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速くてカッコ良いシルビアを徹底追及!
10秒切りに迫る本気のドラッグスペシャルでありながら、『美観』も徹底追求したS13シルビアの登場だ。オーナーとガレージパディーが二人三脚で育て上げた超大作、細部を見ていこう。(OPTION誌2004年9月号)
圧倒的なパワースペックと見た目を両立したGT2835Rツインターボ仕様
ドラッグ仕様、サーキット仕様など、特定のステージに特化したマシンは速さを求めるあまり、魅せるためのチューニングは後回しというケースが多い。しかし、ガレージパディーが手がけたPS13は一味違う。細部に至るまで、隙のない作り込みが施されているのだ。
エンジン本体はボア87φ、ストローク92mmというJUNのキットで2188ccまで拡大。ヘッド周りも280度11.5mmリフトの強烈なハイカムの投入を軸に細部まで手が加えられ、フルチューンとされたSR20。エンジン回転を高めてピークパワーを稼ぐビッグシングル仕様とは違うため、レブリミットはドラッグ仕様としては低めの7800rpm。
BCNR33改インタークーラーからのパイピングは90φで作られ、そのままインフィニティ用90φスロットルにドッキング。大流量かつ安定した吸気をシリンダーに送り込むため、サージタンクはJUNのものに交換されている。
タービンはT67、T78を経てGT2835Rツインへと仕様変更。当初はGT2835を組む予定だったそうだが、「インデュース径の大きい”R”の方が迫力もあるでしょ!」とのことで現在の仕様に。ローブースト1.6キロで630ps、MAX2.2キロをかけて800psオーバーに達する。
EXマニ含めてエキゾースト系は全てワンオフ。中でも見どころと言えるのが、タービン後から完全に2分割されたフルチタンマフラー(メイン70φ→80φ×2)だ。
リヤビューをすっきりさせるため、ナンバープレートの裏側に90φのツインテールエンドを持ってきたレイアウトが独創的。排気効率を落とさないようナンバープレートは可倒式になっている。
ウエストゲート用マフラーは、サイドステップから顔を出すオーバル&ハス切りパイプの本気仕様。ウエストゲート大気開放でも、見た目に拘ったからこその作り込みと言っていい。とにかくインパクトは十分だ。
インタークーラーとラジエターの冷却性能を最大限に発揮させるため、アールズ13段オイルクーラーはシャシー下面に水平マウント。JZA80純正ラジエターの補助ファンを組み合わせているのがポイントだ。
燃料タンクはATLの45L。コレクタータンクはKSPエンジニアリング製で、HKSのGT-R用燃料ポンプを2基セットしている。インジェクターは1気筒あたりメイン1000ccに追加360ccが組み合わされてる。
ミッションはパワーを有効に伝えるだけでなく、ブローのリスクも大幅に抑えることができるHKSの6速ドグミッションを搭載。クラッチには、フライホイールを大幅に軽量化したOS技研の特注トリプルプレートが組まれる。
足回りは、オーリンズ車高調ベースのスペシャル減衰仕様を軸に構築。これに前後4kg/mmのバネレートを持つスウィフトID65スプリングを組み合わせる。また、ロアアームとテンションロッドはイケヤフォーミュラの調整式へ変更して、アライメントの調整範囲を拡大。ブッシュはピロに打ち変えられている。
一方のリヤサスは大改造。リジッドマウントされたBCNR33用のリヤサスペンション一式を移植しているのである。形状こそS13と同じマルチリンクだが、設計年次の違いからジオメトリーが大幅に適正化されている上に、剛性も大きく向上されているなど、ドラッグ仕様い移植することで得られる恩恵は大きいのだ。
インテリアは、赤いBRIDEジータIIプロフェッショナルにシルバーのシンプソン4点式ハーネスをコーディネイト。ロールケージはオクヤマ製のアルミ12点式とし、ピラーと溶接留めとすることで剛性を確保。その他、パネルボンドやスポット溶接増しなどでボディは徹底強化されている。
ロールケージから伸びるステーの先、ドライバーの正面の位置にシフトタイミングライトを装備。ルーフ前端にはラインロック、電動ファン、イグニッション用のトグルスイッチとプッシュ式スターターボタンが整然と並ぶ。
オーナーが追加メーターを好まないということで、必要な情報はスタックST8100とネコAF640で表示するというシンプルな構成。まさにコクピットと呼ぶに相応しい内容だ。
電気系は元々リヤシートがあった位置に集約。バッテリーはセンタートンネル上のアルミボックス内に、ヒューズボックスは運転席後ろのリヤフェンダー内側に移設されている。その下の黒いボックスは、万が一大電流が流れた際に備えたブレーカー。普段はカットオフスイッチとして使用されている。
リヤオーバーハングの左右それぞれに調整式のウエイトをセット。1枚1kgのサイズでカットされたスチール板の枚数を変えることで、路面状況に応じたキメ細やかなセッティングが出来るというパーツだ。
シャンパンゴールドに塗装されている理由は錆止めとのことだが、「見えない所も拘りたい」というオーナーの意向の現れでもある。
リヤフェンダーは、315/35-17サイズのニットーNT555Rを収めるためにノーマルから50mm拡大されたワンオフ仕様。かなりのワイド幅ではあるが、全く違和感の無い仕上がりだ。
エアロパーツはT&Eのヴェルテックス。ボンネットはJUNのものを装備している。マフラーがナンバープレートの位置に移されているため、元々あったマフラー出口部分の切り欠きはスムージングされている。
単なるハイパワー仕様ではなく、トラクションをかけるための駆動系セッティングやボディメイキングなど見どころが尽きないS13シルビア。まさに生粋のリアルチューンドだ。