「この共演は胸アツ!」トミーカイラが放った伝説のR31スカイライン・M30&M20を徹底比較

国内初の公認チューンドコンプリートカーM30と、5ナンバー最強のスカイラインをうたったM20

デビューから30年を経て実現した奇跡のツーショット

HR31をベースとした限定モデルの中で、トミタ夢工場が“トミーカイラ”ブランドで放った2台のコンプリートカー、M30とM20は、その生い立ちからして他の限定モデルとは一線を画す。当時、日産との間に太いパイプがあったにせよ、トミタ夢工場はニスモやオーテックジャパンのように日産の息がかかっていたわけではなく、どの自動車メーカーとも組みしない独立したメーカーだったからである。

先に発売されたのは、日本における公認チューンドコンプリートカーの草分けとなったM30。注目はエンジンで、国内モデルには存在しなかったRB30にRB20のヘッドを組み合わせDOHC化して搭載する。絶対的なパワーよりも、ドライバーの意思に忠実なレスポンスを求めたため、過給機レスのNA仕様とされた。

排気量は3.0Lながら、最高出力240psを7000rpmで、最大トルク30.0kgmを5800rpmで発生する高回転型ユニット。ちなみに、RB30はRB20よりシリンダーブロックが50mm高い分エンジン搭載位置が上がり、サージタンクが干渉してしまうため、ストラットタワーバーは未装着となる。

バルクヘッドに装着された、トミーカイラのコンプリートカーであることを証明するコーションプレート。“8009“という数字から9号車ということが分かる。

組み合わされるミッションは5速MT、ファイナルギヤは標準4.375の他、オプションとして4.1と3.5も設定。ちなみに、標準ファイナルでは5速7000rpmで最高速223.0km/hとカタログには明記される。

また、足回りには減衰力4段調整機能を持つニスモ製ダンパーを装備。トミーカイラオリジナルホイールには205/60R15サイズのダンロップフォーミュラM2が組まれ、エンジンスペックに合わせて足回りを含めたシャシー性能の向上が図られていた。突出したところを無くし、何よりも全体のバランスを重視したクルマ作りが認められ、国内初の公認チューンドコンプリートカーとして実を結んだと言える。

驚くべきは、日産の全面的な協力の下でベース車両はもちろん、各種パーツの供給が行なわれただけでなく、アフターサービスまで保証されていたことである。

すでに当時、国内ではチューニングが大きく盛り上がっていたが、基本的には違法改造とされていた。かといって、公認車検を取得するにも煩わしい手続きが必要だったため、ユーザーレベルではあまり現実的ではなかったのが実情である。

つまり、大手を振ってチューニングカー(それもメーカークオリティの)に乗れること自体が画期的であり、それを実現したのがM30だったのだ。ちなみに、新車価格は580万円。別途、登録諸費用が必要だったため、乗り出しで650万円ほどだったと思われる。

一方、M30に遅れること半年で発売されたのがM20。パワーユニットはRB20DETながら、専用カムシャフトの装着やエキゾーストシステムの改良、それに伴う専用ECUセッティングなどによってスペック向上を実現。220ps/6800rpm、26.0kgm/3800rpmという数値はノーマルを10ps/1.0kgm上回るもので、当時、国産2.0Lクラスのエンジンとしては最強のスペックを誇った。

バルクヘッドのコーションプレート右下に確認できる“9109”という数字は、M20として9台目の車両であることを示している。

これに5速MTが組み合わされ、減衰力4段調整式ニスモ製ダンパーやオリジナルホイール、ダンロップフォーミュラM2など基本的な装備はM30に準じていた。

また、内外装もボディサイドのストライプやオリジナルデザインのリヤスポイラー、モノフォルムバケットシート、エンブレム付きイタルボランテ製ステアリングホイール、レザーシフトノブなどはM30もM20も共通。両車を識別するポイントは、トランクリッド左側に装着されたエンブレムくらいのものである。なお、M20の新車価格は登録諸費用別で340万円だった。

実はM30とM20の前に、トミタ夢工場では『ハルトゲ・スカイライン』の企画が進行していた。というのも、トミタ夢工場は1984年にBMWチューナーで知られるハルトゲの国内正規代理権を取得しており、その名を冠したコンプリートカーの展開を考えていたのである。

HR31前期型GTS-Xベースで、ボディ色は1000台限定モデルのニスモ仕様と同じダークブルー。白いサイドストライプにはハルトゲのロゴが確認できた。これは3台作られたが、ほどなくしてハルトゲ・スカイラインの企画自体が頓挫。大幅な計画見直しで市販化までこぎつけたのが、トミーカイラM30/M20だったのだ。

「元々、新車が売れてないので厳しいものがありますよね。現存しているのはM30がおそらく15台前後、M20に至ってはたぶん5台くらいしかないと思います。数あるR31限定モデルの中でもM20はレア中のレアと言えるでしょう」とは、R31ハウス代表の柴田氏。

それは国内に4500人ものお客さんを抱えるR31専門店のトップが言うことだから間違いない。しかも、M30とM20が同時期に入庫することはまずありえないという。

だとすれば、2台並びを撮れたのは奇跡以外の何物でもない。

PHOTO:伊藤吉行(Yoshiyuki ITO)/TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
●取材協力:R31ハウス TEL:0574-28-0899

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http://www.r31house.co.jp

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