「トヨタの冒険的野心作!?」世界遺産級の初代スプリンターカリブ限定車を捕獲!

絶滅の危機に瀕してる国産RVの草分け的モデル

超レアな前期型ホワイトリミテッドを捕獲!

トヨタ初のFF車、初代ターセル(コルサ)がエンジン縦置きということは知っていたが、まさか2代目もそうだったとは…。マニア車好きとしてはお恥ずかしい限りだが、そんな2代目ターセルをベースに開発されたのが1982年8月登場の初代スプリンターカリブだ。

83psを発揮する3A-U型エンジンを搭載し、リヤ周りにT70系カローラのホーシング(リジッド式サス)を組み合わせることで4WD化を実現していた。

グレード展開は、普及モデルAV-Iと上級モデルAV-IIとシンプル。AVとは、恐らく“アクティブ・ビークル”の略だと思われるが、1983年10月の小改良で中間グレードのRVスペシャルがラインナップに加わり、同時にミッションも3速ATが用意されることになった。

直4SOHCの3A-U型エンジンはφ77.5×77.0mmで、ほぼスクエアストローク型。最高出力は当初83psだったが、マイチェンで85psにアップした。また、マイチェンを機にツインキャブ仕様で90psを発揮する3A-SU型がAV-II 5速MT車に搭載され、AV-Iとの差別化が図られた。

さらに1984年8月に1回目のマイチェンを実施。3A-Uの最高出力がプラス2psの85psとなり、AV-II 5速MT車にはツインキャブ仕様で90psを誇る3A-SUが搭載された。

続く2回目のマイチェンが1986年5月。フロントマスクのデザイン変更によって後期顔になり、最上級グレードAV-IIツーリングスペシャルには、当時のトヨタ自慢のハイテクメカニズム、TEMS=電子制御サスペンションが採用されたりもした。

今回捕獲したのは、前期型AV-IIホワイトリミテッドなる限定車。調べても詳細がまるで分からなかったが、3速ATなので、少なくとも1983年10月以降で、前期型ゆえ1986年5月までのどこかのタイミングで発売されたことは間違いない。

早速、実車をチェックしていく。初代スプリンターカリブ、外観上の特徴はキックアップしたルーフと大きなリヤサイドウインドウ、縦長のテールランプだ。当時、この手のボディ形状は軒並み“バン”と認識され、つまりは商用車というのが世間一般の見方だった。

しかし、初代スプリンターカリブは乗用車としてのワゴンボディをまとい、さらにはパートタイム4WDの採用でRV風味もトッピングすることに成功。レガシィのランカスター/アウトバックより10年も早く同じようなコンセプトを具現化していたのだから、当時のトヨタはかなり思い切ったクルマ作りで時代を先取りしたんだな…と思う。

内装色はベージュ&ブラウンの2トーン。明るく落ち着いた雰囲気を醸し出す。この時代の1.5~1.6Lクラスのトヨタ車に共通だったのかもしれないが、ステアリングはおそらくハチロクと同じと思われる。

メーターはシンプルでスピード&タコメーターの他、水平の針が上下する燃料系と水温計が左右に備わる。

ダッシュボード中央にセットされるクライノメーター。右端がクルマの前後の傾きを、真ん中が左右の傾きを表示する。オフロード走行を想定した装備だが、下に「この計器は、静止時のみ正しい角度を示します」との但し書きがあることから、走行中はアテにならない子供騙しのアイテムと言えなくもない。左端は4WD走行時に点灯するインジケーターだ。

センターコンソールは上からエアコン吹き出し口、エアコン操作パネル、灰皿&シガーソケット、オーディオとなる。オーディオは、ボタンを押すと針がビッ…と動いてチューニングが合うAMラジオにカセット付きFMチューナーという、この時代定番の組み合わせ。

これが問題の(?)3速AT。セレクターレバーのグリップ部に設けられたスイッチはオーバードライブ用としか思えないが、実は2WD/4WD切り替え用だったりする。ちなみに5速MT車の場合、トランスファーレバーで2WD/4WDを切り替える他、1速よりもさらに低いギヤレシオで悪路走破性を高めるエクストラローも備わる。

上級モデルAV-IIの運転席には、8つの調整機能を持ったスポーツシートが標準装備。座面は側面のダイヤルで前側、前方のダイヤルで後ろ側の高さを個別に調整できるため、チルト機構を持たないステアリングでもドライビングポジションを決めることが可能。さらに、サイドサポートやランバーサポートも調整式で、背もたれ上部の左右にはアシストグリップが設けられている点にも注目だ。

後席はヘッドレスト一体型のハイバックタイプ。居住性は良好で、大人2人がゆったり乗れるだけのスペースが確保されている。中でも、足元のゆとりは特筆モノ。

縦型テールランプの採用でリヤゲートの開口面積が大きく、荷物の積み降ろしがしやすそうなラゲッジルーム。50:50分割式の後席背もたれを倒せば、簡単にラゲッジ容量を拡大することができる。

それではお待ちかねの試乗タイムだ。走り出してまず感じたのは、すでに登場から30年が経ってるのに思いの外ボディがしっかりしていることだ。

また、搭載される3A-Uはキャブ仕様の実用エンジンと聞いただけで何とも牧歌的だが、走り出すとそのイメージが倍増。回り方はもっさりしているし、パワーの上昇感も乏しい。おまけに、各ギヤがロングな3速ATということもあり、積極的にアクセルを踏もうという気にならないのだ。

ちなみに、3速50km/hでエンジン回転数は2200rpm。ということは、100km/hで4500rpm前後になるはずだから、高速道路を使った長距離移動は気分的にも燃費的にもあまりよろしくないと思う。もっとも、80km/hくらいで淡々と走るのが苦にならないなら問題ないのだが。

続いて4WDの走りを試すために川原へ移動。砂地に乗り入れてスイッチをしてみると、さすがはセンターデフなしの直結パートタイム4WD。4つのタイヤが大地をガシッと蹴り上げ、スタックしそうな気配をまるで見せることなく、グイグイと突き進む突き進む。

ステアリングを大きく切り込むと前後輪の回転差を吸収できず、いわゆるタイトターンブレーキング現象が顔を出すものの、どうせ砂地でグリップレベルも低いのだからお構いなしだ。

街乗りは合格点、悪路走破性は想像以上。実用性が高く、あらゆるシーンで頼りになりそうなマニア車として、初代スプリンターカリブは孤高の1台…かもしれない。

■SPECIFICATIONS
車両型式:AL25G
全長×全幅×全高:4310×1610×1500mm
ホイールベース:2430mm
トレッド(F/R):1380/1350mm
車両重量:1030kg
エンジン型式:3A-U
エンジン形式:直4SOHC
ボア×ストローク:φ77.5×77.0mm
排気量:1452cc 圧縮比:9.3:1
最高出力:83ps/5600rpm
最大トルク:12.0kgm/3600rpm
トランスミッション:3速AT
サスペンション形式(F/R):ストラット/リジッド
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤサイズ(FR):175/70-13

●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
●取材協力:アルバ群馬の森店 群馬県高崎市岩鼻町231-1 TEL:027-347-8677

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