「市販車なのにココまでやるの!?」生まれながらの弾丸小僧、ミラTR-XXアヴァンツァートX4という名作

ミラ2代目X4の目的は打倒アルトワークスだった!

アヴァンツァートなのにアヴァンツァートじゃない!?

ダイハツの歴史に初めて『X4』が登場したのは今を遡ること20年以上前、世の中がまだバブル景気の残り香にうかれていた1990年末のこと。それがL210S型ミラTR-XX X4だ。ただ、競技ベース車両と言うよりTR-XXの4WDスポーツモデルという意味合いが強く、競技志向を強めたモデルは翌1991年登場のX4-Rとされている。

その後、ベースモデルがL500系に切り替わり、今回ここで取り上げるL512S型ミラTR-XXアヴァンツァート“2代目”X4が1994年にデビュー。

最大のトピックは、エンジンがそれまでの3気筒EF-JL型から4気筒JB-JL型へと変更になったことだ…が、それだけではベースのスポーツモデル、アヴァンツァートR4と同じで何も面白くない。しかし、そこは当時ダート系競技でしのぎを削っていたライバル、アルトワークスを完膚なきまで叩き潰すべく、満を持して2代目X4を世に送り出したダイハツのこと。まず、エンジンの仕様が「市販車なのにココまでやる?」状態なのである。

その内容を見ていくと、アルミ鍛造ピストンに始まり、大容量燃料ポンプや高熱価プラグが採用されるなど、明らかに後々のチューニングを見越したものとなっていた。いや、前期型に限ってはECUセッティングもX4専用だったようで(後期型はアヴァンツァートR4と同じ…らしい)、生まれながらメーカー製チューンドエンジンを載せてたと言う方が正しいかもしれない。

タービンはIHI製RHF3B-VQ30。アヴァンツァートR4のVQ28に対してハイフローとなっていて、低速域の特性が若干劣る代わりに、中高回転でのパワー感やフィーリングが向上している。さらに、クロスミッションの搭載や徹底した軽量化に加え、メーカーオプションで6点式ロールケージも用意されるなどヤル気は満点!

そして臨んだ1995年シーズン、国内のダートラやラリー4WDクラスで大暴れする…はずが、ほぼ同時期に登場したHB21Sアルトワークスから返り討ちに遭い、1勝も挙げることなくまさかの完敗を喫することに…。悲しき存在である。

細部をチェックしていく。まず外装では競技ベースらしく、バン用のそっけないデザインのバンパーを前後に装着。アヴァンツァート標準のエアロバンパーもオプション設定されていたが、個人的にはヤル気なさそうなバン顔にインテークダクト付きボンネットというこの組み合わせには興奮を覚えてしまう。

ボディ同色でなく黒いサイドミラーとドアノブも、この手のモデルでは定番アイテム。白いボディと見事なコントラストを織りなし、視覚的な引き締め効果もある気がする。

トランスファー部に設けられた4WD&2WD(FF)切り替え装置。真ん中のノブを押し込むと4WD、引き出すと2WDになる。こんなモノが装備されている事実を初めて知ったが、何のために?という理由までは不明だ。

ホイールはボルクレーシングのTE37を装備。PCDは110だ。これに155/65-13サイズのスニーカーが組み合わされる。

一方の内装は、潤沢な資金をつぎ込めたバブル期の設計だからか、しっかりとデザインされたことが分かるダッシュボード周り。軽自動車の中では質感やクオリティが高いのもダイハツ車のポイントと言える。操作性の向上を狙ってステアリングホイールとブレーキ&クラッチペダルは交換されている。

楕円形のスピード&タコメーターの他、右下に水温計、左下に燃料計を配置。8500rpm以上がレッドゾーンとなるタコメーターから高回転志向のエンジンということが分かる。

ちなみに、専用ECUが採用されるX4前期型はレブリミットが1万500rpmという噂も。また、取材車両にはオプション設定のマニュアルエアコンも装備されていた。

一方の内装だが、フロントシートは見るからにホールド性が良さそうなモノフォルムバケットタイプでアヴァンツァートと共通。

リヤシートもアヴァンツァートに準じた仕様。クッションの厚みがたっぷりだ。後席は背もたれが少し短めだが、大人2人がちゃんと座れるだけのスペースが確保されている。また、オプション設定の6点式ロールケージも装着。

ドアトリムは味気ないビニール製で、手巻き式ウインドウレギュレーターに取って付けたようなドアハンドルとスピーカーが非常に簡素なイメージ。競技ベースらしさを改めて感じさせてくれるポイントだ。

軽く試乗したところ、4000rpmからパワーが炸裂するエンジンと、その特性を引き出すクロスミッションのコンビには興奮させられた。クロスミッションは街乗りでも頻繁なシフトチェンジを要求してくるが、高めのエンジン回転数をキープするため、常に臨戦態勢で構えているようなもの。アクセル踏んだ瞬間、どの速度域からでも猛烈ダッシュを披露してくれるから楽しすぎる!

実戦では決して成功したとは言えないが、そんなことは関係無い。ミラTR-XXアヴァンツァートX4は、レア度&完成度の高さと刺激的な走りが高次元でバランスした国産屈指の1台なのだから。

■SPECIFICATION
車両型式:L512S
全長×全幅×全高:3295×1395×1455mm
ホイールベース:2300mm
トレッド(F/R):1225/1205mm
車両重量:690kg
エンジン型式:JB-JL
エンジン形式:直4DOHCターボ
ボア×ストローク:φ61.0×56.4mm
排気量:659cc 圧縮比:8.7:1
最高出力:64ps/7500rpm
最大トルク:10.2kgm/4000rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(F/R):ストラット/5リンクリジッド
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤサイズ(FR):155/65-13

1 / 15

「「市販車なのにココまでやるの!?」生まれながらの弾丸小僧、ミラTR-XXアヴァンツァートX4という名作」の1枚めの画像

2 / 15

「「市販車なのにココまでやるの!?」生まれながらの弾丸小僧、ミラTR-XXアヴァンツァートX4という名作」の2枚めの画像

3 / 15

「「市販車なのにココまでやるの!?」生まれながらの弾丸小僧、ミラTR-XXアヴァンツァートX4という名作」の3枚めの画像

4 / 15

「「市販車なのにココまでやるの!?」生まれながらの弾丸小僧、ミラTR-XXアヴァンツァートX4という名作」の4枚めの画像

5 / 15

「「市販車なのにココまでやるの!?」生まれながらの弾丸小僧、ミラTR-XXアヴァンツァートX4という名作」の5枚めの画像

6 / 15

「「市販車なのにココまでやるの!?」生まれながらの弾丸小僧、ミラTR-XXアヴァンツァートX4という名作」の6枚めの画像

7 / 15

「「市販車なのにココまでやるの!?」生まれながらの弾丸小僧、ミラTR-XXアヴァンツァートX4という名作」の7枚めの画像

8 / 15

「「市販車なのにココまでやるの!?」生まれながらの弾丸小僧、ミラTR-XXアヴァンツァートX4という名作」の8枚めの画像

9 / 15

「「市販車なのにココまでやるの!?」生まれながらの弾丸小僧、ミラTR-XXアヴァンツァートX4という名作」の9枚めの画像

10 / 15

「「市販車なのにココまでやるの!?」生まれながらの弾丸小僧、ミラTR-XXアヴァンツァートX4という名作」の10枚めの画像

11 / 15

「「市販車なのにココまでやるの!?」生まれながらの弾丸小僧、ミラTR-XXアヴァンツァートX4という名作」の11枚めの画像

12 / 15

「「市販車なのにココまでやるの!?」生まれながらの弾丸小僧、ミラTR-XXアヴァンツァートX4という名作」の12枚めの画像

13 / 15

「「市販車なのにココまでやるの!?」生まれながらの弾丸小僧、ミラTR-XXアヴァンツァートX4という名作」の13枚めの画像

14 / 15

「「市販車なのにココまでやるの!?」生まれながらの弾丸小僧、ミラTR-XXアヴァンツァートX4という名作」の14枚めの画像

15 / 15

「「市販車なのにココまでやるの!?」生まれながらの弾丸小僧、ミラTR-XXアヴァンツァートX4という名作」の15枚めの画像

TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
●取材協力:LEE Factory 埼玉県児玉郡上里町七本木35 TEL:0495-35-0122

「10系ソアラの隠れキャラ、VRターボを捕獲!」M-TEU型エンジン搭載の激少ターボモデルに乗った!!

「ウイングターボって何だったの!?」レジェンドV6Ti はホンダのチャレンジ精神そのものだ!

「ストレッチしても5ナンバー枠に収まった全長」バブルが生み出した摩訶不思議な1台!コロナスーパールーミー

キーワードで検索する

著者プロフィール

weboption 近影

weboption