目次
バブルが崩壊した、まさにその時代。クルマを取り巻く新技術は、バブル期の開発なので、その勢いはまだまだ慣性で動き続けていた。そんな平成初期、1990年代に誕生した“日本初”や“世界初”といった新技術やアイテムなど、エポックメイキングなシステムや装備を見ていこう。
トヨタ
VVT(1991年)
VVT(Variable Valve Timing)とは可変バルブタイミングシステムの略。エンジンの負荷に応じ、吸気側のバルブタイミングを30度(対クランク角)可変させることができる。これによって低回転域でのトルク特性やエミッションコントロールを確保し、高回転域でのパワー向上などの両立が達成された。初搭載されたのは、カローラレビン/スプリンタートレノ(AE101)だ。
VVT-i(1995年)
VVT-iは、可変バルブタイミングインテリジェントシステムの略。機械的な二段階制御だったVVTに対し、VVT-iはコンピュータ制御による連続可変システムを採用(初搭載はクラウンの2JZ-GEエンジン)。当初は油圧ピストンとヘリカルスプライン駆動だったが、1996年登場の3S-FSEエンジンでは世界初となる油圧ベーン方式を採用。現在では自動車用内燃機関の世界標準となっている。
GOAボディ(1996年)
GOAとは(Global Outstanding Assessment)の略。トヨタの衝突安全ボディで、1996年登場のスターレット(EP91)に実装されたのが始まりだ。以降、トヨタの大多数のクルマに採用された。その内容は、当初は「オフセット前面衝突」だったが、翌年に「むち打ち低減」、2001年には「歩行者保護」、2012年には「ポップアップフード」といった具合に進化。同年4月から、「TNGAプラットフォーム」へとバトンタッチされた。
V型12気筒エンジン(1997年)
国内の市販車として、史上初にして唯一となった、5.0L・V型12気筒の「1GZ-FE」エンジンがセンチュリーに搭載された。要人御用達のショーファードリブン車と言うこともあり、片バンクの6気筒がトラブルを起こしても、残りの片バンクで走行が可能。ブレーキ関係なども2系統化されるなど、航空機を思わせるようなバックアップが取られている。惜しむらく時代の波に飲まれ、2018年に製廃となった。
ハイブリッド車(1997年)
乗用車で世界初となるハイブリッド車が「プリウス」だ。現在では一般化している、ガソリンエンジン+電気モーターという組み合わせで、超低燃費を実現するシステムの立役者。同クラスガソリン車の約2倍も走れるその機構は、自動車業界においてトヨタが世界のリーディングカンパニーであること顕示。プリウスは5代目となった今もなお進化を続けている。
DUAL VVT-i(1998年)
従来の吸気側のVVT-iに加え、排気側のバルブタイミング制御まで行なって、さらなる吸排気効率を高めたシステム。1998年10月、アルテッツァRS200に搭載された3S-GEエンジンに組み込まれ、その後はクラウン(GRS18系)やマークX(GRX12系)等の、上位クラスの車種にも搭載。さらに、数年後にはカローラ(E140/150)やヴィッツなどの小型車用のエンジンにも採用された秀逸なシステムだった。
VVTL-i(1999年)
VVT-iによる吸気カムの可変バルタイに加え、吸排気バルブの作用角とリフト量を、カムの切り替えによって変化させる。これによって高回転時にはハイカムと同等働きを生み出す。1999年に登場した、セリカ(ZZT231)の2ZZ-GEエンジンに初めて搭載。カム位相の連続変化と、可変リフトを組み合わせたシステムは世界初となる。
日産
アクティブノイズコントロール(1991年)
キャビン内の騒音やエンジンのこもり音などを、設置したマイクで集音。その音と逆位相の音を専用のスピーカーから発生させることで音を打ち消し、軽減させる機構。今で言う“ノイズキャンセリング”などと呼ばれるシステムだ。初搭載は、1991年に登場した9代目ブルーバード(U13)のトップグレードモデルに採用。長距離移動でも快適な車内空間を提供してくれた。
プル式クラッチ(1993年)
スカイラインGT-R(BNR32)のクラッチは、前期型ではプッシュ式(押して切るクラッチ)だったが、93年の後期型からはプル式(引っ張って切るクラッチ)に変更された。プル式は、ダイヤフラムスプリングの支点が外側にあって、力点(レリーズベアリング)との間が作用点となるため、テコの原理によってクラッチ踏力が軽減されるというシステムだ。
低扁平率タイヤ(1994年)
1994年(平成6年)まで、新車装着タイヤは50偏平までしか認可されていなかった。同年2月には“50偏平まで”という謎の規制は解除され、マイナーチェンジを受けたスカイラインGT-R Vspec.II(BNR32)では、45偏平である「245/45ZR17」サイズのブリヂストンタイヤが装着された。
HIDヘッドランプ(1994年)
今や多くのクルマで標準装備となっている「HID」のヘッドランプ。当時は“キセノン”や“ディスチャージ”などとも呼ばれ、それまでのハロゲンランプを遥か凌駕する明るい光に感動した。市販車に装着される前、1992年や1993年には、「ル・マン24時間耐久レース」に参戦するCカー等に装着され、まさに闇夜を切り裂く爆光で、400km/h走行での視界を確保。初搭載が「テラノ」というのは意外だった。
Part.2へ続く