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24歳オーナーの情熱を三好自動車がバックアップ
伝説の「タケヤリFC」が完全レプリカで復活!
FC3Sオーナーの間では、伝説のレジェンドカーとして今なお高い人気を誇る通称『タケヤリFC』。正式名は「RE雨宮 風林火山号 μ FC3S」で、レーシングドライバーの故・山路慎一選手がロータリー界の重鎮「RE雨宮」がタッグを組み、筑波サーキット最速を目指したプロジェクトカーだ。
最終的には58秒890を達成し、東京オートサロン2002のチューニングカー部門でグランプリを獲得するなど話題を独占した。その頃、チューニング界におけるロータリー車の主流はすでにFD3Sへと移行していたが、タケヤリFC号の快進撃はFC3S健在を全国に知らしめ、多くのオーナーの留飲を下げたのだった。
その衝撃的なマシンの登場から早20年以上が経過。当時を知るのは40代以上のクルマ好きがほとんどと思われていたが、今回撮影したレプリカ仕様のオーナーは何と24歳。タケヤリFC号が現役でサーキットを駆け抜けていた時、彼はまだ1歳だった。
「クルマ好きの親父(R32オーナー)と兄貴(AE86オーナー)の影響で、スポーツカー好きになる環境は整っていたと思います。FCを購入したのは5年前。ロータリーエンジン特有のサウンド、レプシロエンジンと異なるビジュアル、何よりシンプルかつクリーンなスタイリングがドストライクでしたね」とオーナーは語る。
FC3S購入から5年間はほぼノーマルで楽しんでいたというが、カスタムへの情熱が年々高まり、「どうせやるなら憧れのタケヤリFCにしたい」と決意。地元である岡山のロータリーショップを検索したところ、トップに挙がったのが“三好自動車”だった。
とはいえ、前述の通り、タケヤリFCが現役だったのは20年以上前。パーツ供給の問題もあり、再現するのは難しいのではないか、と思っていた。ところが、三好自動車からは「まんま再現できますよ」と予想外の返事。「できるのだったらぜひお願いします!」とその場で作業を依頼したそうだ。
そして、完成したのがこのFC3Sだ。まだ出来上がったばかりで、細部の仕上げはこれからという状態だが、そのビジュアルは360度どこから見てもタケヤリFCそのもの。目の肥えたファンも納得する出来栄えだろう。
再現を可能としたのは、RE雨宮に当時のエアロキット(フルカウルプロ)/スリークライト/GT-2スポイラー、パンスピードのフロントフェンダーなど多くのパーツが現存していたことに尽きる。特徴的なエアロボンネットは残念ながら欠品していたものの、フラットボンネットをベースにTRD製のダクトを加工流用し、ワンオフで製作。ダクトの取り付け位置を計測した上で装着するという拘りよう。
テールゲートについても、実車はアクリル製だが手に入らなかったため、ペイントで近しい質感を再現。AD OVERのドアミラーも見つからなかったので、クラフトスクエア製で代替している。
ブレーキも数多くの写真をもとに、フロントがエンドレスのローターにブレンボキャリパー、リアがプロμローターと純正キャリパーであることを確認。オーナーがサーキットを走らないので、本物と同じものに交換するのではなく、スリット加工&ペイントでそれ風に仕立てることでコストを低減した。
ホイールはNT03-SBCの後継モデルであるNT03RRを装着。タイヤはストリートでの使い勝手を考えて、SタイヤのADVAN A048Mではなく、NEOVA AD09をチョイスしている。こうした三好自動車の涙ぐましい努力と創意工夫により完成度の高いレプリカに仕上がったというわけだ。
エンジンは、気持ち良さと適度なパワーを求めたブーストアップ仕様。本体は新品をベースにオーバーホールを実施するが、ポート加工などは行わず、バリ取りや精度組みに留めている。
インタークーラーはトラスト製の前置きタイプを装着し、排気系はRE雨宮(タコ足/マフラー)とSARD(キャタライザー)の組み合わせ。出力は約250psと本物の466psには遠く及ばないが、ストリートでは性能に不満はない。ORC製のライトクラッチとOS技研のスーパーロックLSDがそのパワーを確実に路面へと伝え、トラクション性能も引き上げている。
インテリアは走行6万kmということもあり、軽く掃除しただけで抜群のコンディションを保っている。これはオーナーの愛情が伝わる部分だろう。
モディファイは当時のイメージを損なわず、デフィのスポーツディスプレイFの追加など現代風なエッセンスを加えた。シートは同じブリッド製だが、タケヤリFCのシェイクダウンを土屋圭市氏が担当したことから、ジータ4 KINGモデルを左右にインストールしている。ステアリングにはRE雨宮の雨さんのサイン入っており、これは三好さんからオーナーへのささやかなプレゼントだという。
エアレックスのエアサスを装着した(ブッシュ類、アーム関係はフル交換)関係で、リアシート位置にはエアサスのユニットがマウントされるが、リアサストップ部のオーディオユニットブラケットを切断するなど、忠実な再現を目指して手が加えられている。さらに、ロールケージやアルミ製のフロアパネルの装着が予定されており、このプロジェクトは未だ現在進行中だ。
「三好さんを信用しているので、三好さんからの作業提案に対して、首を横に振ることは一度もありませんでした。正直かなりの費用は掛かりましたが、その仕上がりに大満足です。今後は多くのイベントに参加して、タケヤリFCを知っている人だけでなく、知らない若い層とも交流を深め、このクルマがどう評価されるのか、確かめたいです」とオーナーは夢を膨らませる。
ちなみに、三好さんが送った写真を見た雨さんから「早く東京に持ってこい!」と声が掛かったらしく、近い将来、雨さんと並ぶタケヤリFCの姿が見られるかもしれない。
●取材協力:三好自動車 岡山県倉敷市下庄947-6 TEL:086-462-0708