目次
300km/hオーバーを目指にはパワーとギヤ比が鍵となる!
86&BRZを集めて最初にテストを行った際には「300km/hオーバーは無理かな?」とも思われた最高速テスト。しかし、目標が定まり猛進撃を開始したトップチューナーたちの技術の進歩は目覚ましく,初テスト(2016年)から約1年半で続々と300km/hオーバーを果たすに至った。ここでは果敢に最高速テストに挑み、見事300km/hの大台を掴んだ4台の先代86/BRZとチューナーを紹介しよう。
フェニックスパワー【ZN6】
MAX SPEED:319.03km/h
ランキングトップの座に輝くフェニックスパワーのZN6。燃料は市販ハイオク、テストコース専用の細工(チューニング)は行わないなど、独自の縛りを持って開発の取り組まれた車両だ。パワーチューンやギヤ比の改善はもちろん、320km/hを目指しての最終段階では、リヤバンパーの下部のパラシュート効果を嫌い大胆にカットしたり、タイヤ外径をアップするなど基本に立ち返ったアップデートも重ね、この記録を樹立した。
エンジンはマーレー製カスタムピストンとマンリー製コンロッド、オリジナルロングストローククランクによる2.1L仕様。高出力対応のVABエアフロとオリジナルECUセッティングにより、全域エアフロ制御を実現、ストリート仕様として万能といえる手法だ。タービンはトラストのTD06-25G、素早く立ち上がるブースト特性でストリートでも使いやすい。
駆動輪はそれまでの265/30-19から、235/40-19に変更、これにより外径が約30mm大きくなる。ノーマルミッションに3.58ファイナルとの組み合わせで、6速7000rpmで322km/hとなる計算だ。
「当社の技術の証明をすべく挑み続けている最高速で、なんとか最速の座を獲得しましたけど、目標の200マイルにほんのわずかに届かなかったのは悔しかったですね。対策はしてきたのですが、空気の壁の力は想像以上だったようです。エンジンブロックの強度に不安がありますが、もうほんの少しパワーを上げれば目標を達成できたかもしれないですね」とは横山さん。
オートクラフト【ZN6】
MAX SPEED:315.66km/h
やはり初期から積極的にテストに挑んできたオートクラフト。フェニックスパワーに抜かれるまではこの記録で頂点に君臨した。その姿勢は、新たなアイテムの投入や、現代的なデータ管理と解析を積極的に行って最新のチューニングスタイルを追求したこと。
記録を狙って組み直したエンジンは、圧縮比を9.9から8.9に落としてビッグタービンとNOSの噴射に対応。ブロックの強度を落とさぬため、2.0Lのままでピストンやコンロッドを強化しているのが特徴だ。ブロックは強化ヘッドボルトを打ち込んだセミクローズドデッキ仕様で、そこにEFR7670タービンを組み合わせて最高出力は480ps(NOSなし)を発揮する。
最終兵器として採用したのが、約70psにドーピングが可能になるNOSだ。当初は自動噴射するプログラムを組んで裏ストレートでNOSを使う設定となっていた。しかし、スタッフが常駐するメインストレートでの最高速アタックとなっため、手動噴射式に変更された。
「当初、飯田章さんに“86で300km/hは無理っしょ!!”と言われたんですが、この言葉で気持ちに火がついて頂点を目指し続けるモチベーションになりましたし、一時は日本一(世界一?)の座にもつけて非常に嬉しく満足もしましたし、開発の段階では学んだことも多かったですね。」とは製作者のオートクラフト白髭さん。
HKSテクニカルファクトリー【ZN6】
MAX SPEED:314.27km/h
HKSのアンテナショップ的立ち位置のテクニカルファクトリーだが、KMSとタッグを組んで作られたこのZN6のチューニングはオリジナリティ溢れる独自路線となっている。
エンジンはHKSの2.2Lショートブロックを用いたクローズドデッキ仕様で強度も高く、オイルジェットも追加されている。ボア×ストロークは86.5φ×90mmで排気量は2116ccだ。1.24mm厚のヘッドガスケットを合わせて、圧縮比を10.5にまで落とし、最大ブースト圧1.8キロ時に622.4psを発生する。
エンジン前方にGTIII-SSタービンをツインでセット、R35GT-Rから流用したインタークーラーと共にフロントグリルからただ者ではないオーラを放つ。吸気口にはスーパーパワーフローがセットされているが、アタック時により吸入空気量を増やすことを目論みフィルターを外していた。
「300km/hオーバーを達成したことにはホッとしましたが、我々は正直320km/hオーバーを狙っていましたので非常に悔しかったですね。ワイドボディで空力面での不利があるのは承知していますが、アタックドライバーのDaiさんから安定感を評価されたのは収穫です。スペック的にはこれ以上ないレベルですが、GTIII-RSツイン仕様なども試してみたいですね」とはHKSテクニカルファクトリーの菊池さん。
ガレージ八幡【ZN6】
MAX SPEED: 304.63km/h
アクセルのオン/オフがによる加減速負荷があまり起こらない最高速テストでは駆動系のブローや大きな故障はあまりないが、実際は450psを超えると強度不足でブローすえうケースが多いといわれるFA20用6速MT。そのため、本格的なターボチューンを施した後、高強度なミッションに換装するのが定番化しつつある。
その中でも、最大のコスパと安定性ということでガレージ八幡が選んだのがトヨタのR154タイプ。600ps程度は余裕でもつことと、新品でも70万円程度で換装できるのがポイントだ。
GT3240タービンを組み合わせ500ps、200km/h以上の領域では大量にNOSが噴射され約600psを発揮する。エンジンは、8000rpmオーバーでも使えるようオリジナルのピストンを用いた強化やバランス取りなどを徹底する。
「ワイドボディの空力的な不離を補うためには、エンジンパワーはもっと上げて楽にスピードを出せるようにしたいですね。若い頃“誰にも負けたくない”と、パワーを追求し続けていたころを思い出しますね(笑)」とは製作者の森田さん。
ポン付け過給器仕様のターゲットは250km/hだ!
チューニング次第では300km/hもすぐに出せそうに感じるかもしれない。しかし、トラストが持ち込んだT518Zターボ仕様が248.48km/h、HKSテクニカルファクトリーのGTS7040Lスーパーチャージャー仕様が252,73km/hと、一般的なボルトオン過給機仕様は250km/h付近が限界値となり、この数値が300ps前後の車両の目安といえるだろう。
ちなみに、テストコース(高速周回路)は直線部が約1.5km弱、パワーが少ない車両だとこの距離では加速しきれないため、長い直線があればもう少し最高速が伸びる可能性はある。大幅にポテンシャルの上がった現行モデルのZN8/ZD8に関しては編集部にデータが少ないがNAで240〜250km/h、ボルトオン過給器で260〜270km/hがターゲットになりそうだ。