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走りの楽しさと安定感を引き出す姿勢作り
ストリートを走るにしろ、サーキットを走るにしろ、クルマを操っているのはステアリングやペダルを操作するドライバー。正しいドライビングポジションをマスターできれば、走りの楽しさと安定感が一気に高まるはずだ。そこで今回は、特別講師に井入宏之選手を迎えて、ドラポジとその調整方法を基本から振り返っていこう。
スムーズかつ負担のないポジションが不可欠!
走りにウエイトを置いて車両設計されたスポーツカーだけでなく、ミニバンやセダンでもシートやステアリングの調整機構が備わっていることからも分かるように、全てのクルマはドライバーの体格に応じたドライビングポジションが導き出せるように仕上げられている。
ただし、実際には「こんな感じでしょ」といった具合に、何となくシートやステアリング位置を調整して乗っているユーザーが大半。運転しやすいと気に入っているポジションでも安定した車両操作が行えなかったり、ドライビング時の疲労を増しているケースは多いのだ。
「ドラポジ最適化=スポーツドライビング…って考えられがちだけど、実はストリートでもドラポジの最適化は重要なんだよ。例えば、ステアリングを片手で操作するようなリラックス状態でも、腕が伸びきった姿勢からステアリングを切り込もうとすれば、シートから背中が離れて腰に負担がかかる。正しいドラポジで運転できていれば疲れにくいし、ステアリングやペダル操作だって安定して正確に行える。ドラポジは車両操作の基準となる部分だから、走行ステージや車種問わずに拘っておくべき」とは、今回アドバイザーとして登場してもらった井入宏之選手。
なお、各部の注意ポイントはそれぞれクローズアップしていくが、基本的にはステアリングやアクセル&ブレーキペダルが一番操作しやすいポジションを探っていく形だ。
エアバックやステアリングスイッチの関係から純正ステアリングが主体となっている最近では、ディープコーンのステアリングに変更したり、ロングボスを使ったりといったセットアップが難しく、チルトやテレスコ機構を駆使してもステアリング位置は自然と決まってしまう。
そのため、シート側の調整機構を使って理想のポジションに合わせ込むのだが、純正シートでは限界があるのも事実。そうしたユーザーに向けてアフターマーケットでは多彩なシートがリリースされているので、ドラポジを突き詰めるならシート交換も視野に入れて取り組んでいきたい。
正しい運転姿勢を再確認せよ!
目線は前が見える範囲で、遠くがしっかり見えるように意識。やり過ぎれば街乗りが厳しくなるが、サーキットでのスポーツドライビングなら走行ラインが自然とイメージできる「遠く9割、近く1割」の配分がベスト。また、目線に対してステアリングとメーターの位置関係は、メーターフード上部とステアリングトップが重なるようにチルト調整して、メーターの視認性にも拘るべし。
Gのかかる状況下でもステアリングやペダルを操作する身体はブレないように、背中や腰回りはシートに密着したポジションを意識する。基準点がしっかりすることで素早く正確な操作が行えるだけでなく、車両の挙動も感じ取りやすい。また、身体がホールドされるため疲れにくくなる。
ステアリング操作でシートから腰回りが離れることがないように、ステアリングを握る腕は、肘が軽く曲がる程度を意識。ステアリングを持ち変えなくても180度回せるように、テレスコピック機構やシートのリクライニング調整を行なっていけば、自然と同じような角度になるはずだ。
フルブレーキングなどペダルを奥まで踏み込めるポジションを意識すべきだが、踏み込んだ膝には少し余裕を持たせておくのがベスト。余裕がない状態だと奥まで踏み込もうとした際にシートから腰が離れるような姿勢となってしまい、安定したペダル操作が行えなくなる。
シートポジションの調整も重要
1.シートの前後スライド
シート位置を前後方向に動かすことができるスライド機構。膝に余裕を少し持たせた状態でペダルが奥まで踏み込める位置を探っていくのだが、その状態からリクライニングさせれば足が少し遠くなるので注意。
2.シートの高さ
安心感を求めて座面を高くセッティングしてしまうユーザーは意外と多い。しかし、視線が近くになってしまうと走行ラインがイメージしにくい。純正シートでスポーツ走行するなら、一番低い位置へ迷わずセットしてOKだ。
3.背もたれの角度
リクライニングは腰回りが離れないように気を配りながら、チルトやテレスコを調整した後にステアリングとの位置関係調整に使用する。ステアリングを持ち変えることなく、スムーズに左右180度回せる姿勢を探っていく。
ステアリングの位置調整
車種によっては調整機構が備わっていないケースもあるが、ステアリングの上下方向の傾きはチルト、前後方向はテレスコピック機構を使って調整することが可能となっている。ドラポジの調整手順としては、座面の高さ→前後スライド→チルト&テレスコ→リクライニング→足が遠くなった場合は前にスライドといった形となるが、視認性だけでなくステアリング操作時の内装との干渉にも注意しよう。
井入宏之流ステアリング操作のコツ
ステアリングを持ち変えることなく、左右どちらにも180度スムーズに回転させられるのが重要だ。なお、力を入れてステアリングを握れば腕の可動域が少なくなってしまうので、親指を軽く押し当てるように意識すると良い。
ステアリング操作時に肩がシートから離れることがないポジションが正解。ステアリングから手を離さないことが正確な操作へ繋がるため、左右方向とも手を離すことがない両手操作を心掛けていこう。