目次
3.2LV8ツインターボのポテンシャルを引き出す!
最高出力はノーマル比プラス70psの420馬力
1990年代後半、マセラティがフェラーリ傘下に入って初めて市販化したモデルにして、ターボエンジンを搭載する最後のモデルが3200GT。後継のマセラティクーペはNAのフェラーリ製V8を載せることから「ターボエンジンの3200GTじゃなきゃ駄目!!」というコアなファンがいて、取材車両のオーナーもそんな一人だ。
3200GTを手に入れてから1年に数回、富士スピードウェイに足を運んでたオーナーは、走り込むほどタイムを求めるようになってきてブーストアップを決意。ショップを探してたところ、自宅の近くにECUチューンを得意とする“ダンディ(※)”があることを知って、チューニングをお願いすることになったのだ。
「初めはえらいクルマが来ちゃったなぁと思ったけど、実際イジってみるとそんなことはなくて、国産車と変わらなかったよ。ちょっと拍子抜けした感じ!?」と田中代表。
ボンネットの下に収まるのは、赤いカムカバーが覗く3.2LV8DOHCツインターボエンジン。本体はノーマルで、エアクリーナーのみムキ出しタイプに交換される。「マセラティはよく壊れる…なんてイメージがあるかもしれませんが、突然止まってしまうようなことはありませんよ。とくに、フェラーリの傘下に入ってからのモデルは」とオーナー。
助手席の足元にセットされたeマネージ。専用ハーネスの設定は当然ないため、メインハーネスに配線を割り込ませて燃調をコントロールしている。
ブーストアップにはEVCを使用。最大ブースト圧はノーマルの0.5キロから1.2キロまで大幅に引き上げることで、パワーは350psから420ps(いずれもダイノパック係数ゼロ)へと70psもの向上を実現しているのだ。それに合わせて駆動系にはATFクーラーが追加される。
もちろん、排気系の効率アップも図られる。「音質を変えることなく排気の抜けをよくしたい」というオーナーのリクエストに応えて第1触媒レスのフロントパイプをワンオフ製作。センターパイプ以降はノーマルが組み合わされている。
また、サスペンションは前後ダブルウィッシュボーン式で、アーム類はアルミ製。純正でビルシュタイン車高調が備わるが、スプリングレートの高いアセットコルサ用スプリング(とスタビライザー)に合わせてエナペタルで減衰力特性をリセッティング。同時に、減衰力自動調整機構もキャンセルされている。
もちろんブレーキも強化。ブースターの容量アップを図った上で、フロントブレーキにはブレンボF50キャリパーと2ピースローターが組まれる。ホイールは外装における唯一の変更点で、NEEZの鍛造マグネシウム製を装着。街乗りではフロント235/40R18、リヤ265/35R18サイズのポテンザRE-01Rが組み合わされる。これでサーキットをさらに速く、楽しく走れるようになる。
オーナーいわく「街乗りではスポーツラジアルですけど、サーキットに行く時はSタイヤに履き替えていきますよ!」とのことだから、のめり込みようも分かるというものだ。
その一方で、3200GTはそもそもラグジュアリークーペ。それは、インテリアの色使いやデザインを見れば一目瞭然だ。にもかかわらず、ステアリングコラム左側にHKS EVC、右側に水温、油温、ブースト圧、ATF温度を管理するブリッツレーシングモニターDCを装着するなど、チューニングカーの雰囲気を漂わせる。ミッションは4速ATでノーマルとスポーツ、2つのモードを持つ。
そのスタイリングからは想像しにくいが、居住空間は2+2でなくフル4シーターと言える。シートはホールド性よりも快適性を重視したもので、「サーキット走行を考えて、運転席だけはフルバケに交換したいと思ってます」とのこと。
トランクパネルからボディラインに沿ってデザインされたコンビネーションランプが特徴的なリヤビュー。市販車として初めてテールランプにLEDを採用したことでも話題になった。
ラグジュアリーな4シータークーペだけに、街を流したり、あるいは高速道路をカッ飛んだりするGTカー的な印象が強いマセラティ3200GTだが、オーナーが望むなら、サーキット走行をターゲットにしたチューニングだって当然あり。いずれにしても、「その意外性が楽しすぎる!!」と思わせてくれる1台だ。 (※ダンディは現在閉店しています。)