「フルノーマルでもここまで速いのか!」R35GT-Rニスモ2024年スペックの筑波アタックに密着

3日間のアタックで市販車最速タイムをさらに更新!

マイナス0.283秒のロマン

R35GT-Rの最強バージョンとして君臨するNISMO(ニスモ)。その最新仕様である2024年モデルは、最高出力こそ従来の600psと変わりないものの、エクステリアや駆動系に大規模な改良を施すことで大幅なパフォーマンスアップを達成している。

抽選販売&車両本体価格2980万円と、限られたセレブしか購入できない高嶺の花になってしまったが、あらゆる意味でGT-R歴代最強モデルであることには間違いない。

2024年1月9日

今回は、そんなGT-R NISMOの2024年モデルをレーシングドライバーの松田次生選手が筑波サーキットでテストアタック。目標タイムは、2020年モデルのNISMOがマークした市販車最速の59秒361を破ることだ。

アタックは2023年12月22日(テスト日)、2024年1月9日〜10日の3日に渡って行われたが、GT-R現開発責任者の川口隆志氏は「59秒361切りは絶対。条件が揃えば58秒入りも可能だと考えています」と闘志を燃やす。現場には大勢の関係者やメカニックが集結し、日産の強い決意が感じられた。

当然ながら、車両は完全な市販状態だ。20インチのレイズ製アルミ鍛造ホイールはNISMO専用品、タイヤはダンロップ「SP SPORT MAXX GT 600 DSST(F255/40ZRF20 R285/35ZRF20)を履く。

アタック時の気温は1〜5度と低いため、タイヤはパフォーマンスを引き出すためにウォーマー(電気式のヒーター)を使って加熱していた。

2023年12月22日
2023年12月22日

万全の状態で筑波サーキットに乗り込んだ日産陣営だったが、物語は一筋縄にはいかなかった。一発目のテスト(2023年12月22日)で59秒231を叩き出し、あっさりと2020年モデルの記録は超えたものの、その差はわずかに0.13秒。

「2024年モデルのポテンシャルはこんなものではない!」と、タイヤの内圧やアライメント(主にフロントのトー)を変更しながらベストセッティングを探り続けるが、59秒217(2024年1月9日)からどうしても記録が伸びていかないのだ。

2024年1月10日
2024年1月10日

ここが市販スペックの限界なのか…。最後のニュータイヤを履き、コースに飛び出していくステルスグレーのR35GT-Rを見送りながらそんな事を考えた矢先、アタック終了時間直前(2024年1月10日)に事態が大きく動いた。何と、最後の最後で59秒078をマークしたのだ!

まさかの好記録に沸き立つピット、関係者全員が子供のように両手を天高く上げながら喜びを表現する。そう、松田選手がラストアタックで意地を見せたのである。

「59秒2はコンスタントに出せるのですが、そこから先が本当に厳しかった。チューニングカーではないので、サスペンションや駆動系をサーキット専用に煮詰めることはできません。ワンミスで終わってしまう緊張感もありましたが、最後の最後で何とか走りをまとめることができて嬉しく思います。ただ、本音では58秒に入れたかった…。ここから先の領域はチューニングの世界にお任せですね」と、安堵の表情を浮かべながら話す松田選手。

2020年モデルと2024年モデルのタイム差は0.283秒。それは近いようで、遥かに遠い距離。まさしく進化の証明である。何より、圧倒的な数字とともに強烈なインパクトを我々に残してくれた超絶パフォーマンスには、心から敬服するばかりだ。

PHOTO:金子信敏

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