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レッドブル×リバティウォークの破壊力!
新たな伝説を作るスーパーシルエットなセブン
昭和時代の街道レーサーをモチーフとした暴走族スタイルをハイエンドカーにベースに製作するエアロパーツメーカー「リバティウォーク」。
日本の改造文化の代名詞というべきビス止めオーバーフェンダーの「LB-WORKS」シリーズが本流だが、最近は1970年代後半から1980年代のモータースポーツで一世を風靡したGr.5(シルエット・フォーミュラ)をモチーフとし、ビスを極限まで隠し、伸びやかで迫力のあるフォルムを描く「LBシルエット・ワークスGT」および「LBスーパーシルエット・ワークスGT」シリーズの人気が高まっている。
これまでにシリーズとして9タイプが送り出されているが、そのなかで傑作と評されるのが、2023年の東京オートサロンでお披露目されたFD3S・RX-7用「LBスーパーシルエットGT」だ。
スラントなロングノーズとバンパー内に埋め込まれた大型フォグランプ、そして、スリークなワイドボディに、後端まで延ばされ、絞り込まれたロングテールは、耐久レースの王者として君臨した「モビー・ディック」ことポルシェ935/78がモチーフであるのは明らか。ベースのRX-7に対して、全幅は最大140mm拡大され、全長に至っては約1mも延長される。その迫力は察して知るべしだろう。
ただし、後方に大きく張り出し、下面の空気を効率よく排出するアンダーディフューザーやウィングの形状に今風のディテールを取り入れられており、単なるオマージュで終わらないのがリバティウォークらしいところ。この出来栄えなら約250万円というボディキット価格も納得だ。
この長く伸びやかでマッシブなスタイリングを生み出すボディキットを日本国内でもっとも多く販売/装着しているのが、岡山県にあるロータリーショップの“三好自動車”。カスタマイズフリークから信頼が置かれる同店にはすでに4台のマシンを完成させており、さらに1台がまもなく追加される。計5台となるモビー・ディック仕様の中から、今回はレッドブル仕様の1台をピックアップした。
オーナーは三好自動車とは30年来の付き合い。最初同社が運営するレーシングカートチームに所属。子供が大きくなったことをきっかけにカートは引退し、その後、FD3Sでサーキット走行を楽しむようになった。最初は外観よりも中身に手を入れた純然たるサーキット仕様だったという。
モビー・ディック仕様へのカスタムアップを開始したのは約2年前。きっかけはオーナー自身ではなく、奥様からの提案だったそうだ。
「家内はリバティウォークとマッド・マイク(マイク・ウィデット)が大好きで、カスタムするならリバティウォークのエアロとマッド・マイクのカラーリングがいいとリクエストされました。彼女はわたしよりもモータースポーツが好きで、マッド・マイク日本で無名だったころから注目していましたから、反対されるどころかむしろ後押ししてくれたんです」。
10数年、走行会でしゃかりきに数字を追いかけていたオーナーだが、年齢的なこともあり、「タイムアタックは卒業しようか」と考える時期であったこともカスタマイズを決断するひとつの理由であった。ただ、サーキット走行を止めるのではなく、好きなスタイルで楽しむ方向にシフトしたのだ。
「サスペンションはエアサスですが、エアレックス社に依頼してサーキットを安心して走れるようにオイルダンパーを固めに変更しています。ただし、車重はかなり重くなっているので、タイムは出ません。あくまでも趣味として走ることを満喫している。そんな感じですね」。
迫力あるボディキットを覆うカラーリングのベースとなったのはマッド・マイクの愛車である「MADBUL」。2023年夏に現在のF1チャンピオン“マックス・フェルスタッペン”が走らせて話題になったFD3Sのドリフトマシンだ。そのデザインをリバティウォークのフォルムに合わせてアレンジを加えて仕上げられた。ちなみに運転席側のCピラーにあるサインはマッド・マイクの直筆だ。
ボディキットはフル装着しているが、リトラクタブルヘッドライトをRE雨宮製のスリークライトに変更することでRX-7らしさを強調している。
ホイールはVOLK RACINGの21Aをチョイス。最新の解析技術を駆使して誕生したメッシュデザインが温故知新なエアロキットにマッチしている。
リヤのコンビランプはカスタムLEDファクトリーのワンオフ品で、好みのデザインにオーダー可能だ。マフラーはメーカー不明のチタン製で、テールエンドをGPP製のマフラーカッターを装着。大口径のドルフィンデザインとヒートグラデーションカラーがリヤのアピアランスを引き立てている。
エンジンは各部の精度を高めたオーバーホールを実施し、これにトラストのTD06-25Gタービンを組み合わせる。パワーは400ps強だが、パワーFCでマネージメントされたエンジン特性は扱いやすく、ホームグラウンドである岡山国際との相性は抜群だそうだ。
ブレーキは前後オートエグゼの2ピースローターに交換し、IDIのサーキット向けのパッドをインストールした程度だが、軽量なボディのFDにはこの組み合わせで十分な制動力を担保する。
室内はブラックを基調とし、レッドとブルーのアクセントを加えた配色。サーキット走行での安全性も考慮し、クスコのクロモリ7点式ロールケージを装着する。シートはリバティウォーク・オリジナルのセミバケットタイプで統一され、ダッシュボードはカーボン製のカバーを組み込んだ。コンソールやドアトリムなどの一部は落ち着きあるマッドブルーでラッピングされ、レーシーなイメージの中に欧州車に通ずる大人の雰囲気を盛り込んだ。
ちなみに、マッド・マイクのNRG製ステアリングは本物ではなく、ラッピングで仕上げたレプリカ。やるなら、オーナーの思いにトコトン応えるのが三好自動車流。全方位隙のないフィニュシュには脱帽である。
「このクルマを愛してやまなかった妻は、残念ながら8月に他界しました。全て彼女の好みに作り上げたので、このセブンは形見であり、私にとって添い遂げるべき存在なのです」。
見た目も中身も特別なRX-7。妻の想いを乗せてこれからも走り続けていく。
●取材協力:三好自動車 岡山県倉敷市下庄947-6 TEL:086-462-0708