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中国で三大自動車メーカーのひとつに数えられる第一汽車。そのフラッグシップモデル紅旗H9をチューニングして、東京オートサロンに出展する!! と息巻いてるのが中国チューニング界のKOL(キーオピニオンリーダー)である溜溜だ。内燃機関+ジェットエンジンという超進化型ハイブリッド仕様として製作が進められる1台だが、ついにジェットエンジンに火が入ったのだ!
主人公は中国最強のインフルエンサー
溜溜は日本で言うところのユーチューバーだ。自らファクトリーを持ち、中国のチューニング事情をSNSで配信。そのフォロワー数はTiktokで620万人、Weiboで130万人、BiliBiliで40万人など計1000万人以上を誇り、「中国のチューニング好きなら誰でも知ってる」という超有名人。また、GRBを所有し、6月にはGRスープラが納車されたばかりという日本車好き。これまで東京オートサロンに何度も足を運ぶなど、日本のチューニングにも造詣が深い。
紅旗H9改ジェットエンジン搭載仕様をチェック
紅旗H9は日本で言うレクサスLSのような存在。全長5137×全長1904×全高1493mmで、現行レクサスLSに対して全長で100mm短く、全高で40mm高い。また、ロングホイールベース版のH9+(プラス)もラインナップされる。エンジンは2.0L直4ターボ(253ps)と3.0L V6スーパーチャージャー(283ps)の2種類が設定されており、溜溜が購入したのはV6スーパーチャージャー仕様だ。
そんな紅旗H9のリヤオーバーハングに搭載され、1基あたり最大90kgmものトルクを発生する小型ジェットエンジン。これは、空軍が訓練に使うダミー飛行機用のエンジンで、民間でも広く使われているものなのだとか。
ジェットエンジンの制御は室内に設置されたコントロールユニットで左右別々に行う。右端のボタンで調整したい項目を選んで各種パラメータを決定する他、出力、排気温度などをリアルタイムでモニタリングできる機能も搭載される。
中央のアルミ製タンクは標準装備されるエアサス用。その左右に固定されたポリタンクがジェットエンジン用燃料タンクになる。まだテスト中のため暫定的に設置してるけど、最終的には金属製のシングルタンクを搭載する予定。奥にはバッテリーや車両側ECUなども確認できる。
リヤフェンダーに設けられたジェットエンジン用インテークダクトは、3Dプリンターを使って製作された樹脂製ワンオフ品。ダクトの形状や大きさはコンピュータシミュレーションで決定したものだが、実走テストから開口面積をもう少し絞り込めることが分かった。
「見た目もスマートにしたいからね」と溜溜。ちなみに、ダクト内側のボディパネルに見える小さな白い点状のものは空気の流れを検知するセンサー。今回得られたデータを分析して次回のテストに活かすのだ。
トラブルが発生しつつも想像以上の加速感に驚愕!
実走テストは長いストレート区間を有するコースで行われたが、右ジェットエンジンにトラブル発生。始動こそするものの、暖気が終わる前になぜかエンジンが止まってしまうのだ。慌ただしくその原因を探るスタッフ達。思い当たる箇所を手直しして何度かチャレンジしたが、残念ながら正常に稼働するには至らなかった。
「12ボルト電圧を20ボルトに上げる変圧器の故障やジェットエンジン本体のメカニカルトラブルを始め、他にも細かい不具合があって…」と、少し浮かない表情の溜溜。が、ジェットエンジンは2基、右側がダメでも左側がある!! と気を取り直してテスト続行だ。
独特な高周波ノイズを響かせながら問題なく暖気が完了。一呼吸おいて、ジェットエンジンの推力でスルスル…とクルマが動き出したと思った刹那、想像を絶する勢いで加速し始めた。信じられない突進力。いやはやジェットエンジンの実力、恐るべしである。しかも今回は1基のみ、これが2基フル稼働状態だったら…。想像するだけで胸が高鳴る。
こうしてシェイクダウンを終えた紅旗H9。しかし、溜溜は安堵する間もなくジェットエンジンのトラブルシュートや内外装の本格的なモディファイを開始する。
国際的なカーショーで中国車を見たことがないため、キッチリと仕上げた1台を東京オートサロンに出展したい。溜溜の、そんな強い想いを原動力に始動したこのプロジェクトもいよいよ佳境を迎えるのだ。
TEXT:廣嶋KEN太郎
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