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素材となったのは512BBi!
カムスプロケットを製作して国産タイミングベルトを使用
好きなクルマだからこそ、いつでもどこでも乗りたい。それは、クルマ好きなら誰もが抱くであろう共通の認識だ。一方、いわゆる旧車乗りの中には様々な面で多くの犠牲を払うことが当然と考える人達も少なくない。
もちろん、それで本人が満足であれば外野が口を挟むことではないが、極力メンテナンスフリーで快適なら、それに越したことはないのも事実だ。スーパーカーブームの主役を張ったフェラーリの512BBiで、そんな夢のような仕様を作り上げた“オフィストミタク”。これも立派なチューニングだ。
カタログスペック340ps&46.0kgmをうたった512BBiの5.0L・V12(F110A型)エンジン。BB=ベルリネッタ・ボクサーと呼ばれるが、エンジン形式は水平対向ではなく180度V型だ。エンジン本体はノーマルで、後述する主に耐久性や信頼性向上のための手直しが施される。燃料供給装置には排ガス規制対策のためボッシュKジェトロニックが採用されるが、オーナーの富松氏はウェーバー40IF3Cを用意。キャブレター化を予定している。
オフィストミタクが施したメイキングにおける最大の見どころがバルブ駆動系。純正タイミングベルトは幅が狭く、歯の低さから高回転域で歯飛びも発生しやすい。また、メーカー推奨の交換サイクルが1万km毎とされ、作業にはエンジン脱着が伴うなど非常に煩わしく、工賃も100万円単位でかかる。
そんな数々の問題を解消すべく、富松氏はカムスプロケットを製作。歯が高く幅広な国産タイミングベルトを使うことで信頼性や耐久性を大幅に高めているのだ。
カムスプロケットの歯はトミタク製の方が明らかに高く、歯数も純正20に対して24と細かい。また、バーニアタイプとされ、バルタイ調整も可能となる。タイミングベルトの幅は純正20mm、国産25mmで差は歴然。この2つをセットしたものがキット化されていて、クラシックフェラーリでのタイミングベルト10万km無交換を実現する。
クランクシャフトからギヤを介して減速されるタイミングベルトスプロケット。その軸受け部に国産ベアリングを使うことで耐久性を高める。
写真はシフトロッドの付け根部。純正はOリングのみでオイル漏れしやすく、それを防ぐためオイルシールが入るように加工されている。
また、純正では熱を持って燃えてしまうというラジエター電動ファンと燃料ポンプのヒューズを国産の平板タイプに交換。さらに消費電力を抑えるため、ブレーキランプのLED化なども行なわれている。
「リヤハブベアリングは純正が1個12万円もするんよ。それが国産品なら数千円で済む。あとはクラッチにレリーズベアリングの自動調整機構が付いとるんだけど、バネが強すぎるんでそれを弱めたりもしとるよ」と富松氏は言う。
シチュエーションを問わず、常に好調をキープする。富松氏が手掛けたそんな跳ね馬フェラーリにこそ、“無事是名馬”ということわざが相応しい。
●取材協力:オフィストミタク