「コルトラリーアートバージョンR VS スイフトスポーツ」現代のボーイズレーサー徹底比較!

コンパクトなボディに秘めるジャジャ馬っぷり!

リーズナブルに走りを楽しめる今や稀有な存在

1980~1990年代にかけて一斉風靡した“ボーイズレーサー”たち。正確な定義はないが、シティターボやスターレットターボ、ミラージュ、マーチスーパーターボなど、『ハッチバックボディに1.6L以下のターボエンジンを搭載したFF車』というのがOPTION的な見解だ。

低価格で軽量コンパクトなホットハッチは、峠では無類の速さを見せつけ、ラリーやダートトライアルなどでも、そのじゃじゃ馬ぶりを遺憾なく発揮。ストリートはもちろん、モータースポーツでも人気を博し、ドライビングテクニックを磨くにはもってこいの素材として重宝された。

衝突安全の問題もあってクルマは肥大化の一途を辿り、コンパクトカーもその波に思い切り飲み込まれている。そう思うと、真の意味で“ホットハッチ”が存在したのは80年代末〜90年代初めが最後だろう。しかし、近年でもそれに限りなく近いモデルは存在する。

三菱のコルトラリーアートバージョンRと、スズキのスイフトスポーツだ。そこで今回は、稀有な2台の最新チューニングアプローチを名門“アールズ”で探ることにした。

コルト・ラリーアート・バージョンRの魅力は、何と言ってもランエボ譲りの強靭なパワーユニットだ。1.5L直4MIVECの4G15ターボはノーマルでも154ps(マイチェン後のMT用は163ps)/21.4kgmを発揮するが、適度なパワーチューニングで大幅な出力の上乗せが可能だったりする。

具体的なポイントはECUチューニングだ。コルトラリーアートバージョンRは、エアクリーナーを剥き出しタイプに交換するだけでチェックランプが点灯することもある。そのため、早い段階で内部プログラムを改良してやることが重要だ。

「うちのスーパーロムECUは、そうした不具合を全てクリアして安全にブーストアップが可能です。実測200psがターゲットですね」とはアールズ松野さん。

ちなみに、取材車両は絶版のアールズオリジナルタービンを組み込み、スーパーロムROM+EVCによるセッティングでブースト圧1.5キロ時に230psを発揮。なお、クラッチはパワーアップすると容量不足に陥るため、強化品への交換が必須だ。

足回りはオリジナルダンパーを軸にセットアップを進め、機械式カーボンLSDとのマッチングを図りながらサーキットから街乗りまで幅広いキャパシティを実現する。スプリングレートは前後とも標準設定の8kg/mmから12kg/mmへとアップ済みだ。

一方のスイフトスポーツは、モデルチェンジの度に戦闘力を増している言わずと知れたコンパクトスポーツの雄だ。現行型は1トンを切る軽量ボディに140psを発揮するターボエンジンを搭載。188万5400円〜という価格も相まって、手軽に乗れる数少ない現行スポーツモデルとなっている。

1.4LターボのK14Cは鉄製ブロックのため耐久性が非常に高く、チューニング適合度も極めて高いと評価する松野さん。ただし、油温はヒート傾向が強く、サーキットを走るのであればオイルクーラーの追加は必須と考えるべき。水温に関しては峠やミニサーキットなら純正でも問題ないそうだ。

取材車両は、高負荷高回転までゆとりある風量を確保したハイフロータイプの三菱重工製オリジナルハイパワータービンを投入し、ブースト圧1.4キロの設定で210psを発揮。これにより、パワーウェイトレシオは4.6kg/psをマークしている。

イエローのオプションカラー(特殊放熱塗装)が目立つ、オリジナルの大容量インタークーラー。純正比約1.5倍の大容量コアを採用し、ブーストアップからタービン交換まで対応する逸品だ。

エンジンのパフォーマンスアップに合わせて足回りもオリジナルダンパーを使用。このダンパーはユーザーがスイスポに合わせる定番タイヤサイズを想定して開発。そのため走るステージを選ばず幅広いユーザーニーズに対応するといったフレキシブルなスペックに仕上げられているというわけだ。また、クスコ製の機械式LSDとの相性も良く、的確に路面へとパワー伝達をサポートする。

今回紹介するコルトラリーアートバージョンRは、オーナードライブ+ラジアルタイヤで筑波1分5秒台、プロドライバー+Sタイヤで1分3秒をマーク。一方のスイスポはポテンザRE-71Rで1分2秒台と、戦闘力はほぼ互角と言って良いだろう。親しみやすい現代のボーイズレーサーとして、この2台は外せない存在なのだ。

PHOTO&TEXT:三木宏章
●取材協力:アールズ 静岡県浜松市東区貴平町505-1 TEL:053-431-6303

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