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車両本来の走りを引き出すなら純正デバイス攻略は必須!
システム保護のための安全機構が足かせに!?
“レースで勝つこと”を目的に生み出されたGRヤリス&GRカローラ。1.6Lターボながら、GRヤリスは272ps&37.7kgm、GRカローラでは304ps&37.7kgmを発揮。そのパワーを活かすべく、駆動系にはWRCで培ったノウハウを注入したスポーツ4WDシステム「GR-FOUR」を採用している。
ITCCと呼ばれる電子制御式多板クラッチ(カップリング)を軸にしたこのシステムは、あらゆる路面状下において4輪へのトルク配分を最適化し、驚異的なトラクション性能を実現。手元のスイッチひとつでノーマル(前輪60:後輪40)、スポーツ(前輪30:後輪70)、ターマック(前輪50:後輪50)と、3つのモードに切り替えることも可能だ。
まさに最新、最強の4WDシステムとも言えるGR-FOURだが、市販車はストリートメインのユーザーが大半。モータースポーツに特化したシステムという訳にはいかず、様々なセーフティ機構が設けられている。
例えば、システムが熱を持ちすぎた際にはITCCの締結力が落ちる仕組みとなっており、スポーツ走行や競技シーンではその保護機能がタイムロスの原因に繋がる。また、連続走行中にリヤの駆動力が少なくなり、ほぼFFのような状態に陥ってしまうケースもある。
足回りチューニングのトップランナーとして知られる“クスコ”では、そうしたネガ要素を持つGR-FOURの攻略にサイベックス製のAWDコントローラー(23万5000円)を活用。これは純正の安全マージンを削り、GR-FOURの潜在性能を引き出すためのツールだ。車速やスロットル開度などに応じ、駆動配分の比率を細かくセッティング可能。例えば、競技シーンでは舵角が少ない時にもっとリヤ側の駆動を増やして旋回速度を上げる…といった使い方もできるようになるのだ。
サイベックスのAWDコントローラーには、あらかじめ最適化された制御データがインストールされており、モードごとの結束力を1.2倍、1.3倍と高められるのもポイント。
また、カップリングの締結力を徐々に落とすような制御も行えるため、システムのオーバーヒート対策にも有効。つまり、GR-FOUR制御を支配下に置けるようになるわけだ。
まさに、一歩進んだ駆動チューンと言えそうなクスコ流GR-FOURセッティングだが、あくまでITCCが担うのは前後の駆動配分のみ。駆動力をロスなく路面に伝えるには、やはり機械式LSDが必須であることは忘れてはいけない。
GRヤリス、GRカローラにおけるLSDセッティングの方向性としては、基本的には従来の4WD車に準じる。FF車ベースのため、操舵と駆動を一手に担うフロント側にLSDを入れるのは特に効果的。前輪でグイグイと引っ張っていくような走りが実現する。
フロントは1WAYか1.5WAY、リヤに1.5WAYか2WAYを組み合わせるのがセオリーだ。最近はタイヤのグリップ性能向上も著しいため、デフの効きは弱めにセッティングするのもトレンドだ。そうした細かいリクエストにも応えられるのがクスコの強みだ。
ちなみに、クスコの機械式LSDは、定番のタイプRS&MZの他、アクセルオン/オフの初期あたりをマイルドにした“スペックF”も存在する。価格はいずれもフロント用が20万9000円、リヤ用が13万2000円の設定だ。
「GRヤリスのデファレンシャルは、FF車がベースとなっているので、フロントに対してリヤのデフサイズが小さいんです。そうした物理的な制約もあって、リヤの効きを最大限に強くしてもフロントより強くはならない。当社では、そうした特性を踏まえて機械式LSDをセットアップしています。まずは吊るしのままで試していただき、それを基準としてLSDの効かせ方やロック率など、自分好みにセットアップしていただくのがお勧めですね」とはクスコブランドを展開するキャロッセの柳澤さん。
GR-FOUR搭載車種で走りを追求するのであれば、クスコが展開するパーツラインナップは見逃せない存在というわけだ。
●取材協力:キャロッセ TEL:027-352-3578
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CUSCO
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