「チューンドロータリーの可能性を示した滑走戦闘機!」マッド・マイクが駆る1200馬力のFD3Sに迫る

トルク100キロも狙える圧倒的な懐の深さ

起死回生の出力向上策がRX-7のフィールドを広げた!

ピュアスポーツという言葉がピタリと当てはまり、軽量ボディと優れフットワークが織りなす高い運動性能を誇ったRX-7。しかし、ターボチューン全盛期に突入すると、ハイエンドのパワーバトルステージではやや劣勢となることが多くなっていく。

当初は“排気量アップの効かないロータリー”という言葉が良く使われたが、2000年代に入ると組み立て構造のエキセンが生み出され、チューニングにおいても、マルチローター化が現実的な選択となりつつあった。

そんな劣勢に立たさたRE勢による反転攻撃の狼煙ともなったのが、“TCPマジック”が手掛けた4ローターツインターボ。これでロータリー勢にも1000ps&100kgmというスペックが現実味を帯び、一気に優位を挽回することとなったのだ。

TCPマジックが2011年に開発したペリフェラルポート仕様の4ローターNAユニット。4連スロットルを組み合わせ。驚異的なレスポンスを生み出していた。

TCPマジックが最初に4ローターエンジンのRX-7を製作したのは2011年だ。当初は、他社の例に倣ってNAのペリフェラルポート仕様としてデモカーに搭載し、実力をチェック。出力面では600psに迫り、感動的な高周波サウンドなどその魅力も多く感じることとができた。

しかし、戦闘力で言うならば600psではすでに一線級とは言えず、ペリフェラルポート特有の高回転型特性は、ややピーキーで耐久性にも不安な要素があった。

この経験による手応えとノウハウを活かし、次のステップへ。そこで挑んだのが、バトルシーンで最前線に立つためのターボ仕様だった。当時、許容出力への不安から“4ローター=NA”というイメージを覆すチューンドを目指したのだ。

まず、エキセンの強度とバランスの問題をクリアすべく検討したのが回転の抑制。4ローターを含め、ロータリーエンジンは高回転型というイメージが強いが、それはあくまでNAチューンでの話。想像以上に負荷が掛かるターボ仕様ではリスクが高まるばかりでメリットは少ない…という基本に立ち返った考え方だ。

そして、回転を抑えるなら低回転から出力を得やすいポート方式が有利と、ペリフェラルポートからブリッジポートに変更。ハウジングの問題など解決すべきハードルは多々あったが、この選択が見事にハマり、エンジンの安定性が一気に高まったという。

現在の最高出力は1200ps&90kgmが公称値。初期段階ではエタノール混合燃料のE85も試したが、入手方法と管理のストレスが限界を超えたため、現在はレース用ハイオクガソリンを用いている。

また、エンジン搭載位置は純正基準(バルクヘッド側)で、ローター2個分エンジンがフロント側に延びたレイアウトとしているのもポイント。これは、旋回軸をより前方に寄せてハイアングルのドリフトを持続しやすくするための策だ。

マネージメントは、エリート2500を軸にハルテックの最新デバイスで統一。スロットルは「電子制御の感触が好きになれない」というマッド・マイクの意向により、機械式のままだ。当然、アンチラグやフラットシフトなどの制御は使えないが、太いトルクとレスポンスの良さがあるのでとくに問題ないという。

タービンはGTX3582R GEN2をツインで装備。単純計算で1500psオーバーの風量となるが、ロータリーエンジンの高い排気圧力があればレスポンス良く回すことが可能。最大ブーストは1.3キロの設定だ。

クーリングチューンも抜かりはなく、インタークーラーは狭いスペースにも収められるように小型コアを使い、サイドタンクはワンオフ。オリジナルVマウントシステムを構築し、競技ドリフトにも対応できるだけの冷却性能を確保する。

ラジエターは重量配分を考慮してリヤマウント化。トランクフロアを起点にやや後方に傾けてマウントされており、走行風を導きやすくしている。

車高調はKWベースで、アームやナックルにはTCPマジックオリジナルの調整式を投入。トップドリフトカテゴリーで求められる切れ角はもちろん、トラクションも重視したセットアップだ。

エクステリアは、片側65mmワイドとなるTCPマジックオリジナルのボディキットでフル武装。タイヤはトーヨータイヤのプロクセスR1R(F255/35R18 R285/35R19)でホイールにはグラムライツの57エクストリームをマッチング。

内装はフロアカーペットやアンダーコートを撤去して軽量化。ダッシュボードもFRPとし、ハルテックのiC-7ダッシュロガーで車両情報を集中表示している。ハンドルはケーズレーシングのフラットで、シートはブリッドのXEROを装着。なお、アルミのレバーは油圧サイド(プロジェクトμの4ピストン4パッドキャリパー使用)、手前のレバーはホリンジャーのシーケンシャルドグミッションだ。

2016年にデビューし、2018年にはフォーミュラDジャパンでシリーズチャンピオンを獲得。ワールドタイムアタックチャレンジ(WTAC)内で行われる世界戦やオマーンインターナショナルドリフティングカップなど、世界を股に掛けて活躍してきた歴戦の勇士、TCPマジックの4ローターツインターボ「HUMBUL(ハンブル)」の活躍に今後も注目すべし。

●取材協力:TCPマジック 兵庫県西宮市山口町船坂119-2 TEL:078-903-3422

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【関連リンク】
TCPマジック
http://www.tcp-magic.com/

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