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レストモッド的アプローチでフィアット500を魔改造!
ハイギヤード化で高速巡航にも対応
大人気アニメ“ルパン3世”の愛車としても知られるチンクエチェント(フィアット500)。半世紀を超えて愛され続けるイタリア生まれのコンパクトだが、そんな名車に近代的な走行性能を与え、日本で軽自動車登録したのが今回の主役だ。
エンジンはオリジナルの空冷直列2気筒(479cc/15ps)を撤去し、同じRRレイアウトを持つスバル・サンバー用の水冷直列4気筒(658cc/48ps)を、エンジンマウントを兼ねたクロスメンバーごと移植。同時に、フロントの足回りもサスメンバーまで含めてサンバー用を移植することで刷新している。
「このパッケージは、2005年に愛知県のチンクエチェント博物館とスーパーオートバックスが共同開発した“マキナ”と呼ばれるコンプリートカーが元祖。ショップ単位でも同じ仕様が複数製作されたのですが、この個体はその中の1台です」とはオーナー。
続けて「ミッションもサンバーの3速AT仕様なのですが、問題はギア比。100km/h巡航で6000rpmと、超ローギヤード設定なんです。騒音や振動は凄いし燃費も最悪。どうにか改善できないか悩んでいたんです」とのこと。
そこでオーナーが頼ったのが、埼玉県の実力派チューナー“ブラックライン”だった。ミッション減速ギヤのワンオフ製作を依頼し、ハイギアード化を試みたのである。
ただし、純正のミッションケースに収まるギアは物理的な限界もあるため、ブラックラインはケース内部を広げながら理想に近いサイズのギヤを製作して組み込んだ。これにより、100km/h巡航での回転数が約4000rpmまで引き下げられ、エンジンの負担と共に高速クルージングのストレスも大幅に軽減されたという。
ラジエターはフロントフード内のスペアタイヤスペースに搭載。フロントには導風グリルが備わっていないため、電動ファンでラジエターにフレッシュエアを導くように改良。真夏の環境でもオーバーヒートの心配はないそうだ。
フロントフードには純正ガソリンタンクの他、サンバーから流用したエアコン用のブロアファンもインストール。
パーツレイアウトの都合上、フロントフードには荷物を積載するスペースが無くなったため、リヤにキャリアを設置して対応。キュートなボディに好マッチだが、これは魅せ要素ではなく必要装備なのである。
MOMOのコマンド2ステアリングとオートゲージ(追加メーター)のコンビネーションがチューンド指数を高める室内。サンバーから移植したエアコンや1DINのインダッシュナビなど、年式不相応な快適仕様へと進化を果たしているのだ。
前後の足回りはブレーキまで含めてサンバー化されているため、走行性能はかなり近代的。ハブがPCD100の4Hになったことでホイールの選択肢も増し、取材時はヴィヴィオの純正オプションだった13×5.0JのBBSがセットされていた。タイヤサイズは145/65R13だ。
“魔改造”と表現したものの、このチンク、レストモッドとしてはまさに正攻法のアプローチ。随所に“今”を生きるためのチューニングが施され、快適にデイリーユースを楽しめる1台に仕上がっているのだ。
●問い合わせ:ブラックライン 埼玉県川越市下広谷690-1 TEL:049-239-6667