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目標は黎明期D1界のブレイク伊藤スタイル!
ドリ車全盛期の雰囲気を全身から放つ高い完成度
この真紅の180SXは東北地方にルーツに持つ、90年代後半から00年代前半にかけてドリフトシーンで多くのフォロワーを生んだ、いわゆる『東北仕様』を再現した1台。オーナーは二十歳(取材時)という若さながら、自分が生まれるよりも前のスタイルを意識したマシンメイクを行っているのだ。
「物心が付いた時からドリ車が好きで。中でもD1GPが『プロドリ』って言われてた時期のスタイルに憧れていました。それで福島に住んでることもあって東北仕様のドリ車に乗りたいと考え、昔の雑誌とかを集めて目指したのが伊藤さんの180SXだったんです」。
彼の話す伊藤さんとは、東北を代表するレジェンドドリフターだ。“Break”というチームを率いて各地のドリフトコンテストで戦果を挙げ、後に黎明期のD1GPドライバーとして大活躍する真紅のシャコタン180SX乗り、通称“ブレイク伊藤”こと伊藤昭紀選手である。
定義は人それぞれだが、東北仕様のスタイルを一言で表すなら「純ベタスタイルでシンプルにまとめたシルビア系のドリ車」。その中でもとくに有名なブレイク伊藤180SXの特徴だったのが、赤ボディのドシャコタン、追加ダクト付きの後期バンパーに半目固定のリトラライト、ボンネットは大型ダクト付きで純正サンルーフ仕様、そしてホイールはゴールドカラーといったところだ。
そんな往年のスタイルを目標にしつつ、限られた予算内でコツコツと進化させ続けているオーナーの愛車を細かくチェックしていく。
フロント、サイド、リヤバンパーは全て後期純正仕様で、フロントバンパーにはBCNR33用ニスモダクトを追加。ちなみに、当時は前期・中期と比べて不人気だった後期仕様をカッコ良く仕上げた点でも、ブレイク伊藤は流行の最先端を走っていたのだ。
いわゆる半目で固定するリトラクタブルヘッドライトの開き具合にも少しずつ地域によって流行の差があり、オーナーが目指しているのは拘りの指3本仕様(当時は開き具合を指の本数で表現することが多かったのだ)。しかも半目固定キットは当時モノのピボット製を使用し、配線加工で半目状態でもライトを点灯できるように加工を施していた。
ブレイク伊藤180SXに装着されていたボンネットはレーシングサービスMAX製だったそうだが、現在は手に入らないので同系統デザインのコグチパワー製で再現。
「本当は伊藤さんと同じボルクレーシングのTE37が欲しいんですが予算が…。そこで、当時モノだけど安くてちょうど良いサイズだったシュテッヒメッシュを手に入れました」とオーナー。サイズは17インチ9Jプラス11の前後通しだ。
中古を探して苦労して手に入れたというマフラーは、今は希少品として中古に出ることも稀なエクセレントワークスのフルデュアル砲弾タイプ。
ウイングはもちろん180SX後期純正。車体購入時はウイングレスだったので後付けだそうだが「マウント位置をもう少し後方にして、ツラを出せば良かったなぁって思ってます」とのこと。
エクステリア優先でカスタムを進めているため、インテリアのドレスアップはまだ途中段階。ナルディのステアリングは2018年限定のブルーステッチモデル。一方、絶版品のトラストSMI4連メーターはすでに購入済みで、これからインストール予定とのことだ。
フロントシートはブリッドのブリックスを2脚セットで導入、リヤシートが綺麗に残っているところも重要なポイントだ。
トラストのシフトノブ本体は旧ロゴのGREX仕様だったが、残念ながらトップシールは剥がれて現存せず。そのため、いずれ復刻版に交換するつもり。
エンジンは黒ヘッドの後期SR20DETだ。タービンはブローを機に定番のS14純正にチェンジして容量アップ。エビスサーキットに通っていたそうだが、最近はこの車体でドリフトするのがもったいなく感じつつもあるそうだ。
今後は、購入済みのガナドールミラーの取り付けやエンジンルームのドレスアップ、純正サンルーフの移植など、より本格的な東北仕様を目指していきたいと強く語るオーナー。完成した暁には、ブレイク伊藤選手によるドリフト試乗企画などいかがでしょうか!?
TEXT&PHOTO:長谷川実路