「勝利こそ自社製品の性能の証明!」D-MAXだからこそ成せる最先端のS15シルビアメイキング!

全ては一般ユーザーのために!

“角度旋回”走法の先駆者、横井選手のマシンを徹底解剖

2012年から横井選手をファーストドライバーに、S15シルビアによるD1GP参戦を継続しているD-MAXレーシング。常勝チームとして2018、2019、2022年のシリーズ優勝、2017、2020、2021年のシリーズ準優勝という華々しい実績を残してきた一方で、当初からの最も大きな参戦理由として一貫してきたポリシーがある。

それは、D-MAXがドリフト向けアフターパーツメーカーであることに由来する、参戦車両がそのまま市販パーツ開発用のテスト車両でもあり、尚かつ、その性能を公に示すためのデモカーでもあるという考え方だ。

それ故、エンジンやミッションなどのパワートレインを除く、エアロパーツやサスペンションのほとんどの部品にD-MAXブランドのパーツを使用しており、そのどれもが一般ユーザーでも購入可能な”吊るし品”であることが最大の特徴だ。

特に足回りについては、ほぼ改造無制限のレギュレーションで運用されているD1GPにおいても、純正加工形状のショートナックルと、ニッサンマルチリンク用のリヤ3点ピロアームというパッケージを続けている。いわゆるワイズファブに代表されるアングルキットを投入しないのは、参戦ポリシーの『市販品へのフィードバック』という理由から、敢えて使用を避け、自身のクルマにもD-MAXの製品を使うことでD1GPチャンピオンマシンと全く同じ仕様の足回りが作れる…という考え方を文字通り実戦するためにあるのだ。

そして、主要な部品に自社製品を多く使用しているという点は、年間10戦にもなるシリーズを戦い抜く上でも役に立つ。現場でのクラッシュやトラブルが発生したときに共通したストックパーツを用意しやすくなるのだ。2014年からは横井選手に加えてチームのドライバーが2名となり、S15を同時に2台体制で運用するようになったことからその重要性はさらに高まった。どんなクラッシュが起きても本戦までには復活して好成績を飾るゾンビ横井の愛称の裏には、そんなチームのサポート体制が大きく寄与している。

「2020年に1号機から4号機へ車体を替えたけど、仕様を変えた部分はほとんどないです。載せるエンジンが電スロになってアンチラグを入れたくらい」と横井選手。1号機の時点で既に完成形と呼べるほどのS15の基本が定まったのは2015年頃に遡る。

「今のような足回りの考え方ができたのは2015年にアメリカのフォーミュラドリフトにフル参戦したときですね。当時の日本のクルマは全然最大切れ角が足りなくて、トラクションをかけながら横に速く走るドリフトができなかった」。

これは後に角度旋回と呼ばれる現在のドリフト競技におけるスタンダードとなる走り方であり、横井選手が目指すこの走りを実現できるよう、ナックルや車高調、アーム類などのD-MAXのフラッグシップ製品は1号機の時点で完成していたのである。

そんなD-MAX横井選手号の最新スペックを見て行く。レーシングスペックのワイドエアロボディキットをベースに、専用アンダーパネルでアウトラインをアクセント。リヤバンパーは作業性のためハーフカットモデルかつ、アンダーパネル一体成型とすることで全長規定をクリアする。

また、2024年よりタイヤメーカーがトーヨーとなり、プロクセスR888RDを前後に履き、ホイールもニューモデルのグラムライツ57NRへ。フロントの操舵性のため片側純正比30mmロングロワアームと40mmワイトレは必須で、そのためにフロントのみオーバーフェンダーを後付け。

リヤウイングは減衰同様のセッティングツールとして利用し、コースや場面に合わせて細かく角度を変更したい横井選手の好みに合わせてサードのスワンネックタイプを装着。

BCの3.4Lストローカーキットを組み込んだ2JZには、2020年の4号機製作の際にアンチラグ導入のためボッシュの電動スロットルを導入した。冷却はリヤラジエター化と燃料にスノコ260GTプラス100%を使用し、トランク内には氷を入れて冷却可能なパーコレーションを防ぐコレクタータンクを配置。

現時点で思いつく改良点はピークパワーのみとのことで、筑波ラウンドから写真のG40-1150タービンにサイズアップ。左足ブレーキは全く使わない代わり、常にクラッチ操作によるパワーバンドのキープとトルクコントロールを行なうのが横井流。

ラック位置はフロントに25mmオフセット。一方、田野選手S15は30mmオフセットされていて、この5mmの差がそれぞれの操作性の好みの違いに表れているそうだ。

リヤアームはD-MAXの市販品をそのまま使用する。リヤメンバーの角度はそのまま、ボディマウント位置をリヤ側へ約15mmオフセットすることでホイールベースを延長。これによってトラクション性能がアップする効果があるという。

車高調は別タンク式のD-MAXレーシングスペック。セッティングを突き詰めていくと伸び、縮みを個別に設定できるメリットは大きく、商品化の際もこだわりがあったようだ。一方、スプリングは反発力にこだわりなく、D-MAXの標準レートから2JZに合わせフロントのみ硬くした12kg/mm&6kg/mm。

ミッションはシフトフィールの良さから一時期サムソナスを試したこともあったが、それ以外の時期は耐久性がずば抜けているというホリンジャーの6速シーケンシャルをずっと使用。ステアリングはナルディのラリー330φで、シートポジションは少し遠めが好み。

純正サイドでも必要な場面では十分にロックできることや多少効きの遊びが作れることを理由に油圧サイドを使ってこなかったが、今シーズンはついに油圧サイドを導入予定。シミュレーターで慣れるための練習をしているそうだ。

チャンピオン争いが当たり前となった今となっても、市販パーツを使うユーザーの嗜好へ向けた目線はより敏感に。実戦からのフィードバックを最優先に考えることがD-MAXのポリシーということは、今後も一貫して続けられていくようだ。

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TEXT:Miro HASEGAWA (長谷川実路) PHOTO:Miro HASEGAWA (長谷川実路) /山本大介(Daisuke YAMAMOTO)

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⚫︎取材協力:CSマーケティング TEL:072-441-1177

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