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D1Lightシリーズで戦う玉城詩菜選手にズームイン!
シェイクダウンでまさかの横転!? それでも彼女は上を目指す
6戦を消化し、いよいよ天王山を迎えつつ2023年のD1ライツシリーズ。ラウンドごとに順位変動が起こる大混戦となっているが、今回注目するのは第4戦の筑波ラウンドからスポット参戦を開始し、いきなりベスト8まで上り詰めた玉城詩菜(たまき しいな)選手だ。
プロドリフト選手を夢見て沖縄から単身上京。そこから本格的なドリフト生活をスタートさせ、2022年にD1ライツシリーズへの切符(ライセンス)を獲得。2023年からは、より高みを目指すためにD1GP屈指のテクニシャンと名高い藤野秀之選手が代表を務めるチューニングショップ“ウィステリア”へ入社。藤野選手に師事しながら、D1ライツシリーズへのチャレンジを本格スタートさせたのである。
そんな彼女の現在の相棒は、第6戦(エビスラウンド)で実戦投入された180SXベースのニューマシンだ。TOYO TIRESフルカラーの爽やかなエクステリアが特徴的だが、中身は藤野選手のドリフト理論が細部にまで息づくD1GP級のハイスペックとなっている。
エンジンメイクはドゥーラックの伊藤氏が担当。“コスパを抑えながら最新スペック”というキーワードのもと、2JZ-GE(NA)をベースに、HKSの87φピストンとオリジナルの4mmロングコンロッドを組み込み、ノーマルクランクのまま高回転まで使える3.1L仕様を作り上げた。
吸気系はドゥーラックのアダプターを介して2JZ-GTE用のサージタンクをドッキングし、スロットルも大口径のボッシュ電子制御式にチェンジ。F-CON Vプロ制御でアンチラグ機能を実装している点も注目したい。
タービンはJPターボのB800Xをセレクト。このタービンについても「コスパ重視の選択です。安い割に性能が良いんです」と伊藤氏。最大ブースト圧1.5〜1.6キロ時に最高出力700psを絞り出す。
駆動系はORCクラッチ→サムソナス6速シーケンシャルドグミッション→ニスモ機械式LSDというレイアウト。「Hパターンだと少なからずシフトに気を取られてしまいますからね。そうした無駄を排除する意味でも、Iパターンの方が良いと考えました」とは藤野選手。
車高調はDG-5ベースのウィステリアオリジナルスペック(F12kg/mm R5kg/mm)でセットアップ。ナックルは藤野選手と川畑選手が共同開発したキックブルーのRR(ダブルアール)。ロアアームはテンションロッドが一体型となっているD-MAXで、タイロッドはイケヤフォーミュラだ。
一方のブレーキキャリパーも、リヤにウィステリアのオリジナル4ポットをインストール。もちろん油圧サイド仕様だ。
重要なタイヤは、700psを支配下に置くべくTOYO TIRES最強のプロクセスR888Rドリフトをチョイス。サイズは前後255/35ZR18の通しだ。
ダッシュボードは純正形状のカーボンタイプに置き換えられ、車両情報はECU MASTERのダッシュロガーに表示。さらに同社のPMUでリレーやヒューズを廃し、電気系の配線の簡素化も図られる。トラブル防止と軽量化を両立するパーツ選択だ。
ロールケージを含めたボディ補強は前後のバランスを考えながら施工。藤野選手いわく「必要最低限だけど、最も効果が出る補強を施した」とのこと。
ほぼシェイクダウンとなった第6戦では、単走予選で飛距離を見誤ってしまい、土手にボディサイドから突っ込んでまさかの横転! 玉城選手に怪我は無く、マシンも全損は免れたものの、ここで彼女のエビスラウンドは終了となった。
玉城選手はこの横転を「新規で製作したクルマなので本当に落ち込みました…。それと同時に、技術的な引き出しがまだ足りない事を痛感しましたね。あの時、アクセルを踏んでいれば行けたと思いますから」と後に語っている。
とはいえ、玉城選手は残り2戦で4ポイント獲得できればD1GPへの道が開く(D1GPライセンスを獲得できる)位置にまできている。これについては「D1GPライセンスは今シーズンで手に入れたいと思っていますが、まだ自分には実力が足りない。D1ライツでシリーズを獲れるようなドライバーになる事が先決です」とのこと。
D1GPを目指して走り続ける沖縄出身の熱き女性ドリフター。内に秘めた最終目標は、師匠である藤野選手を倒すこと。大舞台での師弟対決、いつの日か…と期待せずにはいられない。
PHOTO:山本大介
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