目次
独自のノウハウが満載されたドリフト仕様
一筋縄ではいかない前期型をチューニング!
2ドア&4ドアが用意された初代に対して、2ドアのみのラインナップで1986年に登場した2代目F31レパード。前期型はVG30DEを搭載するアルティマ、VG20ETを載せるXS/XS-II、VG20EのXJ/XJ-IIというグレード展開で、4速ATを基本にXJ系には5速MTも設定された。
当時は20系ソアラと並ぶスペシャリティクーペという位置付けで、TVドラマ『あぶない刑事』に登場したこともあって、未だにコアなファンを持つ一台と言っていい。
このF31のオーナーは「中学生の頃から憧れていて“免許を取ったら絶対に乗る!!”と決めてました」という、非常にF31濃度の高い人物。これまで4台を乗り継ぎ、実はもう1台、後期型のアルティマも持っていたりするのだが、前期型は「見た目は旧車仕様でドリフトを楽しむ」というテーマで製作されている。
ベースはXJ-IIで、部品取り車として用意したHCR32からパーツを総移植しているが、前期型は各部の設計が古く、チューニングを進めてく上で色々と問題が出てくるため、後期型や他車種用のパーツを巧みに流用しているのが見どころだ。
例えばRB20DETの搭載。F31にはVG系エンジンしかないため、直6のRB系を載せるにはマウント類の問題が出てくる。そこでまず、フロントサスメンバーをC33用に交換。すると、今度はノーマルのステアリングラック&ポンプが使えなくなるため、いずれもR32用を流用しているといった具合。ちなみに、ミッションはメンバーをワンオフ製作した上でR32用が組み合わされている。
同じプラットフォームを持ちながら、R31と決定的に違うのがラジエターコアサポートの位置。元々搭載されているのがV6のため、F31の方が大きく後ろに寄っていてエンジンルームの前後長が短いのだ。そこに直6のRBを載せるには、それなりの技が必要になるわけだ。なお、制御系は2週間かけてメインハーネスを製作した上でR32用ECUを移植した。
ラジエターはコーヨー銅2層に交換。エンジン本体とのクリアランスを稼ぎながら冷却性能を高めるため、電動ファンは2基並列のアベニール用を中央でカットし、ひとつをラジエター前方からの押し込み式、もうひとつを後方からの引き抜き式として使っている。
また、ドリフト仕様ではポイントになるフロントのテンションロッドにも注目。前期型のノーマルはハコスカ〜DR30系と同じ形状で、後期型とはボディ側ブラケット形状=固定方法が異なり、アフターパーツが少ないだけでなく価格も高かったりする。
そこで、ブラケットをボルトオン交換できる後期用に替えることで、S13用テンションロッドが使えるようになっている。ドリフト仕様では消耗品とも言えるパーツだから、これでコストをグッと抑えられるし、長さ調整式やピロタイプなど選択肢の幅が広がるのも大きなメリットだ。
サスはフロントにF31用JIC車高調、リヤにS13用全長調整式車高調(メーカー不明)を装着。ブレーキは、前後ともF31後期用のキャリパー&ローターを移植している。
ホイールは15インチのSSRマークIで、フロント7.5Jマイナス10、リヤ8.5Jマイナス17をチョイス。これに195/55サイズのトランピオビモーダを引っ張ってセットする。
室内には、ステアリングコラム上にオートゲージタコメーターとタイメックスブースト計をセット。「タコメーターは装着したくなかったんですけど、VGからRBに換装したことでパルスが変わり、純正メーターを動かせないので仕方なく付けてます」とオーナー。また、前期型の証である2段グローブボックスの上段にはK’s水温/油温/油圧計が並ぶ。
ブースト圧制御に今時の電気式ではなく、80年代風にトラストTVVCを使っているのもオーナーの拘り。「ダイヤルに貼るTRUSTのロゴ入りプレート。それがあれば完璧なんですけどね」とのこと。
シートはレカロA8に交換。ダッシュボードを染めQでグレーに色替えして、フロアカーペットからドアトリム、天井、リヤシートを交換することで内装を後期仕様としているのもポイント。ロールバーはR31用がほぼボルトオンでいけるそうだ。
気になるのは、ドリフトマシンとしてのF31の素性だが「角度を付けられるし、ホイールベースが長いからスピンもしにくい。ただ、リヤサスがセミトレ式なのでトラクション性能が低く、コントロールも難しいです。基本的にはドリフトしにくいクルマだと思いますよ」とオーナー。と、分かっていながら、それでもチャレンジしているのは、拘り以外の何者でもない。
●取材協力:ツインズファクトリー 宮城県仙台市宮城野区岩切字稲荷西13-2 TEL:022-255-5023
記事が選択されていません