドウを寝かせ、その角度に合わせてCピラーをイチから成形し直すことで対処している。
ルーフは新規製作し、フロント&サイドウインドウは強度を確保するために新たに型を起こしてリメイク。素材はアクリルではなく、ガラスだ。
これらの作業は困難を極めたそうで、例えばピラーのカットにしても、切断前にまず補強を入れながらルーフを仮組み。その上で、4層構造になっているピラーの各層を互い違いに切断していくという工程で進められている。これにより歪みを最小限に抑えつつ、ピラーを短くしたことによるボディ剛性向上を実現したのだ。さらにボディ単体での重量もノーマル時を下回るというから恐れ入る。
片側30mmワイドのフェンダーは全て叩き出し+鉄板溶接で作り上げられたもので、自動車メーカークオリティの美しさと強度を誇る。
ボンネットからルーフ、トランクフード、リヤウイングと全てオリジナルのカーボンパーツで統一。フロントバンパー、リヤバンパー、サイドステップもオリジナルで、カラーリングはホログラムを混ぜたマジョーラである「ギャラクシーIIアステレッド」。ホイールはワークシーカーで前後に9.0Jのマイナス19という強烈なサイズを押し込んでいる。
シートはバケットタイプにローポジションシートレールを組み合わせ、着座位置をノーマル比マイナス100mmとして、ルーフとドライバーの頭のクリアランスをノーマルと同等に保っている。実際に着座したラリードライバーの新井敏弘選手によると、その視界は「WRカーと同じ」とのこと。
乗車定員は純正の5人乗りから4人乗りに変更。4脚全てが独立するタイプの4シーターを採用しており、純正のシートレイアウトよりもゴージャスな仕様だ。
チョップド化されているにも関わらず、頭上にはオーバーヘッドコンソールが設けられ、ビクターとの共同開発だというツインデッキが装備されている。
また、コクピットには手だけの操作で運転ができるバリアフリー機構を装備しているのもポイント。より幅広い層に、カスタムカーを楽しんでもらいたいという狙いによるものだ。
デザイナーの手によるスケッチを元に、ひとつひとつハンドメイドで作り上げられたそのクオリティは、まさに自動車メーカーの仕事そのもの。派手なエクステリア、低い車高、そして隙のないインテリアと、カスタムカーとしてまさに完璧な出来栄えの1台に仕上がっている。
●取材協力:株式会社スバル
記事が選択されていません【関連リンク】
スバル
https://www.subaru.jp/