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575馬力のVTECターボを縦置きでスワップ!
全ての作業が高次元で融合したワンオフFRチューンド
今やアメリカのカーショーでは「ボディが綺麗」「車高が低い」程度ではアワードを獲れないばかりか、人目を引くことさえ難しい。そこで多くのチューナーは、エンジンルームまで美しく作り込み、過激なチューンを施し、メカニズムの機能性や見た目も追求するようになった。
しかし、そんな流れがあるとはいえ、今回紹介するDC2インテグラは規格外のモンスターだ。もはや、異次元レベルに到達していると言っていい。
ブルーメタリックにペイントし、各部をスムージングした美しいエンジンルームに収まるのは、S2000から換装されたF20C。そう、縦置きのパワーユニットである。あまりに自然に収まっているが、このDC2はFF車に縦置きのエンジンを突っ込み、なんとFR駆動化してしまったのだ。
アメリカでのホンダカスタムは、B16やB18、そしてK20といったエンジンへのスワップが非常に盛んだが、カリフォルニアでJDM系のチューニングを手がけるショップ“ziggybuilt”は、駆動方式の変更も込みでDC2のF20Cスワップという大技を完成させた。
作業内容は壮絶だ。まず、フロントの足回りは丸ごと240SX(S14)のものへと交換。そのため、DC2本来のダブルウィッシュボーンを捨て、フロントはストラット方式へと変更。ストラットタワーもさも純正の様に仕立てられた。バルクヘッドもカットしてエンジン搭載位置を室内側へとギリギリまで追いやり、滑らかなプレスラインで純正風に再構築。
ミッションからデフまでの駆動系、リヤサスペンションはS2000のものを流用しているが、DC2のボディサイズに合わせるために大手術を敢行。センタートンネルはミッションに合わせて作り直された他、ボディ後半はサスペンション、デフ、プロペラシャフトとDC2とはまるで構成部品が異なるため、フロアを丸ごと切開し、ワンオフのチューブフレームを追加してイチから製作しているのだ。
また、燃料タンクは純正を廃してレース用の安全タンクに置き換えられているが、取り出しは下から行って配管を室内に出さないようにしている。
リヤのトレッド幅だけ純正からはみ出てしまったので、ワイドフェンダーで対応しているが、リヤ側が踏ん張りの利いたスタンス感は、紛れもなくFR車のそれだ。
ブレーキはZ32キャリパー+ストップテックローターという組み合わせ。鮮やかなブルーのホイールはグラムライツの57プロ、タイヤはダンロップを合わせる。
インテリアも拘り満載だ。シフトゲート周辺はS2000用をそのまま移植。当然、ミッションもS2000純正の6速となる。ダッシュ周りはDC2のままだが、メーターにはS2000のデジタルクラスターを組み込んでいる。これはF20Cスワップ車のお約束でもある。
ステアリングとシート、レーシングハーネス&ハーネス取り付けのバーは全てスパルコ製で統一している。
製作当初はNA仕様だったF20Cエンジンは、その後にワンオフのEXマニホールドを介してプレシジョンターボをドッキング、過給機化され過激にパワーアップ。最高出力は実測で575psを発生している。
サーキットユースは想定していないそうだが、年々過激に先鋭化している西海岸のJDMカスタム界において、このDC2が相当なインパクトを残したことは間違いない。ちなみにオーナーのブランドンは、この取材終了後、何事もなかったかのように自走で帰って行ったので、見掛け倒しのチューンドではないということを付け加えておく。
PHOTO:Akio HIRANO TEXT:Takayoshi SUZUKI
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