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HKSワークスが導き出した最強のドリフトスペック
パーツメーカーの参戦によってD1のマシンメイクは大きく変わった。500ps級のマシンを続々投入するメーカー勢に引っ張られるかのように、他チームもパワーを上げ始め、ハイパワー時代が到来。走りのスタイルもそれまでのパフォーマンス重視から、速さを追求する方向へと急激に変化していった。そんな黎明期のD1を牽引した代表的存在が今回の主役だ。(OPTION誌2004年2月号より)
他チームに多大な影響を与えた最先端メイキングの全容!
D1マシンメイクに新たな転換期が訪れようとしている。その発端は、HKSレーシングが2003年の東京オートサロン直後から約半年かけて開発し、ラウンド5エビス戦に投入したこのハイパーシルビアRS-2にある。
ヴェルテックスRIDGEエアロに、燃えるような真紅のボディカラー。見た目こそ1号機と何ら変わりは無いものの、中身はD1史上最強の怪物だ。
自社製の2.2Lキットで排気量を高めたSRエンジンは、エキゾースト側をGT30化したGT2835改タービンとのマッチングで実測480ps/66kgmを発揮。エンジンマネージメントはF-CON Vプロが担う。エンジンルームはサイクルフェンダー化も行われている。
リヤシート位置には大きく盛り上がったボックスのようなものが作られているが、これは12段ツインオイルクーラーの設置場所。フロア下のダクトから取り込んだフレッシュエアをコアに当て、そのまま後方の電動ファンから引き抜く構造だ。前後重量配分を最適化するための策だという。
ミッションは6速ドグのケースに5速+シーケンシャルの機構を組み込んだ試作品。自社製GDクラッチとオリジナルの軽量フライホイールを合わせる。
足回りは、谷口信輝選手が開発を担当したハイパーマックスD改でセットアップ。バネレートはフロントが7kg/mm、リヤが7kg/mm+2kg/mmのヘルパースプリングというセットだ。重要な切れ角は、独自のショートナックルを軸に大幅にアップさせている。
サスペンションの横に取り付けられているロッドは、ストローク量を計測するセンサーだ。ブレーキはフロントのみエンドレスの6ポットキャリパーを装備。
ホイールはアドバンスーパーレーシングver.2。フロントが17インチの9.0J+4、リヤが18インチの10J+6という前後異径サイズだ。組み合わされるタイヤは前後ともアドバンネオバAD07。フロントが235/40R17、リヤが265/35R18という構成。
インテリアはダッシュボードこそ残されているが、フルスポット増し&ガゼット補強入りのロールケージなど、その作り込みはレーシングカーそのもの。軽量化も徹底的に行われており、内張りなどは全て撤去した上でウインドウ類もHPI製のアクリル製に変更済みだ。
純正のガソリンタンクは撤去し、代わりにATL製の20L安全タンクをリヤトランク内部に設置。その左側には燃料系を、右側にはインタークーラー&ラジエター用のウォータースプレータンクを美しくレイアウトしている。
実戦投入直後はピーキー過ぎる特性に苦しんだが、ラウンド6のセキアヒルズ戦では谷口選手の理想に限りなく近いパッケージが完成。リヤをセンチ単位でコントロールできるまでになったという。
現在、打倒HKSを誓ってニューマシンの開発を進めているチームは多い。RS-2を中心とした、群雄割拠のD1GP戦国時代が幕を開けようとしているわけだ。(OPTION誌2004年2月号より抜粋)
●取材協力:エッチ・ケー・エス 静岡県富士宮市北山7181 TEL:0544-29-1235
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