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ボディはヤレても心は錦
地球〜月の往復距離に相当する76万kmを目指し稼働中!
閑静な住宅街にある旧家の駐車スペースに何気なく置かれていたのが今回のターゲットだ。それを目の当たりにしての第一印象は「えっ、本当!?」というのが正直なところ。ボンネットやルーフの塗装は剥げ落ち、サイドシルは崩壊寸前…。その姿は放置車両以外の何者でもない。
まさに衝撃的な対面となったターゲットの正体は、ST185セリカGT-FOUR RC。当時はグループA規定だったWRCのホモロゲーションモデルとして、1991年に世界5000台(うち国内1800台)限定でリリースされた。
その活躍はファンにとってはお馴染みのもので、デビューイヤーの1992シーズンにはC.サインツがドライバーズチャンピオンを獲得。1993年にはトヨタ悲願のドライバーズ(J.カンクネン)とメーカーズのダブルタイトルを獲得した歴史に残る名車なのだ。
そんなレアな4WDスポーツマシンのオーナーが戸鹿野さん。約20年前に勤め先の後輩から譲り受けて以来、現在までメインカーとして乗り続けているお気に入り。日々の通勤や買い物、趣味のスキーへの足として年間1万2000kmほどの走行距離を積み重ねていった結果、現在オドメーターに表示されているのは54万4000km。
「今年(2023年)の1月に車検を取ったばかりなのですが、メンテも含めてお世話になっているカーステーションマルシェの石田さんには毎回“これが最後だからな”と言われてます。しかし、まだまだそのつもりはありません。石田さんには“せっかく月まで行ったんだから、今度は地球に帰る(76万km)まで付き合ってくれ”って言ってるんですよ(笑)」。
こうなると好きを超えて執念すら感じる戸鹿野さんのST185へのこだわり。それは一体、どこからくるものなのか?
その理由の一つは、RC発売当時に欲しかったけど、予算の問題で諦めて仕方なくST185ラリーを購入した経験。そしてもう一つが、長年の家電メーカーエンジニアとしての経験を通じて培われた“限定モデル”への強いこだわりだ。
「以前の職場で限定モデルの開発を見てきましたが、量産品には無いエンジニアの思いが限定品には詰め込まれているんです。クルマでもそれは同じ。このRCには至るところに勝利を目指した苦労の跡があって、クルマを通じてエンジニアの顔が見えてくるような気がするんですよ」と戸鹿野さんは説明してくれた。
ではなんでこんな姿なの?というツッコミ、わかります。戸鹿野さんもこの姿が気に入っているわけではない。県内、近県の何軒ものボディショップに補修を打診したが…いざ現物を持ち込むと「勘弁してください」という状態なのだ。
しかし、マルシェと戸鹿野さんの入念なメンテのおかげでエンジンやドライブトレインは絶好調。そこで、目標の地球への帰還に向けて、ハコ替えによるリフレッシュ作戦の準備を進めている最中。ドナーとなるRCボディの目処も立ちそうというから、出先でもれなくの職質から解放される日も近い。
ちなみに、戸鹿野さんは年季の入ったST185だけでなく、シャッター付きガレージ保管のGDBベース“S203”とGRBベース“R205”も所有。「限定モデルが好きなだけで、特定メーカーにこだわりはありません。2台とも金銭的に余裕のあるタイミングで発売されたので購入しました」とのこと。いずれも新車ワンオーナー。機会があればこちらも取材させていただきたい。
REPORT:川崎英俊
●取材協力:カーステーション マルシェ 群馬県前橋市亀里町1224 TEL:0247-265-6789
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カーステーションマルシェ
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