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ミッションはトヨタの純正5速MTを移植
“巨漢”が見せるドリフトは迫力満点!
それは以前別の取材で“カザマオート”に足を運んだ時のことだった。取材車両を撮影するためファクトリー裏手に向かうと、フロントマスクがごっそり外された製作途中の大きなセダンが目に付いた。「あ、インフィニティQ45だ」。
が、その見てくれが少々普通ではなかった。車高は結構な勢いで落とされ、ビス留めオーバーフェンダーを装着。フロントタイヤには大きくネガティブキャンバーも付いている。ということは、まさか…。
「これね、ドリフトしたいっていうお客さんに頼まれて作ってるのよ。エンジンはノーマルだけど、ミッションはツアラーV用の5速MTに載せ換えてあるよ」と話してくれた風間代表。
インフィニティQ45をドリフトのベース車に選ぶなど想定外すぎるが、もしこれがRB26DETTや2JZ-GTEに載せ換えられていたとしたら、あまり興味をそそられなかったかもしれない。エンジンが4.5L・V8、VH45DEのままMTに換装されているからこそ、「ぜひ取材したい!!」と思ったのだ。
細部を見ていく。93.0φ×82.7mmでショートストローク型となるVH45DE。ほぼ時を同じくして登場したUCF10セルシオが搭載する1UZ-FEよりも排気量が500cc大きく、パワーで20ps、トルクで4.8kgm上回った。しかも、最高出力280psを6000rpmで発生。4.5Lという排気量にしては上までよく回るエンジンというのが日産らしい。
ミッションはJZX100用の5速MT、トヨタR154を搭載。ベルハウジングはVH45にボルトオンできるZ34用(前側)と、JZX100用(後ろ側)を合体してミッションを組み合わせる。プロペラシャフトも同様でJZX100用の1軸と、HG50(インフィニティQ45)用の2軸を継いだものだ。デフはR200でS14用LSDをセット。ファイナル比は純正3.7から4.1へとロ―ギヤード化が図られている。
MT化に際して問題になったのがクラッチのマスターシリンダー。エンジンがバルクヘッド直前まで迫っているため、装着するスペースがなかった。そこで、ベルハウジングと併せてZ34用ダイレクトレリーズシリンダーも流用。エンジンルームにはクラッチフルードカップのみが装着される。
足回りは構造的にフロントがR32/33スカイライン、リヤがS14に準じたもの。車高調はDG-5の特注品で、スプリングレートはとりあえずフロント16kg/mm、リヤ14kg/mmで落ち着いた。前後のアーム&リンク類は調整式に交換され、アライメントセッティングの幅を拡げている。
ドリフトに重要なナックルは、ショート加工を施したスカイライン用を装着し、フロントタイヤの大幅な切れ角アップを実現。タイヤは265/35R18サイズのフェデラル595RS-RRを履く。
室内は、ステアリングホイールとシートが交換されている程度で、ダッシュボード周りはノーマルの雰囲気を残す。サイドブレーキはJZX100用を流用し、足踏み式からハンド式に変更される。
ちなみに、排気系は触媒後のセンターパイプからワンオフ製作。始めにストレートで製作したらあまりにも爆音だったため、途中にサブサイレンサーを追加し、さらに消音効果を高めるECVも装着。ある程度まで排気音量を下げることに成功した。
ボディはタイヤとの干渉を防ぐため、前後フェンダーアーチを50mmほどカット。その上に汎用オーバーフェンダーがビス留めされる。また、エアロパーツも装着されるが、オーナーが手に入れたのは実は互換性のない前期型用だったため、それを加工して後期型にうまくフィットさせている。
風間代表いわく、「オーナーさんが街乗りもしたいってことだったからフル公認を取ってるよ。ミッション載せ換えも調整式アーム類もね」とのこと。
オーナー自らがステアリングを握っての初走行をコースサイドから見ていたが、全長5mを超える巨体が目の前で滑走する様は迫力満点。ECVを開放したマフラーから吐き出されるV8サウンドも盛大で、そこには、かつて日産のフラッグシップセダンだったというジェントルなイメージは微塵もない。
「昔からV8が好きで、VIP系カスタムやアメ車にハマっていた時期もありました。ドリフトを楽しむのに、このクルマだったら面白そうだと思ってインフィニティQ45を選んだんです。で、ドリフト仕様を作るならカザマオートにお願いしようと」とはオーナーの鈴久名さん。
そんなオーナーのセンスと、ドリ車メイクに長けたカザマオートの技術がガッチリ噛み合って誕生した個性派マシンが、このインフィニティQ45なのだ。
●取材協力:カザマオートサービス TEL:048-745-2026
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