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チューニング黎明期から現代まで熟成を続ける名作
ウエストゲート式のみならずアクチュエーター式も展開!
1980年代前半のターボチューン黎明期から、40年近く第一線で使われ続けているタービンがある。トラストが熟成を重ね、20RXを最新作とする三菱TD06シリーズだ。同シリーズは13Cに始まり、昭和から平成にかけて、アルミ鋳造のフルブレード型コンプレッサーホイールを持つ14/17/19Cへと大型化していった。
「当時はまさに手探り状態で、テストの結果を見て次はどうするか?という繰り返し。データを蓄積するのに谷田部での最高速や0-300km/hは最高の舞台でした。デモカーのセリカXX(MA60)には17Cを、ATに拘ったスーパーソアラ(MZ20)には19Cをツインで装着してましたね」と、かつてタービンの開発を担当していた川端さんが振り返る。
また、ハイフロー仕様や、ファンネル形状のインデュースを持つSカバーが登場したのは19Cの時代。某社の新作タービンを目にして着想し、インデュース径を60φから80φに拡大することで吸気効率アップを実現した。ちなみに、19Cタービンキットは各車種用がラインナップされたが、圧倒的に売れたのはFC3S用だった。
そんなTD06に1990年代初め、大きな転機が訪れる。BNR32やPS13のパワーチューンが本格化した頃だ。タービン特性や風量、レスポンスの改善を狙ってコンプレッサーホイール形状が全面的に見直され、ハーフブレードタイプを採用することになった。こうして誕生したのが、その後、異例のロングセラーとなる20Gであった。
川端さんが言う。「ターボチャージャーへの理解が深まったこともあって、20Gには色々な思い出がありますね。中でもL2-20Gツイン仕様(840ps)のGReddy RX(BNR32)で0-300km/hの記録を更新したり、最高速で330km/hオーバーを達成したりということが強く印象に残ってます」。
パワーチューンの定番タービンとして多くのチューナーに愛用された20Gだが、平成も終盤に差し掛かるとトラスト社内では、「20Gを改良し、進化させることはできないか?」という声が上がるようになった。そこで開発に取り組むことになったのが20RXだ。
「性能面で20Gを上回ることを目標に掲げ、コンプレッサーホイールを従来のアルミ鋳造品から、5軸マシニングを使ったビレット品に変更しました。ブレード形状を変更するのに鋳造だとその都度、型を起こす必要がありますが、削り出しなら柔軟に対応できます。なので、フルブレードを含め、ブレードの面積や角度を微妙に変えた様々な形状をテストしました。その中で、性能的に最もバランスが取れたものを20RXとして製品化しました」と、開発部課長の小野さんが話す。
いずれもハーフブレードタイプだが、20/25Gの鋳造に対して20RXは削り出しとなるのが大きな違い。また、20RXはブレード面積を大きく取ることで風量アップも果たしている。「ただ、そうするとサージングの問題が出てくるので、ギリギリのところを狙いました。コンプレッサ―ホイールの設計では重箱の隅を突くようなことをしてますよ」と小野さん。
1980年代に登場したC型ホイールは、同じ大きさ&形状の羽根が並んだフルブレードタイプを採用。それに対してレスポンスの改善などを目的に、大小のブレードを交互に配したのがハーフブレードタイプのG型ホイールとなる。20RXも同様。ホイール自体の厚さ(高さ)を増すことで、風量に直結するブレード面積の拡大を実現している。
20RXはアクチュエーター式も用意され、1JZ用キットとして展開する。純正エキマニにポン付け可能な設計で、ピークパワーは20Gを20~30psほど上回る。また、TDシリーズ、Tシリーズともに軸受けにはメタル式を採用するのが伝統。小野さんいわく、「タービンシャフトはオイルでフローティングされるので、レスポンスはボールベアリング式と変わらないと思います。構造的にも冷却水を回す必要がなく、オイルラインの接続だけで済むのがメリットです」。
現在20RXは、TD06SH(8/10/16cm2)とTD06S L2(8/10cm2)に設定。RB25やSR20、VR38、EJ20などに向けたウエストゲート式キットが用意される他、1JZ用としてアクチュエータータイプもラインナップされている。未だ同社のタービンラインナップにおける主力アイテムというわけだ。
●問い合わせ:トラスト TEL:0479-77-3000
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トラスト
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