「このS31型フェアレディZ、凄いんです!」幻のLYクロスフローをRB20Eヘッドで再現!?

拘りに贅を尽くした至宝のL型ユニットを搭載

当時の雰囲気を再現したCF-Lエンジンはクールな240ZGを演出する

この240ZGの凄さを知るには、まず伝説の“LYクロスフローヘッド”を理解しなければならない。

L型エンジンは、吸気系(キャブ)と排気系(EXマニ)が前から見てどちらも右側にレイアウトされている。これをターンフローと呼ぶのだが、燃焼効率や熱問題を考えると最適とは言えない。

そこで当時の日産ワークスは、左側にキャブ、右側にEXマニというクロスフロー方式のスペシャルヘッドを開発。“LYクロスフローヘッド”と呼ばれたそれは、レーシングオプションとしてワークスマシンを始めとする一部のレース車両に供給されたのだ。

日産大森スポーツコーナー(現NISMO)からエンドユーザー向けにも販売もされたが、ヘッドだけで約300万円もしたため一般にはほとんど出回らず、実際にLYクロスフローヘッドの現存数は10機前後と言われている。

今回の取材車両は、そんな幻のレーシングパーツをRB20Eエンジンのヘッドで完全再現し、L28改3.1Lのクロスフロー仕様を心臓部に搭載しているのである。

実のところ、RB系エンジンは、当時の日産の生産ラインの都合により、L型6気筒エンジンと気筒間ピッチなどが共通なのだ。RB20特有の7点支持カムシャフトは、ヘッド中心からリフターを介してロッカーアームを作動させ、LYクロスフローヘッドよりカム位置を下げた、ある意味LYの進化型と言えるかも知れない。

そこでスタジオ・サトは、L型エンジンの腰下にRB20Eのヘッドを組み合わせ、LYヘッドを彷彿とさせるクロスフロー仕様のL型エンジン製作を計画。構想10年、実際の製作に約2年を費やして完成までこぎ着けたのである。

深紅の結晶塗装が美しいタペットカバーや、フロントカバー、オイルパン、インマニなどはこのエンジンを製作するために鋳型から起こしてアルミ鋳造で製作したもの。タペットカバーの形状は、もちろんLYヘッドをモチーフにしている。

なお、RBエンジンはベルト駆動のため、カムギヤなどは全て交換してL型と同じチェーン駆動に改造。非常に手間のかかる作業を経て完成させているのだ。

エンジン搭載位置は、通常のL型エンジンとは逆方向に8度傾けている。それに合わせてオイルパンはワンオフ製作。アルミ鋳物のため、ブロック剛性アップにもひと役かっている。

「傾斜角を付けすぎるとキャブレターが立ち過ぎて油面の設定が難しくなるのと、ストラットタワーにエンジンが近付くため、タコ足の取り回しが困難になります。その辺りのバランスを考えて、8度に設定しました」とのこと。

出力は、ビックバルブ、76度カムシャフトに一般的なL型3.1L仕様ブロックの組み合わせで300ps程度。これ以上を狙うならば、ピストントップ形状を専用設計した高圧縮ピストンを使う必要があるとのこと。ちなみに、このエンジンの腰下はプレーリーピストン、L20コンロッド、LDクランクというメジャーな組み合わせだ。

足回りはビルズ車高調(F10kg/mm R8kg/mm)を軸にセットアップ。ブレーキはフロントにFC3Sの4ポットキャリパー+R33スカイラインローターを加工流用して制動力をアップ。また、ブレーキのマスターバックは、クロスフロー化した際にキャブと干渉してしまう可能性があったため撤去されている。

室内はダットサンのコンペハンドルやニスモのダッツンシートなどを装備し、当時のスタイルに拘っている。

ミッションにはDR30スカイラインのFJ20用5速MTを搭載。傾けたエンジン角度とベストマッチだったそう。

このRB改クロスフローヘッドは“CF-L”と名付けられ、スタジオ・サトでヘッドコンプリート販売されている。費用はキャブやタコ足を含まない、最低限のヘッドを搭載するための加工やパーツや鋳物の製作物を含めて120万円~(取材当時)とのこと。

このプライスをどう捉えるかはユーザーそれぞれの判断に委ねるが、伝説のチューニングヘッドを蘇らせたスタジオ・サトの技術力と情熱には、ただただ感服するばかりだ。

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