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開発責任者は黄色にしたくなかったという事実
1000度を超えても変色しない唯一の色だった!?
2020年仕様のGT-R NISMOに初採用されて以来、特別モデルに与えられ続けているイエローカラーのブレーキシステム。
このキャリパーは、従来モデルをベースにしたカラー変更仕様などではなく、市販車最大級のカーボンセラミックローター(ローター径:フロント410mm/リヤ:390mm)の採用に合わせてピストン配置やブリッジ形状を最適化したスペシャルだ。
なお、このブレーキシステムは住友ではなく本家のブレンボ製なのだが、このブレーキの開発裏話を、GT-R開発エンジニアにして、現在はアンバサダーという立場で日産自動車を支える田村宏志氏が特別に語ってくれた。
「通常、カーボンブレーキは温度が高くならないと効かないんです。でも、それだとGT-Rのキャラクターには合わない。低温領域から高温まで安定した効きを確保するためにイチから開発したんです。運転するのはプロドライバーではなく一般ユーザーですからね。でも、カーボンブレーキの特性を知っている方が乗ったら驚くと思いますよ。本当に凄まじいですから」と田村氏。
続いて話はキャリパーの色に。
「正直に言いますと、黄色は下品で嫌でした。でも、この色しか駄目だったんですよね(笑) R35GT-Rほどのクルマともなると、スポーツ走行時のブレーキローター温度は1000度を超えます。そうなるとキャリパーの塗装が変色してしまうんです。色や塗料を変えながらテストを繰り返しましたが、この色だけだったんです。変色しなかったのは…」。
少し残念そうに話す田村氏を見ていると、このキャリパーカラーは苦渋の決断であり、開発チーフにとっては望まない結果だったというわけだ。
ともあれ、性能は世界最高峰。カーボンブレーキの常識を打ち破ったというGT-R NISMO&T-SPEC専用のブレーキシステム。是非とも味わってみたいものだ。