「風洞設備をガレージに導入できる時代が来た!?」最小クラスの実車風洞システムが登場【東京オートサロン2022】

専門メーカー2社がタッグを組んで開発設計

ドナーはスモーキー永田のプライベート号!

幕張メッセ北ホールの一角で、怪しげな実験装置を広げている集団を発見!…ではなく、こちらはガレージに収まるレベルのコンパクト風洞試験システムを持ち込んだ『ニシヤマ/大和製衝/日本風洞製作所』ブースでの風景。

一般的な風洞設備は大規模かつ高価だ。そこで、もっと気軽に使えるシステムを求めて2016年にプロジェクトをスタート。その後、様々な苦難を乗り越えながら6年の月日を費やして完成させたのが、今回の展示物というわけだ。

まず『Areo Optim』と呼ばれる送風ユニットから。本格的な施設だと奥行きは40mに達するそうだが、この製品の奥行きはわずか1.5mのコンパクト設計を実現。

常に均一な気流を送り続ける必要がある送風ユニットの小型化には大変な技術力が必要のようで、このファンの内側は軍用ジェットエンジンのテクノロジーを採用しているという。

また、大規模な風洞試験システムは風速50m/s(180km/h)といった高速で使うことが多いが、今作は小スペースでの使用を想定しているため、最大風速は15.3m/s(55km/h)に設定。それでも、十分にエアロパーツによる空力の変化を測定できる精度が備わっているというから恐れ入る。

なお、屋内で使用するにあたって気になるクルマを通過した後の気流については、例えばガレージなら後ろのシャッターを開けてそのまま通気するようにすれば、影響はほとんどないそうだ。

次に車両を置く天秤(足場)。風洞試験において送風ユニットと並ぶ重要なパートだが、こちらも厚みを一般的なサイズの10分の1まで減らすことに成功。

この『SLIM BALANCE』と名付けられたコンパクト天秤は、大手自動車メーカーで使われている風洞試験システム用天秤のシェアをほぼ独占する大和製衝が、開発・設計を担当。それぞれの専門メーカーが手を組むことで、これだけ小さな風洞試験システムが完成したというわけだ。

また、天秤のタイヤ4輪が接地する受感部に、偏心スライド調整機構を搭載しているのもポイント。これにより、慣れたスタッフなら約15分もあればサイズの異なるクルマを入れ替えして測定することができるそうだ。

もちろん、小型なだけでなく風洞試験システムとしての実力も本物。抗力・揚力・応力、ヨー・ロールの6分力を測定可能だ。

ちなみに、ブースで風洞試験システムに華を添えていた展示車両は、トップシークレットのスモーキー永田がプライベートで乗り回しているR35GT-Rだったりする。

実のところ、日本風洞製作所代表のローン・ジョシュアさんは、愛車(R35GT-R)のチューニングをトップシークレットに任せている根っからのスモーキーファンなのである。

「永田さんには、この風洞試験システムのプロジェクトを立ち上げる前から話をしていて、『もし実現したら協力するよ』と言ってもらっていたんです。本当に感謝ですね」とはジョシュアさん。

オートサロン会場に持ち込めるくらいの可搬性があるのだから、環境さえ整えれば、サーキットに持ち込んでタイムアタック車両を対象にした“突撃! 隣のエアロダイナミクス”などという独自企画も可能か…。ともあれ、今はただ現実的かつ超コンパクトな実車風洞システムを生み出したメーカーに、心から敬服したい。

●取材協力:ニシヤマ/大和製衡/日本風洞製作所

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