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ドリ車メイクのポイントは足回りにアリ!
NAだからこそアクセル全開で楽しめるドリフトメイク
近年はD1グランプリといったトップカテゴリーでも活躍する姿が見られるようになった歴代86/BRZ。しかし、その中身はエンジンが載せ換えられていたり、足回りがごっそり海外のキット品に変更されているのが当たり前だ。
そんな姿を見ると「純正状態はドリフトに向いてないのかも…」と思いがちだが、それはあくまで競技だけの話。
ドリフト・グリップのジャンルを問わず、中部エリアの競技車両アライメント調整を多く引き受ける足回りのスペシャリスト“ノーティーベアー”の熊崎代表は「誰でも簡単にドリフトができる即ドリ仕様に必要なのは、車高調とタイロッドとメンバーカラーだけです」と、先代86/BRZのポテンシャルの高さをアピール。
また「休日にサーキットで仲間と走って楽しむエンジョイはもちろん、D1地方戦レベルならNA仕様のこのデモカーでも十分戦えるくらいの戦闘力はあるんです」というマシンメイクの秘訣は、ドリフト中にしっかりアクセルを踏めるセットアップにある。
ノーマル状態のドリフト特性(特にZN6)を簡単に説明すると、『角度が付くとそれに耐えられず、イン側へ巻いていってスピンモードに陥りやすい』となる。そして、それを解消するために誕生したのがノーティーベアーオリジナル車高調だ。
いくつかテストした中で、最も特性を理想に近づけやすかったというクスコのスポーツR車高調をベースに、レート変更やヘルパースプリングを追加。F9kg/mm、R12kg/mmというバネレートはリヤのトラクションを重視した数値だ。
切れ角アップはアイコンセプトのタイロッドのみでも十分だが、この車両はよりハイレベルな走りを求めて元D1GPドライバーの手塚強選手が開発したビーストRナックルを装着。30mm延長ロアアームによってネガティブキャンバー角を増やし、フルカウンター時の接地性も高めている。
アッパーマウントにオリジナルアダプターを追加し、キャスターを寝かせるセッティングはドリフトならでは。カウンターを当てる際のセルフステアの効きを良くすることでスピンしづらくなる上、ドリフトの振り返しの操作にも余裕が生まれるようになるのだ。
「ドリフト中に気持ち良くアクセルを踏める足」の鍵となるのが、GPスポーツのトラクションメンバーカラーだ。見ての通り、純正アーム取り付け位置を60mmほど下方向へオフセットすることで、ストローク時のタイヤの動きを縦方向に限定し、ホイールベースなど余計なジオメトリー変化を防ぐ。
つまり、足回りは、適度にフロントが”転がる”足にすることでカウンターへの追従性を高めつつ、リヤのトラクション性能を引き上げてドリフト中にアクセルを踏んでも流されずに前に進むようにするわけだ。
「4輪に接地感があってちゃんとアクセルを踏めるから、NAのままでもシルビアのターボを追いかけられるんですよ。ストレートは遅くてもコーナーで追い詰められる」という先代86/BRZのドリフトスタイルは、偶然にもAE86と同じというから驚きだ。
エクステリアはロケットバニーのキットでワイド化し、ボルクレーシングTE37VのF8.5J-6、R9J-10を履く。タイヤは前後とも215/45-17のゼスティノZ-REXをテスト中だった。
一方、エンジンはシムスのインテーク、テスト品のEXマニを追加したくらいでごく一般的な吸排気チューンに留めている。ターボ化しなくとも高トラクションのおかげでドリフトするには不満がないという判断だ。自社にてECU-TEKによるセッティングを取っているが、ほぼ微調整レベルとのこと。
インテリアは、ブリッドのフルバケとナルディのステアリング(ラリー)、そしてプロトのフットレストバーでドライビングポジションを最適化している。「上手くなりたいなら、バケットシートへの交換は絶対です」とのこと。
「シルビアやツアラーVと比べて、先代86/BRZのドリフトは難しいイメージを持たれてる方も少なくないと思いますが、足回りの仕様変更だけで驚くほどやりやすくなります。普段乗りもしつつ、休日にちょっと刺激ある楽しみ方をするためのベース車としては最適だと思いますよ!」とは、ノーティーベアー熊崎代表。
チューニングが確立され、ローコストに遊べるFRスポーツモデルであることが証明された先代86/BRZ。値上がりを続ける人気ドリフトベース車両の中古車相場に嘆いている人は、目先を少しだけ変えてみてはいかがだろうか。
●取材協力:ノーティーベアー 岐阜県羽島郡岐南町平成3丁目147 TEL:058-248-1033