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ウィリアムズF1を筆頭にレジェンドマシンが木山街道を爆走!
2024年11月17日、岡山県真庭市の特設会場にて行われた「MHヒルクライム/真庭速祭」。往年のレジェンドマシンから、リアルチューニングカーまで多彩なマシンが公道を駆け抜け、幸運にもチケットを購入できた2000人もの来場者が熱狂。そんなイベントにて、ウェブオプション的に気になったマシン・展示をピックアップしてお届けする。
クスコスバルインプレッサ JGTC GT300
往年の全日本GT選手権を駆け抜けたクスコスバルインプレッサ。真庭速祭に合わせて、2ヶ月という短期間で走行可能な状態へとリフレッシュが施された。
「当時のドライバーだった小林且雄選手が、Facebookに“当時のレーシングスーツを久々に着てみました”と画像をアップしてて。だったらクルマも走れる状態にして、イベントで走らせようという話になったんですよ!」とはキャロッセの長瀬社長。
車体はエンジンレスの状態で屋内に長期保管されていたそうで、今回はGC8のノーマルエンジンを当時と同じ位置に搭載。タービンがエンジンとミッションの間に来る特殊なレイアウトだが、これは前後重量配分を考慮した結果とのこと。ミッションはサデフのシーケンシャルドグミッションをドッキングしている。
室内は、ブリッドXEROと新品レーシングハーネスを投入して安全性を確保。制御系はフルコンLINKとモーテックのPDM30を用いた現代的なマネージメントシステムへとアップデートされているが、操作パネルはあえて当時のスイッチ類を活かしてメイキングしているのもポイントだ。
「今のレースカーと違って、チューニングカーの延長線という雰囲気ですね。スパルタンな感じだけど、乗ると当時の感覚を思い出してとても懐かしかったです」とは20年以上の時を経て、再びこのマシンをドライブした小林且雄選手。
なお、キャロッセではスーパーGT選手権を戦ったインプレッサ(鷹目GDB)も保有しており、来年はこちらを復活させて走らせる計画が進んでいるとのこと。当時を知るGTファンは、その動向に注目だ。
HKS 300E
屋内展示ゾーンに置かれていたのは、F1の規定に合わせた幻の国産V12エンジン「HKS 300E」。この300Eは、プロジェクト開始から約1年半で完成し、1991年6月25日エンジンに火が入った。翌1992年1月の東京オートサロンで発表。F3000マシンのローラT91/50改に搭載され、富士スピードウェイを舞台に報道陣を集めてのテスト走行が実施されたのは同年12月7日のこと。
参考までにベストタイムは1分20秒9。F3000のコースレコードに対して約5秒落ちだったが、F1の規定に合致したエンジンを作り上げ、シェイクダウンまでこぎつけたことは、HKSの高い技術力と開発に携わったエンジニア達の熱い思いの結晶に他ならない。
MADLANE 935ML
岡山県に拠点を構える“マッドレーン”が持ち込んだのは、ポルシェ964をベースに往年の935をイメージした935ML。隣に置かれていた964と比較すれば、その作り込みの過激さが分かるだろう。当時と同じタイヤサイズを履き、自然なスタイリングとすべく、パイプフレーム化を軸としたビルドを敢行。リヤカウルは本物の935のパーツを合わせている。
エンジンはベースの3.6L改3.8L仕様で、KKK製K27タービンをツインで装着。997RSRのシーケンシャルミッションで、これを上下反転させてドライブシャフト位置をズラすことで、エンジン搭載位置を極限まで下げている。
インテリアはポルシェ911 GT1をイメージしてセンターコンソールに各種操作パネルを設置。ミッションは、エアアクチュエーターを用いたパドルシフト仕様とされており、センターのノブはスタビライザーの調整用だ。
今後はフューエルテックを用いたECUセッティングを煮詰めてトラクションコントロールを実装予定で、全開で踏める800psポルシェに仕上げられる予定だ。
Jing BNR32 Group A spec
名門“ジーイング”が持ち込んだのは、グループAスタイルを強く意識したBNR32ユーザーカー。エンジンはジーイングが展開しているオリジナルの2.8L仕様で、ジーイングオリジナルタービンを合わせてモーテック制御で660psを発生させる。
見た目にもグループAを強く意識させるのは、グループA車両に限りなく近いタイヤ外径と足回りのセットアップにある。18インチ履きの場合は35扁平タイヤを合わせるのが定番だが、フェンダーやバンパーの加工、キャンバー調整により275/40−18という超大径タイヤをスマートに履きこなす。
ワイズナーオートモーティブNSX
作り込みの自然さから、マニアックな来場者のみが感嘆の声をあげていたワイズナーオートモーティブのNSX。純正のV6エンジンを捨て去り、何とFK8に搭載されていたK20Cエンジンをスワップしているのだ。
「当初、NSXは直4搭載車として開発されていたんですが、北米での売り上げを意識するアキュラの“V6エンジン搭載の方がプレミアムなイメージが付く”という意見で路線変更。それでV6エンジン搭載車として発売されたという経緯があるんです」とはワイズナーオートモーティブの安成さん。
スワップにあたってFK8のドナー車を一台購入。そこからエンジンやミッションを移植し、ドライブシャフトをはじめとした各種パーツを新規製作している。
エンジンスワップにより重量は80kg軽減。さらにサイベックス独自のブーストアッププログラムにより約450psを発生させる。
「ノーマルのNSXって本当に遅いんですよ。これで見た目に恥じない十分な速さになりましたし、2000ccになったので税金も安くなりました(笑)」とのこと。従来のNSXチューンとは一線を画すハイレベルな作り込みだ。
レジェンドマシンが峠を爆走
この『真庭速祭』最大の見どころは、やはり走行コンテンツ。タイムスケジュールに沿って定期的にパドックからコースへと飛び出していくマシンに、来場者たちは熱い視線を向けていた。
かつてのF1でナイジェル・マンセルがドライブしたFW12の実車もコースを疾走。ステアリングを握ったのは谷口信輝選手で、「当初は僕が乗る予定じゃなかったけど、オーナーのご厚意で運転させてもらったんだ。壊すわけにはいかないので、全開走行とはいかないけど、本当に貴重な経験ができたよ。本当にスパルタンなマシンだったね」とその印象を語った。
走行コンテンツの模様は、当日行われた配信のアーカイブがモーターヘッド公式Youtubeチャンネル上にて公開されているので、是非ともご覧いただきたい。