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年間50機以上のTC-SSTを蘇らせる老舗のメソッド
GフォースがランエボXのATモデルをお勧めする理由
高騰が続く国産スポーツモデルの中古車市場。その中で現実味のある相場で推移しているのが、ランサーエボリューションX(以下:ランエボX)のTC-SST(AT)モデル。中古車相場は160万円~と、同じランエボXの5速MTモデルやライバルマシンと比べるとかなり手頃な価格帯なのだ。
「ランエボⅩの5速MTはギヤ比がイマイチなこともあり、サーキットでもSSTの方が速いくらい。ブーストアップをすれば350~360psが狙えて、ラジアルタイヤでも筑波1分2秒くらいは出ますよ」と教えてくれたのはガレージGフォースの田澤代表。
ゲトラグと三菱が共同開発したTC-SSTは、動力の伝達ロスも少ない。ふたつの変速機がひとつのケースに入っているようなイメージだ。
具体的には、奇数ギヤ(1/3/5速)用と偶数ギヤ(2/4/6速)用それぞれに湿式多板クラッチが与えられ、例えば3速で走っている時は2速または4速があらかじめセレクトされていて、クラッチを切り替えることで素早いシフトチェンジを可能にしている。
では、なぜTC-SSTモデルは安いのか。それはトラブルの多さと高額な修理代(ディーラーでミッション載せ替えの場合130万円〜)だ。
そこに目をつけたのがGフォース。独自にTC-SSTのシステムを攻略し、今では年間50基以上のペースでミッションの修理とアップデートを敢行。弱点の洗い出しとその対策術は、すでに完成の域に達しているのだ。早速、各パートのトラブル事例と、その対策方法を見ていこう。
湿式クラッチの摩耗
まず、よくあるのが湿式クラッチの摩耗。ローラー式のシャーシダイナモ換算で500ps程度まで対応できるSSTだが、ディスクの摩耗が進むと滑り出し、やがては繋がらなくなる。後期型でも走行距離8万kmを超えているようなら、そろそろ交換時期とのこと。
なお、2009年型までの初期型はクラッチ摩耗の学習機能が備わっておらず、クラッチが減ると繋がるまでにラグが生じる。すると半クラが長くなり、ますます摩耗しやすくなってしまう。Gフォースでは対策済みのミッション制御プログラムに書き換えることも可能だ。
シフトポジションセンサー不良
偶数/奇数ギヤに入らなくなるというのもよくあるトラブル(前期は偶数、後期は奇数)。これはフルードの劣化や油温上昇により、シフトポジションセンサーの受け側のマグネットスイッチが脱落、損傷してしまうから。すると、ギヤがどこにあるのか判別できずシフトが入らなくなる。
付け直せば良いという単純な話ではなく、修理してもすぐに再発する事例は多い。Gフォースでは独自のノウハウを注入し、しっかりと対策して修復してくれる。
バルブユニットプラグの割れ
油圧のコントロールを担うバルブユニットには、リリーフするためのアルミ製のプラグが付いている。これが斜めに咬み込んで割れてしまったり、中に入っているバネが折れるというトラブル。こうなると油圧が掛からずに、クラッチが切れなくなってしまうのだ。Gフォースではジュラルミン製の強化品を入れることで対策している。
オイルポンプの焼き付き
フルードを圧送するためのオイルポンプ。ギヤ駆動となっているが、シャフトが焼き付いてギヤが動かなくなる事例もある。するとオイルポンプが回らずに、SSTがまったく反応しなくなり、クルマが不動状態に陥ることも…。
ダンパースプリングの折損
ダンパースプリングの折損も珍しくない。SSTのハウジングには全周に渡ってバネが組み込まれ、クラッチ断続時のショックを吸収している。しかし、街乗りでスーパースポーツモードを多用するなど、酷使をしているとバネの負担が増えて折れてしまうのだ。
変速ショックが大きかったり、アクセルは一定なのに回転が上下する…といった症状が出ているならここを疑うべし。やっかいなのは破片がオイルストレーナーを詰まらせたり、オイルポンプのギヤに咬み込むなど、さらなる二次被害を引き起こすケースもあること。異常を感じたら早めの修理、対策をするのが肝心だ。
約85万円でTC-SSTは蘇る
「SSTのトラブルが出るか否かは、正直、運次第。後期や街乗りメインの車両でも壊れますから。ディーラーで130万円かけて新品に載せ替えても、肝心な部分の対策がされていないので、再び壊れるリスクがあります。ウチではミッションの状況にもよりますが修理&対策を全てやって、約85万円でSSTの楽しさをバッチリ堪能できるようになりますよ」とはGフォース田澤代表。
ちなみに、メーカーが10万kmノーメンテを謳っていたTC-SSTだが、これも寿命を短くしているのポイントだという。Gフォースでは2~3万km毎のDCTフルード交換を推奨しており、お勧めはHKSの強化フルード「DCTF」(100%化学合成タイプ)。サーキットを走ると油温は140~160度まで上昇してしまうのでDCTクーラーも必須だという。
大きな出費を抑えるために、現オーナーはオイル管理から徹底していくべき。そして少しでも不安を感じたら、早めにGフォースに相談するのがベストだろう。
●取材協力:Gフォース 神奈川県横浜市鶴見区獅子ヶ谷2-39-68 TEL:045-716-8013
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