「違和感が無さすぎるランエボクーペ、見参!」美しすぎるストリートファイターに迫る

ミラージュクーペにランエボのパーツを大量投入!

4WD化まで敢行されたハイレベルすぎるストリートスペック

映画内で活躍する“劇中車”に乗ってみたいという妄想は、誰しも抱いたことがあるだろう。そんな純粋な想いを、人とはかなり違った形で実現してみせたのがラスベガス在住のアーチー・コンコンだ。

SEMAショーの開催地としても知られるラスベガス在住のアーチー・コンコン。大きな体を揺らしながらよく笑うナイスガイで、5人の子供を持つ良きパパでもある。街乗り用としてエボIIIも所有し、ライトハンドドライブを満喫中。

きっかけはアメリカ空軍に従軍中、たまたま基地で観たジャッキー・チェンの映画だった。それまでクルマには特に興味がなかったアーチー・コンコンだが、ジャッキーが記憶を失くした秘密工作員を演じた『Who am I(原題:我是誰)』というアクション映画に登場した白いスポーツカーに目を奪われる。ランサーエボリューションIVだ。

ランエボIVのベースとなる5世代目のランサーは、当時北米ではミラージュとして販売され、セダンの他に2ドアクーペも設定されていた。アーチーはその翌年に生活の足として2ドアのミラージュを購入。1.8LのFFで、しかもATという、至って普通のクルマだった。

だが、アーチーはいつか映画で観た憧れのクルマと自分のクルマが同じプラットフォームを共有していることに思い至るや、「じゃあエンジン載せ替えたら2ドアのエボじゃん!」と途方もないアイディアを思いつく。それからランエボの歴史や構造を改めて学ぶと即行動。手始めに日本の解体業者からランエボIVのフロントクリップを個人輸入した。

まずはランエボIVのエンジン、ミッション、トランスファーケースの移植に始まり、寸法を合わせたプロペラシャフトやドライブシャフト、リヤデフも用意してミラージュの4WD化に没頭。ひとまず走行可能なバージョン1が完成したのは、作業開始からわずか2年の早業だった。

チューニング沼にハマったアーチーはそこで満足せず、事あるごとに自作の2ドアエボをバージョンアップ。「今度はドラッグレースを10秒台で走るショーカーにしたい!」と新しい目標をぶち上げる。

もはやバージョンいくつなのか本人も覚えていない現在の2ドアエボは、ランエボIXのブロックをベースに2.1L化したTrevtec製4G63型レーシングユニットを搭載。これは、CNC加工したレースヘッドやManleyの10.5:1ピストン&94mmクランクなどによって構築されている。

タービンは、Gonzevoのキットを使用して1000ps対応のXona 9569をトップマウント。カーボンボンネットから突き出るチタン製アップパイプが攻撃的だ。

E85を使用する燃料系はID2600ccインジェクターで増量。点火系もR35GT-Rのイグニッションコイルで強化し、AEMのインフィニティ506で制御する。最高出力は753ps、最大トルクは80.6kgmに達している。

エクステリアは、バリスASSOバージョンのバンパー、ディフューザー、フェンダーなどを備え、カーボン製のボンネットとトランクフードも装着。サイドスカートは2ドア仕様に合わせて短縮済みだ。

ホイールはボルクレーシングCE28Nで、リム幅は10.5J。フロント6ポット、リヤ4ポットのビッグブレーキはイギリスのアルコン製となる。

室内では、トミ・マキネンモデルのOMP製ステアリングとレカロシートがお気に入り。メーターはカーボンクラスターを備えるAEMのデジタルダッシュCD7Lだ。5速MTは、ランエボIVベースにランエボVIII/IX用のギヤを移植した強化版を組み込んでいる。

剛性アップもキッチリと行われ、後席側に4点式のカスタムロールケージ、トランクにワンオフのリヤストラットバーを装着する。

「ミラージュのパーツはドアとガラス、カーペットくらいかな(笑)」と言うほど、まさにWho am I?な大変貌を遂げた2ドアエボ。目標だったゼロヨンのタイムはストリートタイヤで10秒4、終速233.3km/hを達成し、アーチーの地元であるラスベガスで開催された2014年のSEMAでショーデビュー。はじめはクルマ好きではなかった男は、全米のカーガイ達から「Crazy!」と大賛辞を浴びたのであった。

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Photo:Akio HIRANO TEXT:Hideo KOBAYASHI

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