「FD3Sで前代未聞の最高速322キロを達成!」その速さの秘密に迫る

200マイルオーバーを達成した伝説のFD3S

キモは8000rpmオーバーまでキッチリ追従するパワー特性にあり

速度計測は小野ビットを使用。小野ビットの計測紙は319.9km/hまでしか印字されないが、小野ビットから出力される速度メーターのほうではキッチリ322km/hを表示していた。

そのトルク特性から、レシプロエンジンに比べ最高速では不利と考えられてきたロータリー。しかし、サーキット仕様のFD3Sにわずかな仕様変更を加えたのみで、いとも簡単に322キロ(OPTION誌の最高速テスト)を叩き出したのは愛知県の実力派チューニングショップ“REウイング”だ。

最高出力は540psと、今となっては決して驚くほどの数値ではないにも関わらず、200マイルオーバーを可能にした13B-REWエンジンは、サイドポート拡大加工のみというからさらに驚きだ。

ちなみに、REウイングのサイドポート加工はプライマリー/セカンダリー/エキゾーストの全てを削っているが、そのサジ加減は使用タービンとのマッチングを考えて設定。この辺りはドラッグで培われたノウハウが注ぎ込まれる。ローターは圧縮8.5の低圧縮タイプ、アペックスシールは純正3分割だ。

タービンはサーキットシーンを想定してT78-33D(17cm2)シングルをチョイス。最大ブースト圧は1.4キロの設定だ。

エキゾースト環境は、フロントパイプ以降を90φのセンターパイプ&マフラーで統一。これらはREウイングオリジナルのフルチタンモデルだ。いたずらにストレート形状にするのではなく、適度なアールを設けることでトルクを確保している。

「パワーだけならペリやブリッジの方が確かに有利やけど、耐久性が極端に落ちてしまう。耐久性やバランスの良さを考えると、サイドポート加工が良いかな。削り方は、タービンのエキゾーストハウジング容量に合わせて拡大するのがウチの考え。極端に広げたりはせんよ。つまり、タービンサイズとポートをバランスさせてやるってことやね。その辺は、ドラッグの考え方に近いかもしれん。ちなみに、アタック時のタービンはT78-33Dの17cmやったけど、あれはたまたま店に在庫があったからで、とくに最高速を狙って装着したわけじゃないよ」と、驚きの事実を淡々と語るREウイングの竹尾代表。

そんなFD3Sだが、最高速専用のチューニングポイントもいくつかある。まず駆動系だ。絶版のトラスト製6速ドグミッション(6速ギヤ比=0.780)に3.9ファイナルを合わせて、ハイギアード化を敢行したのだ。これより、6速8000rpmで300キロオーバーする算段がついた。後はいかにエンジンを6速で8000rpm以上回せるかに、照準が絞られることとなる。

「強いて言うならECUのデータやな。最高速向けにアレンジしたんよ。同じ回転数でもギアによってエンジン負荷は変わってくる。そこで6速8000rpmをピークにもっていくセッティングにした。あとは低速からトルクが立ち上がって、それをいかに高回転まで持続させるかというのも大事やね。正直、ドラッグでは常時1万rpm近く回しとるから、8000rpm程度ならまだまだという感じなんやけどね。計測時には恐くてアクセルを踏み切れんかったし、もっと記録を伸ばす自身はあるよ」。

ちなみに、このFD3Sの制御はパワーFCとF-CON Vプロの2基掛けとしている。パワーFCは純正ECU並みの補正&制御項目を持っているためその利点を活かし、さらに重要な点火時期や燃調に関しては、マップエリアが広く演算能力の高いVプロを使うのだ。

一方の足回りは、鈴鹿サーキット仕様として開発したクラックス製の特注車高調を軸に構築。スプリングレートはフロント16kg/mmのリヤ18kg/mmで、これはサーキット仕様のままだ。ただし直進性を高めるべく車高の25mmダウンに、アライメントの変更を実施。

アタック時のリヤタイヤは265/35-18サイズのアドバンA050で、こちらもサーキット仕様のまま。フロントのみ外径を小さくして車高を出来るだけ落とし、フェンダーとの干渉を避けるために235/40-17サイズのアドバンネオバを装着した。

最後に。ロータリーが最高速に向かないという負のイメージに対する竹尾代表の回答はこうだ。

「よく聞く話やけど、僕はそんな事は無いと思うよ。上までパワーが追従するようセッティングが出来ていれば出せるはず。昔はセッティングのツールがしょぼかったから難しかったのかも知れんけどね。今はそんなことない。実際にウチのが出せたんやもん」。

●取材協力:REウイング 三重県三重郡川越町高松86-1 TEL:059-364-1225

【関連リンク】
REウイング
https://www.re-wing.co.jp/

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