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エンジンもボディワークもセッティングも全てDIY!
独自のヘッドチューンにT51Rkai-BBを組み合わせて700馬力を発揮
グラマラスなワイドボディが目を引くJZA80スープラ。このチューンドの凄さは、ずばり“製作過程”にある。クルマとは無縁の仕事をしている若きプライベーターが、仕事の合間を縫ってコツコツと作業を続け、丸4年を費やして完成させた公認取得済みの純血ストリートスペックなのである。
「このスープラを買ったのは20歳の頃。今から7年前ですね。当時はS15シルビアと迷っていて、シルビアもスープラも在庫している中古車販売店を覗きに行った時に、このクルマと出会って。一目惚れでした。その場で購入を決めました」。
オーナーのハートを射抜いたスープラは、SZグレード(NAエンジン搭載)に2JZ-GTEとゲトラグ6速MTを換装した個体だった。今では考えられないが、長期在庫車で購入価格は200万円未満だったそうだ。
購入後、しばらくはそのままの状態でチューニングカーライフを満喫していたが、ある日エンジンブローに見舞われてしまう。
通常ならそのままチューニングショップに直行するのだが、機械工作が趣味というオーナーは違った。
プライベーター魂に火がつき、自宅でエンジンを降ろして全バラ。腰下のオーバーホールを行いつつ、ヘッドは自らの手で動弁系パーツの軽量化やポート加工などを実施。同時にHKSのハイカムといったチューニングパーツも組み込んでいった。
ちなみに、これらのエンジンチューンは誰かに教えてもらったわけではなく独学。「各部の加工は専門書を見ながらやりました」とアッサリ話すオーナーだが、完全にチューナーレベルだ。
こうして組み上げられたエンジンは、補機パーツにも徹底的な拘りを見せる。インテーク周りは、定番のインフィニティ90φスロットルとトラストの大容量サージタンクをセット。冷却系チューンも抜かりはなく、トラストのコアを使ったワンオフインタークーラーやコーヨーのアルミ3層ラジエターで武装する。
エンジンマネージメントにはF-CON Vプロを使っているが、これもネットで手に入れた書き換えツールを使用してオーナーが自らセッティングを敢行。しかも一人での実走セッティングは厳しいため、「彼女が助手席でPCの操作を担当してます(笑)」とのこと。
組み合わせるタービンは、過給音がたまらないとオーナーが絶賛するHKSのT51RKai BB。このビッグシングルに、最大ブースト1.5キロをかけて700psオーバーを絞り出している。200マイルの大台を余裕でクリアできるスペックだ。
ちなみに、エンジンを下ろした際にはエクステリアパーツも全て外し、ボディのリフレッシュまで行ったそう。これらの作業ももちろん全てDIYだ。
足回りはHKSのハイパーマックスドラッグを装備。オーナーが製作した、超超ジュラルミン削り出しのキャリパーサポートを用いて装着されているキャリパーはAPレーシングのcp5555。ダストシールを備えないなど割り切った構造を持つレーシングキャリパーだ。
ホイールはガイアレーシングのMMXIII(F18×9.5J+12 R18×10.5J+15)。タイヤは以前から興味があったというナンカンNS-2Rで「トレッドウェア80なんですが、このパワーでもホイールスピンしづらくなりました」とオーナー。
室内に張り巡らされたロールケージは、サイトウロールケージから販売されているクロモリ鋼パイプを購入し、フル溶接で製作。ちなみにこのロールケージレイアウトは、スープラのレーシングカーを参考にしたそうだ。
コクピットにはトラストの油圧、油温、水温、ブースト、燃圧計やHKSのAF計が並ぶ。ブーストコントローラーはトラストのプロフェック。ABSは撤去され、その際にブレーキラインに加工を施して自作のラインロックを設置。その作動スイッチをセンターコンソールに装備する。
オーナーのプライベーター魂は、エクステリアにも及ぶ。中古で投げ売りされていた社外フェンダーをベースに、FRPや発泡ウレタンを使って、自らが理想とする形状のワイドボディを作り上げたのだ。
リヤバンパーはアブフラッグ製をベースに下回りを大胆にカット。さらにトップシークレットのカーボンGTウイングを組み合わせ、レーシングカーさながらのスパルタンなスタイリングを構築する。
「今はJZA80スープラの価格が高騰していますよね。周りにはJZA80を手放して、それを元手にGRスープラに乗り替えた方もいらっしゃいますが、自分はまだこのクルマに拘っていきたいです。次はエンジンの3.1L化を計画していますよ」とはオーナー。
尽きぬJZA80スープラへの想い。ともあれ、かつての全盛期の感動、感激を思い起こさせてくれるようなメイキングの数々は見事としか言いようがない。
PHOTO:堤 晋一