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よりにもよって全車、不人気色グリニッシュシルバーという奇跡!!
セドリック4ドアセダン V30ターボブロアムVIP
特別塗装色のグリニッシュシルバーメタリックツートーンをまとったセダンの最上級グレード、それが王者の風格漂うV30ターボブロアムVIPだ。
「ドアを開けた時のセドリックの匂いがたまりません!!」と、かなり変態なコメントを放ってくれたオーナーのWさんは、37万km走ったSY31が事故で廃車になったのを機に乗り替えた。
エンジンは195ps/30.0kgmを誇るY31シリーズ最強のVG30ETを搭載。低回転域から湧き上がるようなトルク特性が魅力だ。ブロアムVIPには電子制御エアサスペンション(Cタイプ除く)や4輪アンチスキッドブレーキ4WASが標準装備される。
Cタイプを除くブロアムVIPでは電磁干渉を受けない光通信ステアリングスイッチを採用。中央の非回転型パッド部にラジオのボリュームやバンド切り替えスイッチが、ステアリングスポーク部にクルーズコントロールのスイッチが備わる。
運転席と助手席はもちろん、後席も左右別々に調整できるパワーシートを装備。レースのシートカバーはクラシックSV用だ。また、ブロアム系の前席セパレートシート車には世界初の前後独立調整式フルオートITエアコンが標準装備。
後席センターアームレスト内蔵の操作スイッチ。グレードによって項目が異なるけど、ブロアムVIPではラジオの電源/音量/選局/バンド切り替え、後席エアコンの温度/吹き出し口、ピュアトロン(空気清浄器)の強弱を調整できる。
今回は唯一のセダンだったが、ハードトップと並べて気付いたことがある。それはセダンの方が一回り大きく見えることだ。実際、ハードトップに対して全高が20mmほど高いのだが、理由はそれだけではない。プレスドアやリヤクォーターに設けられたオペラウインドウ、傾斜角がきついリヤウインドウなど視覚的な違いが実寸以上の差を感じさせているように思う。
ホイールはY31シーマ用を装着。トランクリッドに立つNTT製自動車電話用アンテナや、リヤウインドウのレースカーテンは当時のアイテムだ。ステンレス製のドアバイザーはディーラーオプション品。また、日産純正品を使った自作コーナーポールを装着したりとカスタマイズされている。
「角張ったスタイルとセダンならではのオペラウインドウが大好きなんです。シングルカムのVG30ターボは低速域のトルク感が最高っ!」というWさんの目標は、令和の時代が終わるまでこのPAY31に乗り続けることだ。
セドリック 4ドアハードトップ V20ツインカムターボグランツーリスモSV
続いてのY31前期型は、ハードトップV20ツインカムターボグランツーリスモSV。ボンネットの下にVG20DETを収めたスポーティグレード、グランツーリスモの上級モデルだ。
素のグラツーに対して運転席パワーシートやオートライトシステム、フルオートエアコン(素のグラツーではなんとディーラーオプション)などを標準装備する。後期型は世界初のトルコン式5速AT搭載が大きな話題になったが、前期型は4速ATのため、少し陰に隠れてしまった感がたまらなく良いと思う!
「もう一目惚れでしたね。スタイルが美しく“これしかない!”と思って購入したんですよ」とオーナーのYさん。新車で手に入れて32年間も乗り続けているのだから、どれだけY31に惚れ込んでいるか分かるというものだ。
前期型に載るVG20DETはインタークーラーレス仕様で185ps。後期型ではインタークーラー追加で210psまで向上した。また、サージタンク左側にはNICS(電子制御可変吸気コントロールシステム)のアクチュエーターが確認できる。
3本スポークタイプでグリップ部が本革巻きとなるグランツーリスモ系のステアリングホイール。中央の丸いホーンボタンにはグレード名のロゴも入る。サイドブレーキは足踏み式で、ATセレクターレバー後方のノブ操作によって解除する。
ミッションは4速AT。1~2速のギヤ比がVG20DET専用となっていて、VG30E/ET/VG20Eよりも低められている。さらに、ファイナル比もVG30系の3.700に対して4.375とローギヤード化。加速重視のセッティングが施される。
ホイールは力強い5本スポークとバフフィニッシュが特徴のワークグッカーズ・ヘミ15インチ。そこにBFグッドリッチラジアルT/Aを組み合わせる。サイズは前205/60、後225/60で、タイヤ外径の違いによって前傾姿勢を生み出している。
常にトランクに積んでいるという燃料ポンプのスペアと、その取り付けに必要なOリング。「コレがトラブったら動けなくなっちゃいますからね。後はオルタネーターも持ち歩いた方が良いかもしれません」とYさん。備えあれば憂いなしだ。
同時に70年代のアメリカンマッスルカーが好きなYさんは外観をソレっぽくメイキング。とはいえ、基本ノーマルでホイール&タイヤを交換したのみ。にも関わらずアメリカンな雰囲気が漂い、しかもそれが不思議と似合ってしまうのだから面白い。
ツートーンでなく単色のグリニッシュシルバーメタリック(カラートリム628)は受注生産色。また、グランツーリスモ系のVG20DET搭載車には、エンジン回転数に応じて排気経路を切り替える世界初のデュアルモードマフラーが採用された。
Y31のイジリ方というとVIP系カスタム(か、ごく一部の過激なパワー系チューン)しか思い浮かばなかったが、実車を前にしてこの方向性はアリだと強く思った。
セドリック4ドアハードトップV30EブロアムVIP
3台目は、VG30E搭載のハードトップV30EブロアムVIPだ。ボディ色は前出のセダンV30ターボブロアムVIPと同じグリニッシュシルバーメタリックツートーンになる。
V20系がボディサイズを5ナンバー枠に収めてるのに対して、V30系は前後バンパー大型化で全長を伸ばし(4690→4860mm)、サイドモールを厚くして全幅も拡大(1695→1720mm)。3ナンバー化を実現している。
Y30時代に対して最大トルクを高める一方、その発生回転数を低下させたことで実用域の扱いやすさが向上したVG30E。重厚かつ濃密なその回転フィールは、ブロアム系に最も相応しいエンジンのような気がする。
インパネ周りのデザインや装備はセダンV30ターボブロアムVIPと共通。ステアリング越しのセンターコンソールにはエアサスペンションの操作スイッチが確認できる。モードは標準車高のノーマルとスポーティ、車高を高めるハイの3つ。
水平ゼロ指針のスピードメーターとタコメーターが並び、その右側に水温計、左側に燃料計が配置される。また、経年劣化によって発生しがちなのがメーターの基盤割れ。車速信号が出なくなるため、各部に不具合をきたすことになる。
ハードトップはセンターピラーレスで、ゴムモールの劣化による雨漏りを避けては通れない。簡単に交換できそうなパーツだが、「フロントサイドウインドウとの絶妙なチリ合わせが必要なので、素人が手を出しちゃ駄目なんです」とオーナーのTさん。
V30ブロアム系でもハードトップのみに装着されるのが、ボディ側面のボトム部を覆う大型サイドガードモール。メルセデスベンツで言うところのサッコプレートと同じだ。サイドモールと合わせて全幅を1720mmまで拡大する。
「免許を取って初めて乗ったクルマがY31ハードトップで、また乗りたくなったんです」というTさんは数年前に再び購入。フロントリップ&リヤスポイラーを装着してエアサスコントローラーで車高を落とし、低く構えたフォルムを生み出している。
リヤスポイラーはY31シーマ純正オプション品を流用。違和感のないフィッティングを見せる。ホイールは純正15インチアルミで、センターキャップ中央が飛び出しているのが前期型の証。後期型では突起がなくなって平たいタイプになる。
また、発売から30年以上が経っているだけに数々のマイナートラブルも経験。厄介だったのがメーターの基盤割れで、「実速に関係なくスピードメーターが振り切った状態になるんです。また、スピードメーターから車速信号を出してるので車速感知ドアロックが作動しなくなることも…」とか。それでも乗り続けるのは『Y31愛』に溢れているからに他ならない。
TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)