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エンジンは13B改ブリッジポート+T78-29Dタービン仕様!
動く足を求めてストラットタワー位置を30mmアップ!
レースで勝てるマシン作りを考えると、どうしてもストリートユースの利便性や快適性は捨てざるを得ない。もっとも、双方で必要とされる性能が全く異なるため、両立しようとするとどちらも中途半端な結果になってしまう可能性が高い。
そんなレースと日常の両立を考え、しかも中途半端ではなくディレツァチャレンジでも優勝を飾り、地元のTSタカタサーキットのコースレコード(取材時)を持つほどのパフォーマンスを備えているのが、“カーファクトリーエヌワン”のFD3Sだ。各部にロールケージで補強を加えつつ、必要最低限の装備を備えるだけのシンプルなインテリアを見れば、このセブンが普通ではないことに気づくはず。
「僕はエンジンよりもシャシーの作り込みが好きで、どうやったらサスペンションがしっかり動く剛性を得られるかを考えてこのクルマを仕上げました」と語るのは代表の中田さん。
その言葉通りにフロントエンドはパイプで補強を加えながら、ストラットタワーは30mmほどかさ上げ。車高を下げた状態でもストローク量を確保しつつ、アームの角度が適正化されるように作り変えられている。
同様に、キャビンに貫通したパイプとロールケージによって歪みや捩れを最小限に抑える。リヤエンドもストラットタワーを核にロールケージでガッチリと補強されるなど、ボディ剛性アップは完璧。リヤハッチのウインドウはカーボンパネルで埋められ軽量化を果たしている。
シャシーだけでなく足回りの作り込みも見どころの一つ。リヤメンバーはアッパーアームの取り付け位置を上に移動させながら、剛性を確保する構造で一新。市販のフロア補強材も活用してさらに剛性を高めている。
メンバーと同様にアーム類もワンオフで製作。ワイドボディによって広がったトレッドに合わせ、ロアアームは30mm㎜延長してハブ位置をオフセット。ワイトレに頼らずにボディに合わせてトレッド幅を拡大している。
こうしたメイキングによってサスペンションの可動域が広がり、サーキットで必要なスペックとストリートでの乗り味が両立できるようになっているのだ。
スタビライザーはノーマル状態でもバンザイしているため、新たに製作した足回りに合わせて、延長ブラケットにゲタを新設して角度を適正化。この効果もあって、スタビ本体はノーマルのままでも存在が体感できるほどになったという。
一方のエンジンは、ブリッジポート加工が施されながら、プライマリーとセカンダリーのオーバーラップ対策を行うことでアイドリングは800rpmで安定。壊れないように考えて製作したところ、現在の仕様に落ち着いたという。その言葉通りにトラブルフリーで走り続けている。
タービンはT78-29Dを組み合わせる。タービンサイズをアップしながらもインタークーラーは小型に留めるのは、フロントエンドの重量増を嫌った結果。ショートコースをメインに使用するため、TPOに合わせたセットアップを行っている。
同じく重量増を嫌った結果、インテークのパイピングは樹脂製の純正をそのまま流用するのがエヌワン流。経年劣化はあってもパワーを上げても割れることはないそうだ。
もちろん本質的にはレースで勝つために仕上げたハイスペック仕様のため、一般的なストリートチューンドのように快適とは言い難い。しかし、いわゆるサーキット専用スペックと比較すれば格段に乗りやすく、街乗りも楽しめる幅広さは、細部まで作り込まれたシャシーの成せる技なのである。
●取材協力:カーファクトリーエヌワン 広島県東広島市高屋町中島510-5 TEL:082-439-2236
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