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フル公認も取得済みの超ハイレベルメイキングに迫る
若さと友情が生み出した二度見必至の3S-GEスワップ!
あまりOPTIONで取り上げられることのないトヨタ・ハイラックス。ラダーフレームをベースとする中型ピックアップトラックで、トラック大国のアメリカでは「トラッキン」と呼ばれるカスタムのベースとして人気のモデルでもある。
茨城県土浦市で車検・整備業を営む千葉祐彦さんが所有する1995年式ハイラックスは、年代的には80(ハチマル)と呼ばれるモデル。もとは2.0Lのガソリンエンジンを積む2WD(FR駆動)のスーパーデラックスというグレードだが、その面影はもはやどこにも見られない。
千葉さんは20代前半の頃からずっと同じハイラックスをいじり続けており、いわく現在の姿は「第3形態」にして「多分、最終形態(笑)」だそうだ。第1形態ではチャネリングと呼ばれるテクニックを使い、パワートレインやフレームと干渉するフロアおよび前後ファイヤーウォールをカットして、究極のローダウンを実現していた。
それをもう一度ノーマルボディに戻してから、次なる第2形態への進化が始まったのだが、その発想がまたぶっ飛んでいた。
「知人から調子の良いMR2を譲ってもらったので、そのエンジンをハイラックスのリヤに換装したら面白そうだなと思ったんです。エンジンを載せて、車高も下げることをイメージしながら手を動かしてたら、いつの間にこうなってたって感じですね(笑)」。
ラダーフレームは本来文字通り“真っ直ぐに伸びたハシゴ”のような形をしているのだが、千葉さんはまずその後半を大胆にカットし、SW20型MR2の3S-GE型直列4気筒エンジンと5速MTをマウントするためのパイプフレームを溶接。荷台のフロア(ベッド)は完全にくり抜き、各種補機類やエアサスのタンクなどとともに新たな動力源をリヤミッドシップに搭載した。
なお、エンジンはフレームに溶接して組んだパイプフレームとMR2のメンバーでマウント。リヤのサスペンションとハブもMR2から移植し、ドライブシャフトもそのまま流用された。シフターもMR2のもので、リンケージをハイラックスに合わせて延長されている。
一方のフロントにはアルミ製の燃料タンクをマウントするため、これまたフレームの前半を切ってパイプフレームを追加。その結果、ラダーフレームはまるでモノコックボディのようにキャビンの部分だけが大きく下に落ち込んだような形状へと変化した。
ボディを切って車高を下げるのではなく、フレームを切って車高を下げるという奇想天外なアイディアを具現化してハイラックスは第2形態へとトランスフォームしたのである。
そして最近、カリフォルニア州ロングビーチにある老舗メーカー『スナッグトップ』のトラックキャップ(荷台を覆うシェル)に手動開閉式のキャンバストップを追加して装着。千葉さんの中でひとつの完成形と言える第3形態へと昇華した。本業が車検屋さんだけにしっかりと公認も取得し、ショーやツーリングにも堂々と自走で参加している。
ホイールはオフロード車やSUV向けブランドとして知られるレースラインの特注品。カスタムサイズをオーダーできるビレットホイールで、エンジンスワップした現車にベストと判断した前後8.5J×18+45で製作した。
フロントサスペンションとホイールハブはハイラックスのままだが、80ハイラックスはたまたまトラックとしては珍しくMR2と同じ5H-114.3のPCDを採用している。そして、もちろんトラッキンの王道であるエアサスもインストール。ワンオフフレームを生かした究極のローダウンを実現する。
インパネはFRPでワンオフ製作。ステアリングはビレットスペシャリティ製で、シートはハイラックス純正レカロの表皮を自らツイード素材で張り替えた。縫製作業には千葉さんのお母さんや近所のおばさんも当時手伝ってくれたとのこと。
メーターとコラムレバーはMR2から流用し、ECUもMR2純正を使用。「今思えば大変な作業をよくやったなと思いますけど、若い頃はヒマで他にやることもなかったんで、ただただ思ったまま素直に作ってましたね(笑)」とのこと。
マイナーチェンジや日米の仕様違い、2WDか4WDかでも形状が微妙に異なるハイラックスのフロントバンパーとグリル。千葉さんは「あえて人気のない組み合わせで違いを出したかった」ということで北米仕様の4WD車用を使い、メッキ化して装着。フロントフェンダーはトラック用よりもふっくらしたフレアが備わるSUVのハイラックスサーフ用を流用している。
千葉さんのハイラックスは、その独創性と完成度の高さからトラッキンやホットロッドの界隈で大きな話題となってきた存在だが、本人は「作ることに意義がある」という姿勢を崩さない。
このハイラックスは高校の同級生である長谷川宰臣さんと一緒に作業してきたのだが、その長谷川さんは今では同じ茨城県の小美玉市で『OMI AUTO』を経営。現在もハイラックスの共同ビルダーとしての仲が続いている。「トラックが好き」という共通の想いで繋がり、お互いに切磋琢磨しながら今もクルマ作りを楽しんでいるのだ。
PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI