目次
アルシオーネ2.7VXが見せる新たな境地!
直線的なスタイリングを強調するカスタム
まさかアルシオーネVXで、ここまでカスタムしているオーナーが存在するとは思わなかった。しかも、アルシオーネなのに、そうとは思えない車種不明感が漂う。
それもそのはず、オーナーいわく「あえてアルシオーネ感を消しているんです」とのこと。バックショットに至ってはFR時代のマセラティ・ギブリに見えたりもするから不思議だ。
このVXは、とにかく外装の作り込みが凄まじい。まずエアロパーツ。フロントリップスポイラーこそ純正を使うが、サイドステップと後方に向かって切れ上がっていく形状とされたリヤアンダースポイラーはワンオフ製作。リヤバンパーはVR/VS用を流用しながらバックランプ部をスムージング処理し、マフラーエンドの切り欠き部もストレート形状に改められる。
さらに、ナンバープレートの下にバックランプを移設してバックフォグも追加。ユニット自体をディフューザー風に仕上げることで唐突感や違和感のないマッチングを見せる。機能性を損なうことなくデザイン性もプラスするという難易度の高いモディファイだ。
トランクリッドに装着された4本ステーのリヤスポイラーは、ツェンダー製BMW用を流用する。
そういった見た目のイメージを大きく左右するパートに手を入れながら、ディテールの隅々にまで目配りされているのがこのVXの真骨頂だ。
例えば、助手席側ドアやトランクリッドのキーシリンダーをスムージングしたり、テールランプ表面の小さな刻印を削り取ってフラットにしたりなど。実はこういう作業の積み重ねによってクルマ全体を眺めた時の印象が大きく変わる。アルシオーネオーナーでもない限り、言われなければまず気が付かないし、あるいは同じVXを隣に並べて見比べなければ、どこがどう変わっているのか見抜くことは難しい。
マフラーはスーパースプリント製VWゴルフIII用を加工流用する。選択の理由は、「メインサイレンサーに対してオーバル形状のテールエンドが下にオフセットしていること。「そうすれば、リヤバンパーの切り欠き部をスムージングできますからね」とオーナー。
アルシオーネなのに、他のクルマとはどこか雰囲気が違う…という印象は、ここまで説明してきた手直しが混然一体となって醸し出していることに他ならない。
仕上げは足元を飾るBBS RHホイールと、フェンダークリアランスに拘った車高だ。ホイールサイズは前後8.5J×17インセット35で、205/40R17サイズのピレリPゼロネロを気持ち引っぱり気味に履く。これを、ロングハブボルトに打ち替え、ハブリング付き12mmスペーサーを介して装着。ネガティブキャンバー角と合わせて絶妙なフェンダークリアランスを見せる。
リトラクタブル式ヘッドライトを上げた状態だと、角度によっては180SXやプレリュードにも見えるフロントマスク。足回りは2.7VX標準のエアサスから特注の車高調に交換される。
フロントは調整式ピロアッパーマウントによって3度弱、リヤはセミトレーリング式サスにより車高ダウンで約2度のネガティブキャンバーが付く。
エンジンは基本的にノーマルだが、インテークパイプを製作してBMC製エアクリーナーで吸気効率の向上が図られる。また、点火系もホットイナズマで強化。性能アップはもちろん、無機質なエンジンルームに赤いパイピングやプラグコードを配することでドレスアップ効果も狙っている。
エアロパーツだけでもダメだし、ディティールを追求するだけでもダメ。それぞれにバランスよく手を加えることで、初めて唯一無二のスタンスが生み出される。それを可能にしたのは、ドレスアップ手法やパーツ選びに対するオーナーの卓越したセンスが全てと言っていい。
個性が強く、好き嫌いが分かれそうなアルシオーネの外観を、誰が見てもカッコ良いと思えるように変身させる。そんな難易度ウルトラC級の技を現実のモノにしてしまったことには、ただ驚くしかない。
(TEXE&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
記事が選択されていません 記事が選択されていません 記事が選択されていません