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ビーエムはチューニング適合力が高いんです!
国産スポーツから欧州サルーンまで幅広く手掛けるKAZEクラフト。中でもBMWは得意とする車種で、様々な仕様を送り出しながらエンドユーザーへの提案を続けている。ここでは、そんな名門ビルダーが製作した3シリーズのリアルチューンドを紹介していく。
[E36型318iS]高圧縮比&ハイブーストのT67タービン仕様
このE46 318iSはカゼクラフト風間代表の愛車で、排気量拡大とヘッドチューンを行ったエンジンにT67タービンをセットしたボルトオンターボ仕様。ポイントは圧縮比をほとんど落とさず(10.0→9.6)、最大ブースト圧を1.3キロと高めに設定している点だ。
ホンダ純正ピストンを流用してボア径を1mm拡大し、1895ccから1939ccに排気量アップが図られたM44型エンジン。コンロッドはオリジナルH断面で強化され、クランクシャフトは純正バランス取りとなる。ヘッド周りはポート&燃焼室加工を施し、ドイツのシュリック製カム(IN256度)とリテーナー加工を行った上で戸田レーシングのF20C用バルブスプリングが組まれる。
「圧縮比が高めなのでNA領域のレスポンスはそのまま、中速トルクとピークパワーの大幅な向上を実現してますよ」と風間代表。
ワンオフEXマニを介して装着されたトラストT67タービン。低重心化を狙ってエンジンを大きく傾けて搭載しているため、コンプレッサーハウジングがチラリと見えるだけだ。
HKS製インタークーラーを前置き装着。バンパー開口部いっぱいに広がったコアで吸気を効率良く冷却する。
ラジエターはノーマルのまま、電動ファンのみを大型化。これで、真夏に筑波を6~7周アタックしても水温は安定しているという。オイルクーラーは装着されておらず、油温は130度くらいまで上昇するそうだが「その状態で連続周回しても、エンジンにトラブルは発生しませんでした」と風間代表。
メインインジェクターはノーマルのまま、高ブースト域で不足する燃料を補うため、インテークパイプに550ccインジェクターを2本追加。eマネージアルティメイトで制御される。
この仕様で345.8ps/43.1kgmを発揮。ノーマルのカタログ値は140ps/18.3kgmなので、実測値で比べれば3倍近いパワー&トルクアップを果たしていることになる。
それに合わせて、M3C純正の6速MTやデフを流用することで駆動系も強化。大幅に高まったパワー、トルクをしっかり受け止めるだけでなく、サーキットでの連続周回でも音を上げないタフさも与えられているのだ。
センターコンソールにブリッツSBCとHKSサーキットアタックカウンターが装着される。カーボンシェルを持るフルバケットシートはカゼクラフトオリジナルだ。
また、カゼクラフトでは318iSに向けて、T518Zタービンを軸にEXマニやeマネージアルティメイトなど、ターボ化に必要なパーツ一式をセットにしたタービンキットも用意。エンジン本体には一切「手を加えないボルトオン装着で(レギュレーターで燃圧のみアップ)、最大ブースト圧0.75キロ時に200psを発揮する。
さらに、風間代表いわく「E36 3シリーズの前期M42型エンジンならNAメカチューンもアリだと思います」とのこと。
というのもM42型エンジンは、クランクシャフトがフルカウンタータイプでバルブ駆動もロッカーアームを介さない直打式を採用し、後期型M44よりも高回転化に適したメカニズムを持っているから。
画像はNAメカチューン仕様の一例で、TWM製40φ 4連スロットルや3S-G用ダイレクトイグニッションを備え、F-CON Vプロで制御。9000rpmで208psを発生する高回転型ユニットに仕上げられている。
[E36型M3]6速MT搭載の後期型M3Cが狙い目!
ロングストローク型にも関わらず、常用8000rpmオーバーを達成したエンジンが搭載されるなど、メーカー系チューンドと呼べる内容を誇るE36型M3。
「お勧めは後期型M3Cの初期モデル。価格はM3Bの最終モデルとあまり変わらないのに、排気量は200cc大きい3.2Lでミッションも6速になりますから。走行距離が伸びているかもしれませんが、事故車でない限りボディもエンジンもしっかりしてるので、10万kmを超えていても全く問題ありません」とは風間代表。
86.4φ×91.0mmというボア×ストロークから排気量3201ccとなる直6のS50B32型エンジン。エアクリーナーがグループM製に交換されている以外はノーマルのままだ。それでもシャシダイで実測313psを発揮。走行10万km超なのに、カタログ値(323ps)に近いパワーを誇っている。
M3Bに対して排気量が3Lから3.2Lに拡大しただけでなく、ミッションも5速から6速になったM3C。デフやドライブシャフトも大型化されるなど、駆動系の容量アップが図られている。
[E46型M3]軽量化と足回りに拘ったサーキットマシン
エアコンなどの快適装備は残しながらも、リヤシートレスの2名乗車で登録するなどヤル気満点のE46型M3。パワー系チューンはカゼクラフトのワンオフステンレスマフラー装着のみだが、それには訳がある。
「電子制御化が大きく進んだE46 M3はECUが複雑なんです。下手なアプローチでは、すぐにフェイルセーフモードに入ってしまうし、頑張ってもパワーはせいぜい20~30psアップ。現実的に感じられないんですよね」と風間代表は言う。
ストローク量はE36 M3Cに搭載されるS50B32と同じ91.0mmのまま、ボア径87φで排気量を3246ccに拡大したS54型エンジン。ダブルVANOS(可変バルタイ)や電子制御スロットルなど、今時のデバイスが投入されている。
サーキット走行をメインにしているため、ステアリングホイールはナルディ、シートは運転席レカロSP-GTII/助手席SP-Gに交換。スポーツドライビングに適したインテリアに仕立てられている。
リヤシート&トリムを取り払うほか、トランクパネルをFRP製に交換することで軽量化。ロールケージはリヤクロスバーとサイドバーを持つ10点式で、リヤに延びる4本はバルクヘッドを貫通してメインフレームに固定されるなど、ボディ剛性の向上にも貢献している。
ちなみに、現状マフラー交換のみで実測330psをマークしているため、パワーは必要にして十分だが「一人で走ってる時は気にならないですけど、同じM3に負けたりすると、どうしてもパワーアップしたくなりますよ」とはオーナー。今後の進化が気になる1台だ。
●取材協力:カゼクラフト TEL:048-286-7060
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