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ウルトラロー&リバースを備えたプロスペック
道なき道も突き進むタフなヤツ!
今回の主役は、リアルタイム4WDにリヤデフロック機能を持ち、ミッションも悪路走破性を大幅に高めるウルトラローを備えた、俗に“農耕アクティ”とも言われるアクティ“ATTACK(アタック)”だ。
取材車両は、オーナーSさんが好みに合わせて各部をカスタマイズ。まず目を引かれたのは、やたらと艶っぽいブラックのボディと足元を飾るゴールドメッシュのBBS製14インチホイールだ。これは、黒×金のカラーリングが強く印象に残っているF1マシンのJPSロータスをモチーフにしたとか。
しかも、当時ロータスではF1マシンと同じカラーリングを施したホンダTN360(軽トラ)をファクトリーで使っていて、「その後継モデルとなるアクティで同じことをやってみたんです!」とSさんは言う。なるほど、それは由緒正しきモディファイだ。
また、外装では大型フォグランプ装着やサイドミラー大型化、荷台作業灯LED化など機能性の向上も図られている。
外装に合わせてダッシュボードも同色で塗装。その上には、懐かしいカロッツェリアのボックス式4ウェイスピーカーがセットされる。背面のロゴがスモールランプに連動して光り、本来はブレーキ連動でラインが赤く点灯するが、それをウインカー連動に変更している。
メーターは、一部配線の変更やスピードメーターケーブルの長さ調整などを行なってタコメーター付きのストリート用に交換。
センターコンソールにはオーソドックスなエアコン操作パネルが。内気循環と外気導入の切り替え部を見る限り、エアコンは内気循環モードでしか使えないということなのだろうか? その右にはデフロックスイッチと荷台の作業灯スイッチが確認できる。
クッションが薄くサポート性も期待できない、いかにも仕事グルマのためのシート。ヘッドレストは2本のステーを介してシートとは別体で用意されている。運転席の座面右前は当てモノで補強。乗り降りで生地が擦れることを防いでいる。
軽トラックはその荷台に数100kgの荷物を積んで走るのが前提で設計されているため、十分な動力性能を確保するべくギヤ比は低い。
アクティアタックもその例に漏れず、通常の1速ギヤ比は4.083に設定されているが、さらに駆動力が足りない泥濘地や急勾配にも対応できるよう、ギヤ比7.800としたウルトラローとギヤ比7.588のウルトラリバースも備わっていたりする。
リヤミッドに横置き搭載されるE07A型エンジンはキャブレター仕様。荷台の一部パネルが脱着式となっていて、それを外すことでエンジンにアクセスできる。カタログスペックは38ps/5.5kgmだ。
そして試乗タイム。ステージはワインディング…ではなく、アクティアタックの主戦場である“田んぼの中のあぜ道”だ。
シフトレバーを1速よりもさらに左の前(ウルトラロー)に入れて、アイドリング状態のままクラッチペダルをゆっくり離していくと、のそりと動き出した。まさに歩くほどの…いや、歩くよりも明らかに遅いスピード。
「クルマってこんなにゆっくり走れるのか!」と、少し感動を覚える。ただし、そこからの加速時にアクセルペダルをラフに踏み込むとギクシャクした動きが大きく出る。細心の注意が必要だ。
ここで確信した。例えば未舗装の林道からさらに道なき道を登っていくような、つまりは極めて限定された状況でない限り、アクティアタックの実力を出せるシチュエーションはないのだと。もしくは、ウルトラロー&リバースは緊急時の脱出用ギヤと思うか、だ。
それを除けば当然、普通の軽トラックとしても乗れるアクティアタック。舗装路での試乗では早めにシフトアップしていって、4速60km/hくらいで流すのが意外と気持ち良い。
軽トラック=仕事グルマだが、アクティアタックには“プロツール”のような雰囲気があった。まさに生粋の本気仕様なのである。
●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)