「圧倒的不人気を誇った80年代の迷車を確保!?」カペラ5ドアハッチバック1.6SG-Uをガチで試してみた

フォードテルスターTX5のマツダ版がコイツだ!

日本では不発に終わった激レアモデル5ドアハッチバックモデルの魔力

フランスの大物俳優をイメージキャラクターとして起用し、カタログの表紙にも登場させたことから、通称“アラン・ドロン”カペラと呼ばれた4代目GC系。

歴代初のFFモデルとして1982年9月に登場し、当初は4ドアセダンと2ドアクーペで展開した。その開発や生産が行われたのはマツダ(当時は東洋工業)が新設した山口の防府工場。カペラのためにラインを組み、トランスミッション工場まで作ったというのだから、マツダの気合の入り方も分かるというもの。

そんなGC系カペラに5ドアハッチバックが追加ラインナップされたのは1985年5月のこと。すでにテルスターには存在していたモデルに、マツダのエンブレムを付けて発売したわけだ。

搭載エンジンは“マグナム”と呼ばれる新開発の直4SOHCで、ガソリンは2.0LターボのFE型(EGI仕様145ps)、1.8LのF8型(EGI仕様100ps/キャブ仕様95ps)、1.6LのF6型(キャブ仕様90ps)の3種類。また、2.0LディーゼルのRF型(分配式燃料噴射ポンプ仕様72ps)も用意された。

取材車両は、F6型を載せる1.6SG-Uの5速MT車。カタログで確認したところ、1.6Lにはこのグレードしか存在しない。そもそも5ドアハッチバックという時点で相当レアなのに、まさか最廉価モデルに遭遇してしまうとは…。

最廉価グレードだけあってインパネ周りもシンプル。衝撃的だったのは、メーターパネルの中心に燃料計が配置されていたことだ。

タコメーターが付かないクルマの場合、普通はスピードメーターを中心として左右に燃料計と水温計を振り分けるのが一般的。しかし、このクルマはスピードメーターが左端に追いやられ、燃料計と水温計が無駄にスペースを使って並べられているという、なんとも贅沢な作り。

センターコンソールは上からエアコン吹き出し口、マニュアル式エアコン操作パネル、シガーライター&灰皿、標準装着されるAMラジオチューナー(1スピーカー!)が並ぶ。

シートはスポーティ、ラグジュアリー、ノーマルと3種類が用意されたが、最廉価グレードだけに装着されるのはノーマル。シートカバーは純正アクセサリーで、背もたれ中央に“CAPELLA”のロゴが入る。

後席の背もたれは50:50の分割可倒式。ちなみに、セダンでは60:40分割になる。また、セダンでは前席背もたれを倒してのフルフラット化が可能だが、5ドアハッチバックではそれができないのが不思議。

5名乗車でパーセルボードを装着した状態と、2名乗車でパーセルボードを外した状態の比較。ラゲッジスペースは奥行き、幅、深さともに十分で高い積載容量を誇る。唯一、残念なのはリヤゲートがバンパー直上から開かないこと。重い荷物の積み下ろしがやりにくいのだ。

外装における一番のポイント、リヤ周りの造形を見て極度の興奮を覚えずにはいられない。なだらかな傾斜角でルーフ後端からリヤエンドへと落ち込むライン、細めのC&Dピラー間に配されたクォーターウインドウ…、3ボックス車にはない独特なデザインがマニア好きの心をかき乱してくれる。

カペラに限らず、コロナもスプリンターもブルーバードもプリメーラもコンチェルトもギャランスポーツも、かつて国産メーカーが発売した5ドアハッチバックモデルは販売面で軒並み惨敗を喫したし、今でも国内市場では5ドアハッチバックに対する抵抗感があるように思える。セダン並みの快適性で、実用性はそれ以上だから、選択肢としては悪くないと思うのは自分だけだろうか。

見た目にカッコ良くないのが不人気の元凶ということは明白だが、令和の時代に昭和生まれの5ドアハッチバック車に乗っていたら、少なくともマニア車好きから称賛されることは間違いない。

■SPECIFICATIONS
車両型式:GC6P
全長×全幅×全高:4430×1690×1350mm
ホイールベース:2510mm
トレッド(F/R):1440/1425mm
車両重量:1000kg
エンジン型式:F6
エンジン形式:直4SOHC
ボア×ストローク:φ81.0×77.0mm
排気量:1587cc 圧縮比:8.6:1
最高出力:90ps/5700rpm
最大トルク:13.0kgm/3500rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ:FR165SR13

●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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