「蘇れ!初代シャルマンバン前期型」2桁ナンバーの絶滅危惧種が公道に復帰!!

ダイハツ上級セダンの激レア商用モデル

前オーナーから引き継いだ“茨44”で完全復活!

初代シャルマンバンの登場は1974年11月。すでにトヨタがダイハツの親会社だったことから、セダンのシャルマンも含めて20系カローラのプラットフォームをベースに設計されていた。

グレードは上からカスタム、デラックス、スタンダード。エンジンは1.2L直4OHV(67ps)の3K型で、カスタムとデラックスには1.4L直4OHV(80ps)のT型も用意された。ミッションはグレードを問わず4速MTのみの設定だ。

取材したのはT型エンジンを載せたカスタム、つまり最上級グレードだ。20系カローラをベースとしているため、エンジンはトヨタの1.4L直4であるT型を搭載。カム駆動方式はOHVで、燃料供給はシングルキャブレターが担当する。同じ系列のエンジンとして1.6Lの2T、1.8Lの3Tや4Tが挙げられ、これらにはDOHCやDOHCターボ仕様もラインナップされた。

自営業者が仕事グルマ兼ファミリーカーとして新車購入し、ワンオーナーで乗り続けられてた1台を、現オーナーである綿引さんが譲り受けたのは2010年の事だった。

「夫婦で買われ、家族との思い出が詰まったクルマだそうで、旦那さんが亡くなった後も手放せず、奥さんが乗っていました。ただ、運転するにも体力的に厳しくなり、エコカー補助金制度が始まったこともあって新車への乗り替えを検討。そこで廃車にされるところだったシャルマンバンを譲ってもらったんです」と綿引さんは言う。

引き取ってきた時、ボディパネルには塗装の剥がれやへこみが目立ち、バンパーは曲がり、ミラーも左右で違うモノが装着されるなど、お金をかけず適当に修理された跡が至るところに見られた。中でも致命的だったのはテールランプの割れで、とても車検をパスできる状態ではなかった。

そこで修復を決意した綿引さんは、必要な部品をコツコツと集めて直し、9年もの歳月をかけて再び車検を取得。前オーナーから引き継いだ“茨44”ナンバーでの路上復帰を見事に果たしたのだ。

「吊り下げ式クーラーも復活させたので夏場でも快適ですよ」と笑う綿引さん。45年前のクルマにして通勤にも長距離ドライブにも普通に使っているというから、その好調ぶりも分かるというものだ。

内装から見ていく。ステアリングホイールがデラックスやスタンダードの2本スポークに対して3本スポークとなり、メータークラスターもブラックでなくシルバーグレーとされるのが最上級グレード、カスタムの特徴だ。

メーターは3眼タイプで中央にスピードメーター、右に燃料計と水温計、左にはカスタムならではの装備として3針式アナログ時計が配置される。

4速MTのギヤ比は1速から順に3.587、2.022、1.384、1.000で、1~3速は1.2Lモデルよりハイギヤードな設定となる。ファイナル比は4.300で1.2Lモデルと共通。また、シフトブーツはレザー製で、ゴム製のデラックスやスタンダードとは差別化が図られる。

前席はヘッドレスト一体型のハイバックタイプ。その形状はグレードを問わず共通だけど、カスタムのみシート生地にファブリックが採用される(デラックスは通気発泡レザー、スタンダードはビニールレザー)。

後席は座面を起こし、背もたれを前倒しすることで荷室を拡大できるダブルフォールディング式。

荷室は幅1250mm、ホイールハウス間965mm、高さ830mm。奥行きは5名乗車時に865mm(最大積載量200kg)だが、2名乗車時には1510mm(同400kg)まで拡大する。ラゲッジフロアマットはカスタムとデラックスに標準装備。

ストロークの長いクラッチペダルを踏み込み、シフトレバーを1速に入れて発進する。低回転域で粘るエンジンと900kg弱しかない車重で走り出しから軽快だ。タコメーターがないため正確なエンジン回転数は分からないが、感覚的に3000rpmくらいでシフトアップしてくと気持ちよくスピードが乗っていく。

ハンドリングはボール&ナット式にありがちなステアリング中立付近の反応がゆるい系で、のんびり走るにはもってこい。荷物を載せることを前提に設計されたリーフリジッド式のリヤサスは空荷だとヒョコヒョコした動きを見せるものの、不思議と嫌な感じはしない。

すっかり旧車の仲間入りをしている初代シャルマンバン。中でも実働車が皆無という貴重な前期型が、今でもこうして現役で走っているとは本当に素晴らしい!

SPECIFICATIONS
車両型式:A20VL
全長×全幅×全高:4015×1520×1390mm
ホイールベース:2670mm
トレッド(F/R):1460/1455mm
車両重量:915kg
エンジン型式:T
エンジン形式:直4OHV
ボア×ストローク:φ80.0×70.0mm
排気量:1407cc 圧縮比:8.5:1
最高出力:80ps/6000rpm
最大トルク:11.3kgm/3800rpm
トランスミッション:4速MT
サスペンション形式(F/R):ストラット/リーフリジッド
ブレーキ:FRドラム
タイヤサイズ:FR5.00-13-6PRULT

●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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