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装着パーツの大半が流用、作業は全てオーナーのDIY!
ヤル気があればマイナー車でもココまでイジれる
かつてOPTION誌の連載企画『兄さんっ! 変態すぎてタイヘンですっ!!』で取り上げたAL11ターセル1.3ハイデラックス。その時はノーマルだったのだが、オーナーの元であまりにも劇的な変貌を遂げていた。
見どころは多いが、最大のトピックは前後のオーバーフェンダーだ。FRP製の汎用品とのことだが、全幅はノーマルの1550mmから1690mmまで、なんと140mmも拡大されているのだ。そこに収まるホイールは14インチのRSワタナベエイトスポークで、リム幅はフロント9.5J-25、リヤ10J-32とそれぞれマイナスオフセットが組み合わされる。
撮影場所への移動でしばらく後ろをついて走ったのだが、純正フェンダーに対してトレッドの外側半分くらいがハミ出した姿は異様の一言。「もし原寸大のチョロQがあったらこんな感じかも…」と思ってしまったほどだ。
ボンネットの下に収まるエンジンはボア径76.0φ、ストローク量71.4mmから1295ccの排気量を稼ぐ直4SOHCの2A-L型。64ps/9.6kgmというカタログスペックに対して、ツインキャブ化とEXマニ交換によって2割くらいはパワーアップしているだろう。エンジン本体はノーマルだが、6000rpmまで綺麗に回ってなかなかスポーティだ。
ネットオークションでやっと見つけたというインマニを介して、ツインで装着された2T-G純正ミクニソレックスキャプ。PLX製A/F計の数値を参考に、やや濃いめに燃調をセッティングしている。また、パーコレーション防止のため、独自のラジエター&冷却水路を持ったクーリングチャンネルも追加されている。
ラジエターはサイズがジャストだったというEG6用アルミ製に交換。その前方に装着されるのはラジエター冷却用の押し込み式電動ファンで、これはターセル純正品だ。
「ターセル用のパーツなんて皆無ですからね(笑)。とりあえず合いそうなモノを見つけて、現車で確認してみるしかないんですよ。だから、これは使えそう…と思って買ったら、全く使えなかったパーツも数知れず。ここまでくるには試行錯誤の連続でしたね」とオーナー。
例えば、車高調は以前オデッセイ用を流用していたが、ダンパー本体に応力がかからないダブルウィッシュボーン式サス用をストラット式サスに使ったため、ダンパーロッドが折れ曲がるという致命的なアクシデントが発生。
そんな経験を踏まえ、現在はアッパーマウントを加工した上で、同じストラット式サスであるシルビア用を流用していたりする。ちなみにリヤは、他車種用のテーパースプリングを3巻半カットして、サニー用ショートストロークダンパーをセットするといった具合だ。
ステアリングコラム左側にパネルを自作した上でタコメーターが装着され、ダッシュボード助手席側には右からインマニ圧力、油圧、油温、水温計が並ぶ。いずれもデフィ製だ。また、ステアリングホイールに隠れているがメータークラスター左側にはPLX製A/F計も装着。
運転席はブリッドユーロスターIIに交換。もちろんAL11用シートレールなど存在しないので、ハチロク用を加工して組み合わせている。シート生地は内装色に合わせたベージュをセレクト。
後席はヘッドレストを持たない簡素なタイプ。背もたれは50:50の分割可倒式でトランクスルー機能も持つ。ロングホイールベースのFFといってもエンジンは縦置きのため、パッケージング面ではエンジン横置きFFに劣るのが正直なところ。
トランクリッド右側に装着される車名エンブレムは輸出モデル用で、“カローラターセル”となる。当時、カローラの名前を付ければ海外でも売れるはず…というトヨタの目論見があったようで、事実、販売実績は悪くなかったようだ。
USDMでもなければ街道レーサーとも違う独特のスタイル。元々、ブラック仕上げとなるドアサッシや前後バンパー、フェンダーミラーとオーバーフェンダーが妙にマッチする。
旧車には王道のチューニング&カスタムがある。そうしたセオリーを一切無視し、思いの向くまま全方位に手を入れた初代ターセル。カタにはまらず自由な発想で自分好みにアレンジしていく。改造の原点が凝縮されたような1台だ。
●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)