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GT-Rの4駆システムはそのままに前代未聞の2JZスワップを実現!
排気量が大きく頑丈だから2JZエンジン換装を決意
一言で邪道チューン。GT-Rにトヨタ最強の直6ユニット2JZ-GTEを積み込むなど、やはり掟破りという他にないだろう。
そんな前代未聞のエンジンスワップを手掛けたのは、チューナーではなくプライベーター。かつてゼロヨン9秒台を叩きだす2JZ仕様の10ソアラを製作してチューニング誌を湧かせていたほどの人物だ。
このGT-Rを製作したきっかけは、RB26DETTが度重なるエンジンブローに見舞われたから。走行距離が伸びていたこともあり、ガスケット抜けやピストンの棚落ちなど、壊しては直して…を繰り返していたそうだ。
そんな時、ガレージに保管していたドラッグ仕様のソアラを見ていて閃いたのが、“ハイパワーな上に頑丈な2JZ-GTEを換装すれば解決するのでは…!?”という禁忌のプランだった。試しにRB26DETT用のオイルパンを2JZ-GTEに当てがってみたところ、合体は不可能ではないと分かり、このエンジンスワップに踏み切った。
2JZ-GTE化にあたって拘ったのは、GT-Rの武器であるアテーサE-TSシステム(4WD機構)を生かすこと。そのためには、フロントデフケースと一体型のRB26DETT用オイルパンを使うことが必要不可欠。そこでオーナーは、2JZ-GTEにRB26DETTのオイルパンをドッキングできるアダプターを製作。凄まじい執念である。
その他、エンジンマウントやミッションアダプターなども自作しつつ、逆転するターボレイアウトに合わせて吸排気環境も一新。試行錯誤を繰り返しながら、2JZスワップを実現させたのだ。
下回りを見れば、製作の苦労がうかがい知れるというものだ。RB26DETTと2JZ-GTEでは吸排気のレイアウトが逆になるため、エキゾーストマフラーはプロペラシャフトをまたぐようにワンオフ製作し、燃料ラインも反対側に引き直すなど、様々な箇所に2JZ化を成立させるための策が講じられている。
ミッションはGT-R純正5速を使用。本当はBNR34純正のゲトラグ6速にしたかったそうだが、予算の都合で断念した。
「苦労の甲斐もあって、満足のいくマシンに仕上がりました。RB26って低回転が弱くて高回転に強いイメージですけど、2JZは真逆。これは400ccの排気量差はもちろん、搭載した2JZがVVT-i付きの後期だったことも大きいかもしれません」とオーナー。
なお、インストールされた2JZ-GTEはヘッドにHKSのハイカムを組み、RB26DETT時代から愛用してきたトラストT78-33Dタービンを激安の中華EXマ二でドッキング。最大ブースト圧1.8キロ時に推定700psを発揮するスペックだ。
スロットルはインフィニティQ45用(90φ)をセットし、それに合わせてインタークーラーのパイピングも90φで製作。ちなみに、2JZ-GTEの純正サージタンクはインマニが回り込んだ形状で整備性が悪いため、ワンオフで作り直している。インジェクターはサードの800ccだ。
重要なエンジンマネージメントは2JZ純正とF-CON Vプロで行い、燃料制御はDジェトロ化。トラストVマネージでVVT-iも積極的にコントロールしている。
GT-Rチューニングにおいて禁忌に触れる2JZスワップ仕様。しかし「RB26あってのGT-R」という固定概念や制約に捕らわれないプライベーターだからこそ生み出せたこのチューンドには、どこか不思議な魅力があることだけは確かだ。